第十四話 博愛のノア
『聞こえるか?民よ。私はエリック。この国の王子だ。これはテストである。再び重要な事を連絡する。よく聞くように。特に瞳の勇者は、だ。』
魔王が放った耳に響くような声がする。
私、エルリアは心臓が止まりそうになりながら目を覚ました。
私は目を開いて焦点を合わせるとこちらを見下ろすぱっちりとした目、ニコッとしたノアの顔がある。
後頭部の柔らかさから感じるのは
「ちょ、馬鹿!なんてことしてるのよ!」
「膝まくら、だよ!
あの泡は外敵から守れるけどあの後すぐに殆ど魔力使い切っちゃって。
来るとは思わないけど周囲を警戒しつつ、ねぼすけさんなキミを待ってた訳!
そういえばキミの名前は?」
名前も分からない相手に節操もなくできるって最近の若い子は…と思ったが見た目だけで湖の精霊らしいから常識とかないのか?
だけど力が暴走してた時や倒れてる間助けてくれたんだし名乗るのが礼儀か
「エル、リア。エルリアよ。」
「わぁ可愛い名前!!」
「ちょ、馬鹿…。」
思わず顔を赤くしてそっぽむいた。
なんか本当に馴れ馴れしいというかライやこの子ノアみたいにここまで優しくされることってスラム街の時、人間として扱われてない時は少なかったからとても心に刺さる感覚がする。
なんかこう心が熱いというか。
ただ、急にライとの出会いがフラッシュバックし、瞳の勇者の事を思い出し武器も持たず身構える。
「そ、そういえば!
アンタも瞳の勇者!?
わ、私を殺したり…?」
その怯えた口調にノアはあははと気の抜けた雰囲気で笑いかける。
「ははは、そんなことはボクしないよ!
キミがどんな能力かはしらないけど
ボクは特殊体質で人を武器を投げたとしても相手を傷付ける力はないんだ。
特徴としてボクには昨日も話した通り瞳の勇者の力は効かない。
それに物理、魔法ダメージを受けないから瞳の勇者が相手でもボクにダメージを与えるのは難しいと思うの。
ただその代わり攻撃力が0で固定なんだよね…。
まぁそもそもボクは博愛主義だから敵意は特別嫌いになった相手以外はないよ!
それに特にエルちゃんの事好きだしお助けしたいなーって!」
私はノアの言葉を頭の中で纏める。
ノアは戦闘において非常に硬いが攻撃面がほぼ皆無。
そういう特殊な特徴を持つみたいだ。
だが瞳の勇者の能力を無効化するという瞳の勇者殺しの力を持っている。
私とは真逆の性質だ。
そしてこの様子だと味方になってくれるそう。
私は瞳の勇者の中で一番攻撃に特化してるようだが暴走のリスクも大きく実際あの時ノアがいなければ死にかけていたのかもしれない。
この青眼の力という存在はそのリスクを打ち消したり私の盾になる役割ができそうだ。
問題は性格難があり過ぎると言う所だが
印象が良いようなら手を組むのが一番良いかも知れない。
「私はダメージを与えるのに特化した血眼の勇者って呼ばれる瞳の勇者らしいわ。
昨日はとても精神的に耐えきれないことがあってそれがトリガーで力が暴走したの。
まぁ詳しくはこの話が終わってからするわ…」
「相当辛い事があったんだね。
ボクは詳しくまでは聞かないよ
でも…」
ノアは私の両肩を掴むとニコッと笑いかけた。
「大丈夫!
ボクがキミの事を守るからっ!
博愛主義だしそもそもエルちゃんみたいに敵を倒すことはできないけど
誰が来ても全力で守ってみせるから泥船に乗って安心して!」
「博愛ねぇ…、それになんか理由もはっきりしないし胡散臭いのだけど
でも私は誰も頼る相手がいないし信じるしかないのかしら…
それにわざとか知らないけど
私ノリは悪い方なの。
いちいちどーでもいい事に突っ込まないわ。」
するとノアは鋭い目つきになるとお茶らけた雰囲気を消し付け足した。
「エルちゃんを守る理由は
実際にさっき言った事が一番で
互いに組めばそちらはボクのない火力をエルちゃんが補って
ボクはエルちゃんのもろさを守りで徹することができるからすごく良いコンビって訳!
そしたらキミは身を守れるしボク達も魔王も倒せるでしょ?」
さっき私が考えた事だ。
まぁ一応彼なりに頑張って説明する様子を見ると真剣に考えてるのだろう。
…ってさっきからずっとエルちゃんって
ノアは暗黙の了解かと感じたのかニコッと手を出してきたので私も渋々手を出した、そのときだ。
また先程の頭に響く声が聞こえた。
『魔王のテレパシー魔法をこちらも利用させて貰った。私の名前はエリック、この国の王子だ。突然だが瞳の勇者全員に命令だ。断れば敵対関係として扱わせてもらう。』




