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瞳の勇者  作者: 烈火
二章 瞳の勇者の集結
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第十五話 王子の命令

「瞳の勇者を招集させてみんなで自分の能力を明かして協力してやっていこうって話だけど

エルちゃんはどうして恨みのある王子のとこ行くの?

というかいつでも城ごと吹っ飛ばせるんじゃない?」 


ノアは拳をぶんと城に向けて語りかける。


私、エルリアはノアと堂々と城下街を歩いて話していた。

血眼の勇者の話があっという間に広まったのか周りの住民が戦慄している。


このエルちゃんという馴れ馴れしい呼び名は苛つくが彼に今までの事を説明していくと私自身混乱していた頭も自然とクリアになりやるべき事が見えた。


私だって有名な王子の顔は知っている。

気が動転してたとはいえ王子らしき人がダンジョンの入り口にいて私達を見殺しにしたのは目に入ったから恨みはある。

だが今はその王子の方へ素直に向かっている。

ノアには私が瞳の勇者になってから今まで起きた事を簡単に話した。

だが明らかにズレた答えをするノアに私は呆れた。


「悪手ね。

試してるのかしら?

そんな殺戮行為、言い出しっぺの癖に博愛主義のあなたが許さないでしょう?

まずその点で言ってる事が矛盾するわ。

仮に城を破壊なんてしたらこの国、スラム以外の全国民と敵対関係になるし

今はまだ未完成な瞳の勇者が集まってる中わたし達がそこに奇襲をかけ能力を奪おうとしても能力すら分からない相手に迂闊に攻撃できない。

だって私の能力を無効にできる瞳の勇者が私の目の前にいるのだもの。

総合的に考えて何もせずアナタや他の人が協力者としていてくれた方が助かる。」


私は自分の頭の中を整理しながら話した。

ノアの能力は把握済みだ。

だがまだ他の勇者がどのような力を持っているか分からない。

そのためまず相手の情報を手に入れる事が重要。

問題は王子だ。

私は後ろ髪を結んだリボン、白からライの血で真っ赤に染まったリボンを手にする。

問題…それは王子がライ達を見殺した事。

多分ノアがそこまで敵対感を持った発言をしたのはここへ来るまでに話したこの話…


「アナタの言いたいのはライ達の件よね?

私にとってライ達の死は気が狂う悲しさと絶望感だった。

でも私がここまでの力を手に入れるきっかけをくれたのは王子よ、そこは感謝してる。

だからプラマイゼロといったところね。

だからもうその事は同盟関係を結ぶのにあたり関係ないわ。」


「エルちゃんって本当人間?

どんな人か確かにエルちゃんを試す質問したけど思ったより情が薄くて

ボクさ、人間ってこんなんなの?

って思っちゃうかも…」


「いえ、私が変わってるだけ。

確かに私達は生きてるから死は恐れ避けるべきだと思う。

けど人が死ぬのが確定したらそれを憂うべきじゃないわ、寧ろその死を如何に次に繋げるか。

確かに割り切るのに時間はかかるけど延々といつまでも憂うべきじゃない。

だって無駄でしょ?

いつまでも亡いものを憂うの。」


ノアは目を見開き表情を曇らせる。

私は再びため息をついた。

確かに理解される考え方じゃない、でもスラムで友達やお世話になった人達が理不尽に死んでくのを見てる内に私はそう考えるようになった。

だが同情は無くてもいいが目が気に入らない。

周りの目、ノアの目がやけに辛く感じる。

どれも煩い…!


「何?不満?それにさっきから私達を変な目で見てるアンタ達…!

あーあ、非力だった私が立場が変わるだけで今度は皆して怯えるようになった。

スラムの住人の時とは大違い!

瞳の勇者になるまでゴミのように扱われていた私を平民が下から見上げるように注目してくれるのは最早清々しさのあまり快感を感じざる負えないわね。」


私の町民への嘲笑にノアはじっと私を見つめていた。

先程から自己肯定感を得ず苛ついているのが自分で分かる。

勇者に選ばれたはずなのにまるで魔物と同じような扱い、味方の否定的に感じる目。

苛立ちから目が血走ってきたのか独特な感覚がする。

気持ちが昂り前に気が付かなかったせいかそれとも相手がわざとしたのか誰かにぶつかった。


「すまねぇなお嬢ちゃん小さいもんで気がつかなかったぜ。じゃあまたな。」


尻餅を付いて見上げるとその顔が見えた。

私をよく娼婦として好き勝手したあの男だった。

サングラス付けているが分かるあいつだ…!

殺意が湧き目が確実に血走る感覚がする。

だが急にノアが私の頭に手を触れ、能力を抑えてくれたお陰でその場は何も起こらなかった。


「大丈夫だから…ね?」


気付いたらノアが私を心配し見つめていた。

周りは悲鳴があがり一悶着起こりそうだった、いや起こしたかったがノアに止められなんとか気が収まった。


不快が重なって気持ちが昂ぶった…でも、そうだ。

結局ここで大した理由もなく怒ったところで何の利益もない。


私はノアの手を取り、王城へ再び歩き出した。


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