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瞳の勇者  作者: 烈火
一章 血眼の勇者
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第一話 エルリア

王に頼まれた勇者が魔王を倒し世界を救う物語。


建前はいいが皆の焦点が当たる場はそこばかりである。


実際は王国にも光と影がある。


生まれてから恵まれた貴族や王。


城下町で勇者一行を迎えダンジョンで手に入れた宝で潤う商人や町人達。


そして異世界からやってくる勇者。


どれも明るい物ばかりだがそれはただの光に過ぎずその影を知らない。


この世界の歴史には勇者や魔王が来るまでに激しい貧富の差があった。


それが今の影の存在スラムである。


そしてその貧困に苦しむ者達を救おうと王に反逆した者、町人など含めた者たちが昔いた。


スラムのとある女性はため息をつく。


馬鹿な奴らだ、生まれた人の定めと言う物は変えることができない。


与えられた使命に沿って生きればこんな苦しむことなんてなかった。

結局反逆は失敗し主犯格の存在は消された。


そう私の父親も。


だから私はスラムの町で生きている。


「今日も良かったぜエルリアちゃんよ、お前明らかに子供にしか見えねえのに不釣り合いな体型してて最高だったぜ、ほらよ金だ。」


とても不潔で汚い男だった。


真っ直ぐな長い黒髪に蒼色の瞳をした幼い少女のような女性が外に投げ出され倒れ込む。


散々に汚された後乱れた服を整えながら私は今にも吐きそうな気持ちを抑えた。


そして顔を上げるとバチンと金の入った袋を顔に投げつけられた。


これがこの世界の現状だ。


魔王が勇者に倒された後のこの世界もこうする事でしか生きる術が無い者がいる。

スラムの男なら力仕事はできるが私のような弱者はこうするしかないのだ。


しかも病気の母を救うためお金を貯めてきた。母親も元々娼婦で私を育ててくれたのだがある日にかかった性病の為に命が危ない。


この町には勇者がダンジョンで採った毒消し草という物があり、町人達は簡単に手に入るが私達スラムの人間には人権はない。


町で物を買う権利すらないのだ。


だからスラムの闇市で手に入れざる負えないが奴らも私達の足元を見る。

莫大な金を請求されるのだ。だが身分を偽って町で買い物をすれば処刑されかねない。


昔だったらダンジョンで活躍したスラムの民は町人として人権を認めてもらえたが私も私の母にもダンジョンのモンスターを倒すようなそんな力は持ち合わせていないと思い挑戦しなかった。


明け方になりやんわりした光を見ながら顔を隠し、辺りにバレないようにスラム街へと足を進める。


その夢のダンジョンも魔王が倒されたと共に消え、祝福された勇者も最初から最後まで顔を兜で隠したまま姿を消したという。


まぁ私には関係のない話だ、勇者がいようがいまいが私のやるべき事や運命は変わらない。


だが唯一私には希望の光が差す出来事があったそれは先程話した毒消し草のお金がたまり切ったことだ!


これで母さんを救える時が来る…!


そのお金を握りしめてテントの入り口を開いたときだ。


「…!」


そこには布団からもがき苦しんだ後とともに息絶えた母の姿があった。

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