第十七話 瞳の勇者会談
「はは、さっきはごめんね。
基本ボクは人の事は嫌いじゃないんだけど
あれ初めて聞いた話だったし、言ったタイミングがあれ過ぎてエルちゃんの事を酷くけなされたから珍しく怒っちゃった。」
あれから少し時間が経ち、先程の部屋は崩れひどい有り様になったので別室を案内された。
ノアはエナとの仲直りの握手をエリックに無理やりされている。
それよりエナの目はノアではなく私の事を町の人達と同じように本当に化物を見るような目で見つめてくるのが気になる。
「どうしたのエナ?さっきからこっちばっか見て
もしかして若いから色々ストレス溜まってる?
お金くれるなら夜の相手くらいしてあげてもいいけど
確か私そういうので有名なのだしね?」
私はからかうつもりで言ったがノアが本気か分からないテンションで重ねた。
「ボクも湖の精霊だから男や女の子どっちでもなれるし手伝うよ!
どっちの性別が好み?」
蒸気が出るくらい顔を赤らめるエナ。
エリックは大きく笑い、場を収めた。
「はっはっは!
うちの子が少し悪さをし過ぎたな
もういじめてやらんでやってくれ
プライドは強いが良いやつなんだ。
しかし瞳の勇者とは恐ろしい。
話のノリで一つの部屋が壊滅し、何事もかくこの軽い調子だものな。」
「部屋の件、すみませんでした…!」
「いや、いいのだよ、部屋なんて幾らでも用意できるしあの混乱した場を抑える事ができた。むしろありがとう。
それに大切なのは改めて君の能力の強さを目の当たりにできたことだ。
エナは前回の攻略は別件で参加しなかったからな。」
エリックは頭を下ろす私にフランクにそして幾度かフォローを加えた。
やはり伊達に人間と接してないようだ。
「それに敬語もやめたまえ。
これから私達は協力関係を結ぶために集ったのだからな。
とりあえずエナ、彼女の力はよく理解したかね?」
「死ぬかと思いました…」
「これが味方になるのだ。
大変心強いではないか。」
私がスラムの民だと聞いた時点でエリックの表情に少し変化があるのが目に入る。
しかし色々な問題を抜きにして考え、今は再び現れた魔王を倒すことに専念しよう。
それが私達の共通の認識であろうから。
するとエリックが今回話す本題にやっと触れてきた。
「ではまだ勇者は全員揃っていないが今日話すことについてだ。
私達は今瞳の勇者同士で決められた協力関係が全くない有様だ。
いつ誰が他の勇者を殺し力を得るか分からず、勇者同士の殺し合いが始まれば魔王討伐、塔の攻略どころではなくなる。
また、力を得た勇者は二人分、三人分の力を得て他の勇者単体では太刀打ちが出来なくなる上に下手したら全ての力を手に入れた勇者が暴君にも成りかねない。
その為私をマスターとした瞳の勇者という名前のギルドを作る。
君達にはそれに入り互いに味方であることとに同意してもらう。
そしてもう一つ、全員各自の能力を公開すること。
この2つは強制で緑眼の勇者の私、そして」
「金眼の勇者であるオレ、エナ」
「さらに今はまだ来ていない白眼の勇者は既に属している。
同意しなければ同時に三人の勇者を敵に回すことになる。
そこで君達は柔軟だろうと私は信じたい。
この協力関係に同意してくれるかね?」
味方であるノアは私の方を期待して見つめている。
どうやら私の一存といったところか。
その答えは…
と言おうとしたときだった
「白眼の勇者ライ、遅れました!」
その時絶対にあり得ない男が現れたのだった。




