第十一話 血眼の勇者
第五十階層の攻略の際我々はミスを犯してしまった…
王子である私、エリックは急いで攻略組を連れ下層に降りていた。
不運にも攻略中に出会ったカマキリ種のモンスターがあまりにも強力であった為に私はそれらを別階層へ飛ばしたのだが
この魔法に不手際があり第一階層目に飛んでしまったのだ。
直後に避難警告を出したのだが既にその階層にいる者が4名いる。
そこで私達攻略組40名は急遽1階へ向かったのだが異様な光景が広がっていた。
見えたのは大規模な底の見えぬ大穴と赤いオーラを纏った少女だった。
〜
『何度でも言うお前のせいだ
お前がライを巻き込んだ
お前がライの弱みに漬け込んだ
お前がもっと力があれば
お前が無力なせいで皆死んだ
お前が生き残ってていいのか?』
「やめて、やめて、やめて!!」
残されたエルリアは響く轟音に頭を抱え泣き叫んでいた。
頭がおかしくなりそうだった。目の前で死んでいった仲間たちが目に写り頭の中では自分の愚かさや無力さが広がる。
もはや何故こんな自分が生きているんだ、生きていて良いのかという気持ちが湧く。
ライは、ライは嘘つきだけど私にとって優しいお兄さんだった…なのに
自己嫌悪の気持ちが膨らんだときだ。
口から急に血が飛び出た。
私も死ぬの…?
何故…?
『自分から敵意を前に向けろ。
こうなったきっかけは』
そうか…、そうか、あいつらか…
「アイツらのせいかぁあああ!」
視界が赤くなるのを感じた。
前髪の色が血のように赤くなるのが見える。
カマキリが一体が痺れを切らしカマを振り恐ろしいスピードで首を斬りかかる。
カマが首をすり抜ける感覚がしたが、直後ガタンと体の後ろにそのカマが落ちる音がした。
さらにその残ったカマから先に割れるように全身にヒビが入りそのカマキリは砕け散るのが見える。
だがその目は既に次の敵に向かっていた。
怒り恨み悲しみその気持ちを強く握ると何か重いものが両腕に乗る感覚がした。
そして私はそれを力まかせにそれを投げると赤いレーザーのような物が2つのカマキリに向かって放たれる。
それに触れた途端やはり残ったカマキリもいとも簡単に砕けるように消え去っていった。
〜
エリックはその光景を見て震えていた。
あの少女は瞳の勇者の一人であろう。
だがその姿はまさに恐怖その物だった。
振り向いたその姿は血まみれの体、赤く光る瞳、同じく血染めのような赤い髪。
これが瞳の勇者の姿だというのか。
そしてそれに加え想像を絶する力。
すると突然彼女は悲鳴を上げながら入り口にいる私達に走って向かってきた。
皆、構えない。
歴戦の者たちが集まってるのだがあれを見てもはや戦意を喪失したのだろう。
私だけは構えたが彼女には殺気は無かった。
私達の隊列を割り真ん中から外へ血の混じった涙を流しながら走っていく。
しかしその時不意に見えた彼女の目は私の目に焼き付き、そして悟った。
赤い瞳に血走った目をした瞳の勇者。
まさにこれは血眼の勇者であると。




