第十八話 それぞれの瞳の力 前半
「あ、あなた…。
死んだはずじゃあ…、そ、それに白眼って…!」
私、エルリアは明らかに動揺を隠せないで部屋に入ってきた金髪の青年に指を指した。
「エルリアちゃん!
久し振り!…といっても昨日ぶりかな。
そう、僕は殺されたはずだった。
攻略ギルドが呼び寄せた魔物によって。
でも彼、エナが後からボロボロになった死にかけの僕を回収して助けてくれたんだよ!
彼の力はすごい。
姿を変えることで翼を生やし飛んだり、凄まじい治癒魔法をしたり出来るんだ!」
その口調、雰囲気明らかに短い間しか一緒に居なかったがライそのものだった。
しかし彼の瞳の色は眼球の色より少しグレーかかった限りなく白に近い色をしていた。
エリックはその様子を見て頭を傾げた。
「タイミングが悪かったな。ライ。
綺麗に話を纏めるつもりだったのだが…
エルリア、ノア。
君達を混乱させてすまない。
魔王のテレパシーを使って君達を呼んだのは彼の力を借りたものなのだよ。
先程は彼を死に追い込んだ事を謝罪はしたが彼は死んでいなかった。」
色々納得はいかない。
第一彼は瞳の勇者の力を得ていないはず。
すると私の心を読んだが如く返事をした
「僕は瞳の勇者の力は本来なかった。
でもエナ君の力でも無いものは作れないみたいで僕の体の欠損部分を亡くなった人の体を使って移植したんだ。
すると驚くことに僕が白眼の力を引き継ぐ形で開花したんだよ。」
私は話についてこれなかったが善し悪しにもとれる事を述べ話に踏み込むことにした。
「随分合理的ね、人の死を上手く使うというのは。
じゃあその話だと死者は白眼の勇者、
そして元の白眼の勇者の死因は王国による殺害ではない事は確かね。
もし白眼の勇者の死因にあなた達が関わるならエリック王子が白眼の力を奪ってなきゃおかしいもの。」
するとエリックの頷きながらほくそ笑む表情が目に入る。
ライは目を見開いて驚く表情をしたが再び話し始めた。
「エルリアちゃんって割と結構話す子だったのか…!でもその通り。
白眼の力で以前の持ち主の言葉を読み取ったんだけど
王の使用人である非力な自分にはこの力は合わない。
だから死にかけとなった君に託したい。
って自害をしたそうなんだ…」
エナは実際にライの治療に直接関わった為補足をした。
「死因は麻酔による心停止だ。
昔から医学の知識があったからどの薬が後遺症が残らないか薬を選んだと見える。
そしてライが運ばれる際丁度医務室で死んでいる所を見つけ金眼の力を使い、死因を調べた後長さ及び太さ、神経等を可能な限りライに適合するよう移植手術した。
申し訳ないが彼には家族も居らず緊急を要したライを救うには死者である彼の体が不運にも需要と供給が合致してしまった。
また今のライの話は手術完了直後瞳の色が変わったライが言い始めた内容のままだ。
しかも移植した使用人はライの開花後砂のなるように消えていった、だが塵も残らない。
この異様な光景やライの実際の証言と能力から彼を白眼の勇者だと判断した。」
私は何か引っかかるような感覚がしたがとりあえず今はそういう事で納得することにした。
そうなると白眼の力の能力だ、おおよそ予想は付きそうだが聞いてみるか。
と思ったらやはり私の心の疑問にすぐライは反応した。
「ああ、白眼の勇者の力を話すよ。
第一形態だけど見た相手の心を読んだり、
第三者に僕の心の中の言葉を伝える力テレパシーをすることができる。
皆の心の雰囲気から察するにこういう形の自己紹介をするんだよね。
ああ、後勿論僕は王国に命を救われたから王国に仕える事にするよ。
これでギルドの勢力は三人だね。」
瞳の勇者の力の持ち主が死んだ場合一般人でも体の部位を移植すれば別の人に力が移るのか。
しかし、あそこまで酷く欠損した上にあの高さから落ちてよく生きてたな。
でも先程から心を読まれる事を察するに彼の言っている言葉は本当であろう。
エリックの視線がエナに向きエナは通じたのか淡々と自分の能力について説明する。
「金眼の勇者だ。
能力はテイクオーバーと呼んでいる。
これは出会った人の職業、モンスターの能力をどれか一つを選び、瞳の勇者以外のその職業やモンスターの能力を使いこなせる力だ。
その間その能力の元となる姿に模した姿になるのも特徴。
勿論空も飛べれば、水の中に延々と居れる。
毒や呪いを浄化したり、敵の弱点を突く属性を使えたり幅広い力を持っている。」
「わぁ、それって可能性の塊だね!
いいなぁ!
カッコイイ!」
「あ、ありがと…。
む…だからこそさっきの件喧嘩売ったのは自殺行為だったんだからな、歩を弁えて気をつけろよ?」
エナはノアの真っ直ぐな瞳に一瞬顔を赤らめて照れたが、
話しながら先程の件を思い出し怒り出す。
しかしそれはエリックにたしなめられた。
「もうエナやめたまえ。
さて私の能力だが緑眼の勇者だ、見るのが早いと思う。
エナ、早速だが私の首を跳ねてくれ」
「了解しました」
!?
私とノアは急な言葉に驚く。
止めに入るべきか分からなかったがエナの動きはとてつもなく早かった。
そう瞬きした時には王子の首は宙を飛ぶ。




