一話
再投稿になります。
内容は特に変わりませんが少々文章を足しました。
只今、ちょっとした問題に直面している。
見知らぬご令嬢方に囲まれているのである。
おそらく同学年であるそのご令嬢鵜方は私を口汚く罵っていらっしゃる。
やれ容姿が地味だの成績が落ちこぼれだの。
容姿が地味なのは生まれつきだし、勉強が出来ない阿保なのは私が一番よく知っているので余計なお世話だ。
仕方ないではないか興味のないことは覚えられない性分なのだ。
よくもまぁ皆はあんなに興味が一ミリもわかないものを覚えられるものだ。
因みに囲まれ罵られているこの状態が問題なのではない。
こんなのは日常茶飯事である。
これは私の婚約者が主な原因だ。
私の婚約者は、アルフレッド・アンティル。アンティル侯爵家の次男にして私の2歳年下の御年16歳の青年だ。
彼ことアルは、燃えるような真っ赤な少々癖のある短髪に光の加減によっては金色にも見える宝石のような黄色い瞳を持っている。
多少少年ぽさを残してはいるが、切れ長の目にかなり整った顔だちをしている。
加えて成績優秀、運動神経抜群、性格は私は少々(かなり?)我儘な所がある事しか知らないが友人が言うには優しく人懐っこいらしい。
友人曰く少年ぽさを残した笑顔が可愛いのだと。
そう言えば校内でよく笑っているところ見る。
私の前では大体むっつりしているので初めて見たときあんなに笑えるのかと思ってびっくりした。
それにしても私の前で笑うのも嫌なくらい嫌いなら婚約破棄でもすればいいのに。
と、かなり前に思った私は、アルにまだ婚約者がおらず性格の良さそうなご令嬢を何人か進めてみたのだが何故かキレられた。
その後その話をしようとすると物凄く睨まれたので諦めた。
酷いは話である。
私たちの婚約は私の父とアルの父が友人で口約束で決まったものが実現しただけだ。
アルとは昔からの顔なじみで特に嫌いではなかったので婚約を受けたに過ぎない。
政略結婚が主流のこの世の中で嫌いではないと思っている人と結婚できるだけマシだろうという思いもあった。
そんな訳で政略結婚というわけでは無いので、婚約破棄したところで両家共にそんなに害はない。
アルがアルの父に好きな人が出来たからとでも言えばすんなり破棄されるだろう。
アルの家は珍しことに恋愛結婚なのだ。
強いて挙げるとすれば、私の名誉が傷つくことだが些細な問題だろう。
幸い私の家は古くからあり長い歴史を持つ家だ。
家の都合上、私が政略結婚する必要も特にない。
双子の弟であるルイとその婚約者にして幼馴染みのリリーには少々迷惑をかけるが、何処か屋敷でも譲ってもらって田舎暮らしでもすればいいだけの話だ。
そんなこんなで破棄されてしまっても問題ないのだ。
話がそれてしまったが、よってアルは大変モテるし、友人も沢山いるのだ。友人の中には王子もいるときた。
まぁ、言ってしまえば優良物件なのだ。
そんなわけでまだ婚約者のいないご令嬢にとってアルの婚約者である私は大変邪魔な存在である。
これが誰もが敵わぬような容姿端麗で成績優秀な完璧な令嬢だったら話は別だが、私は容姿は地味、成績は中の下ときた、運動神経だけはいいサルみたいな令嬢だ。
いじめの対象にならないはずがない。
それよりも問題はかれこれ10分くらいこの状況にいることだ。
よくもまあそんなに人の悪口が言えるものだ。ある意味感心する。
現在は昼休み。
食堂でお昼を早々に食べ終わった私ははやく図書室に行こうと急いでいた。
少しでも早くつけるようにと近道である人気ない道を通ったのがいけなかったらしい。
つけられていたのかたまたま見つかったのかは分からないが、人気のない廊下に入ってしばらくしたら囲まれた。
貴重な昼休みを私をいじめて過ごすなど暇な人たちである。
いつもはルイかリリーと一緒にいるし、いなくてこうなってもすぐに気付いた二人が助けてくれるのだが、生憎と今日は二人とも委員会があるためいない。と、いうか先ほど反対方向に別れたばかりだ。
因みにリリーは私と同じ伯爵令嬢だが格が違う。
リリーことリリス・シーマニアは、シーマニア伯爵家の令嬢でシーマニア伯爵家は古くから続く由緒正しい名門家である。
古くからあるが歴史が長いだけの若干貧乏貴族になりかけている家とは大違いである。
なぜ家がリリーの家と婚約できたのかという話は割愛しておく。
そんな訳でリリーは上位貴族にあたるため下手に手が出せないのである。
二人がいない今この状況を自分で何とかしなければいけないのだがいかせん面倒くさい。
殴る蹴るなどの暴力を振るわれているわけではないし、この程度の悪口は入学当初から言われていたので今更傷つきはしない。
3年間も言われ続ければなれるというものだ。