第十三話 魔王の報せ
私、エルリアは初めて挑戦した魔王の塔で沢山の仲間を失い満身創痍で逃げのびた。
そして無我夢中で一人逃げたダンジョンの外、町外れの湖で不思議な子供、ノアに出会う。
ノアには性別がないそうだが私は彼といった形で呼ぶことにしようと思う。
ノアが何か話そうと口を開いた時だ、あの魔王の声が聞こえた。
『人間、聞こえるか?朗報だ。何十分か前の時点だが4人の勇者の能力が一斉に開花された。白眼、紅眼、緑眼、金眼だ。
それぞれの力を教えるつもりだったが本人にしか分からないような形に変更することにした。
そうした方がゲームも探り合いで楽しくなるだろうからな。
だがその代わり、瞳の勇者について詳しい事を教えてやる。』
約束を守らないゲームマスターほど面倒なことは無い、とでも言おうと思ったがお茶らけてたノアが真剣な表情をしていたので私も黙って聞くことにした。
『瞳の勇者には3つの形態がある。
一つ目の形態となった勇者は、纏ったオーラの色によって瞳の色が変わる。今後永久にだ。つまり今変わった瞳の色がこれからのお前らの瞳だ。
だが開花した勇者の中で一気に昇華して第二形態までなった化物がいる。
第二形態はその力を使う事で髪と瞳の色が同じ色になる。
もう既にその異様な強さを見た者もいるであろう。
だが瞳の勇者は皆それぞれそれあれに匹敵しさらにそれ以上の力を持つポテンシャルがある。
それは各々に与えられたトリガーによって開花する。
まぁその力でせいぜい頑張ることだ。』
その後私にだけだろうか魔王の声が聞こえた。
『さぁ、ここからは個人宛の言葉だ。
紅眼の勇者、いやすでに人々はお前を【血眼の勇者】と呼んでいる。
お前は突出して感情が昂ぶる出来事があったせいか今一番形態としては進んでいる。
そして最も殲滅力と火力を持った爆弾のような瞳の勇者、他の勇者からまず標的になるだろうな。
皆から血眼の勇者と呼ばれるその力を説明をすると
第一形態は直接触れた物を内部から壊す力。
第二形態は波状の魔力を放つことで遠隔で外部から壊す力。
単純な話だ、破壊という行為は憎悪と憎しみそして嫌悪という醜い感情から生まれる。それは人間の心そのものだろう?
自分自身に対しても発動する、気の持ち方には注意することだ。
強くなりたいのなら、より辛い思いでもすればいいだろう。』
私は何か返事をしようとしたが間に合わなかった。
まるで勇者からかけ離れた物じゃないか。
しかもあれ以上の苦しみを背負わなければいけないなんて…。
私は押し殺してた恐怖とライの事を思い出し涙が出そうになる。
止まらない、まぶたを震わせ止めようとしても、溢れた。
その途端涙は一気に流れ、疲れ果てた私は声を出し泣いた。
ノアは遅れて開花した為青眼に関して魔王に情報が行ってないのか急に泣き出す私を見て困惑している。
だがやがて手をゆっくり広げるとぎゅっと抱きしめた。
「キミが何があったかは知らない。
でも顔見れば分かるよ。
すごい苦しいことがあって疲れたんだよね?
大丈夫だよ。今はゆっくり休もう?」
私にはもはや返事をする体力はなかった。
朦朧とした意識の中彼の魔法だろうか、大きな泡のような物にノアと共に包まれるとゆっくりと私は意識を落とした。




