第四話 ライ
私はそのまま尻込み頭を抑え、震えていたが目線を上げるとベージュ色の髪で軽鎧を着た青年が話しかけてきた。
「君、大丈夫かい?
随分と追い詰められた状態だけど何かあったの?
とりあえず今のその様子だと騒ぎに巻き込まれる。
さっきの魔王の件であたりの人達、混乱してるみたいなんだ。
一度避難しよう、僕の家に来て!」
〜
「僕はライ、君はエルリアって言うんだね
みんなあの魔王がまた現れたって驚いてたよ
君もビックリして飛び出しちゃったんだ」
私は飲み物を少し飲むと心の中で
魔王を倒す目的の糧になる為に狙われ、同じ瞳の勇者から殺される存在になったからパニックを起こしたんだと頭の中で整理しそれを呑み込んだ。
するとライがその絶望的な私とは逆に明るい表情で話かける。
「ねぇ!聞いてよ!僕も瞳の勇者に選ばれたんだ!」
胸が一気に冷たくなり心臓につららが刺さる感覚がした。
しかし、その直後私はある事が分かる。
「色は情熱の赤色でまさに主人公って感じ!
家にいたから誰も見てないけれどさ!」
確か異なる色に輝くはず、私が赤色に光っていたから確実にこの男は嘘を付いている。
でも嘘を付いた理由はすぐにわかった。
「魔王達には因縁がある。
僕は妹をダンジョンの魔物、しかも魔王直属の手下に殺されたんだ。
だからその恨みで剣士の最上級職まであがったのに勇者と役割が被るって事で雇われなかった。
だから魔王を今度こそ、この手で倒したい。」
なるほど本当に実力はあるかは不明だが前回の勇者との被りの件と今回の瞳の勇者の件、2つの意味で勇者達には選ばれなかったから嘘をついてでも魔王を倒そうとしているんだな。
それより肉親が亡くなって安堵してしまった自分にかなり罪悪感を感じる。
「あ、そういえば君かなり酷い格好だよ。」
「え?…あ」
あの乱れたビリビリに破れた服を着たままここまで来てしまった。
服にそこまで興味があるとは言えなかったが確かにこれだと変な目で見られるのは確かだ。
「そうだ!妹の服があるんだけど見てみるかい?」
「え?いいの?」
「エルリアちゃんが良ければ!」
多分20行くか行かないかの年下の男の子にちゃん付けされるのは違和感を感じるが言葉に甘えてみることにした。
〜
「わぁ!」
私は妹さんの部屋でいくつか色んな服を試着していた。
スラム街では茶色の小汚い服ばかりだったが町での服ってこんなに派手で可愛いものだったのか!と感動した。
私は服にあまり興味はないと思っていたが訂正した…!
割とこういう試着楽しいかもしれない!
ただ問題は胸囲が合わないためさらしになるものを巻いて着ないといけないことだ。
背が伸びて力が付いて欲しかったのに無駄な所へ行ってしまった。
髪を可愛らしいリボンでひと結びし、黒いエプロンドレスを切ると2階建てのうちの1階でまっているライの元へ降りていった。
「ど、どうかしら?」
「それは妹のお気に入りの服だね!
凄く似合ってるよ!ただ胸苦しくない?」
「う、うるさいわね。
でもお兄さんがそう言ってくれて私は嬉しいわ」
胸さらし巻いてるはずなんだけどなぁと思いながらニコッと笑いかけた。
少し無理しての笑顔だけど笑ったのは久々で無理して引きつっていないかだけ気になったがライは嬉しそうだった。
「あの子も同じ呼び方だったな懐かしいよ
折角だし僕のことはお兄さんって呼んで大丈夫だよ
そいえば朝になったら送ってあげたいと思うんだけど
どこ住みだったっけ?」
まぁ確かにそれが当たり前な対応だろうな、これで一緒に住むってなったら変質者だ。私は自分の身を少しだけ明かす事にした。
「私は成人してるんだけどつい最近大家さんに追い出されちゃってホームレスなの。」
「え!18!?」
「え、ええ」
ああやばい6才も鯖読んだ、けれどそれ以前に私が成人してる事に彼は驚いたようだ。
だが成人であれば階級がバレなければ一時的に預かっては貰えるだろう。
ちなみにこの世界では18才が成年である。
「僕は20才なんだ。妹は生きてたら今頃18才、丁度同じでびっくりだよ!
というか家が無いならうちのギルドで稼がない?
昔ギルド作ってたんだけどあの魔王の言葉から察するに塔、またダンジョンを作ったんだと思うんだよね、そしたらその家賃とか払えるよ!
昔の仲間たちも凄い強いから君にも経験値多く分けてあげられるし、凄い高級な素材も手に入ると思う!」
なるほど確かこの世界にはレベルらしきものがあってモンスターが倒れた時に側にいると経験値が貰え更にそれが上がると強くなる仕組みがあるらしいのは聞いたことがある。
それに仲間に頼れば私は闘わなくともお金や経験値が貰えるし、もしかしたら私自身一人で敵を倒してお金を手に入れる事も可能になるかもしれない。
まぁでも何もしないのは失礼であろう。
「強くなって出来ることが出てきたら私にも敵を倒したりするの手伝いたいわ!」
「それはダメだ!」
しかしライは強い口調で私の言葉を断った。