第十話 赤いリボン
「う、うう…。」
私、エルリアは目を覚ますとそこには異様な光景が広がっていた。
底の見えない巨大な穴。
私はそれを前に尻もちを付く形で座り込んでいた。
私は唖然とした。
先程までいた恐ろしい敵、
そして私に優しく接してくれたお兄さん、ライの姿が消えた。
そこには大穴があるだけで何も無かった。
と思った時だ。
うめき声が穴のそばに聞こえる。
よく見ると手が崖にかかっているのが見えた。
すぐに駆け寄るとそこは無残にも下半身はなく左腕を失い残った右手でぶら下がっているライがあった。
上半身も酷く直視するのも難しい。
ライの目はもはや光がなく正気もなかった。
「お兄ちゃん…今度は頑張れたかな?
お兄ちゃんカッコ良かったかな…?」
「お兄さん、頑張ったよ、すごくカッコ良かった…!」
「そっか。
こんな情けないお兄ちゃんのこと許してくれなくてもいい。
けど最期は立派に誰かを守れたかな」
もう駄目だと分かっていた。回復する手段もさっきの薬草を与えたが全くきかない。
自爆というからには既に死んだ扱い。
今はもうその死の延長線上なのであろう。
それでも助け起こしたいと腕を引こうとしたその時だ。
急に腕が軽くなり尻もちをついた。
手元を見ると腕だけが残っていた…!
私はびっくりして悲鳴を上げ手を離すとあの白かったリボンが真っ赤に染まって手に絡まる。
だがもはやショックさのあまりパニックを起こさなかった。
きっとライはただ生き残ってたんだけじゃない、このリボンを最期に託してくれようとしたんだろうか?
ビビビという羽音と共にあの三体のカマキリが現れた。
私は既に弾け飛んだ髪のリボンの代わりに
その赤いリボンを付けようと掴むと血が滲んだ。
デコとボコ、そしてライ。
みんな私のために死んでしまった。
私のせいだ…。
その時不意に声が聞こえた。
『許せないか?』
あの声だ。
「…許せない。」
『報いたいか?』
初めて手にした時のあの声だ
「報いたい…。」
『覚悟はあるか?』
「覚悟は…、ある!」
『なら言おう、奴等が死んだのは…』
その声は
『 無 力 な お 前 の せ い だ 』
あの血の色をした剣だった。




