一騎討ち
「貴様等がエルザエヴォスが差し向けた天空の使徒か?」
鬼神軍軍団長ゲノシディオが問う。
「俺に訊いているのか? しかし何処を見ているのか分かりにくい目だな。ちゃんと見えているのか?」
わざとらしく左右を見渡す仕草をしてみせ、飄々と侮辱の言葉を吐くローレス。
刹那、その侮蔑した白眼に殺気が帯びる。
その巨体からは想像もつかないスピードでローレスに接近すると、大剣が唸りを上げて横薙ぎに払われた。
歴代国王の肖像画とともに壁が破壊され、崩壊した壁の外には澄んだ青空が広がっている。
「短気なやつだな」
「どうだ? 見えている証明にはなったか?」
難なく躱したローレスも、挨拶代わりの一撃を放っただけのゲノシディオも、お互い余裕は崩れない。
ゲノシディオは大剣を肩に担ぐと、視線をソリテュードに向けた。
「久しいなソリテュード。以前に会った時は敵としてだったか。……苦戦しているようだな、お前ほどの者が」
「恥ずかしながら、中々手強い相手でして。最も、私如きがゲノシディオ様と対峙したのは恐れ多きことでした。あの時の非礼を侘びます」
「ふん、まぁよいわ。こっちの青髪は俺がやる。そいつの相手が苦しいようなら俺が葬ってやってもいいが」
「お心遣い有難く。ですが、この人間は私が。手出しは無用願います」
常に貼り付けられていたソリテュードの笑顔が一瞬引いた。
言外に横槍を入れることに対する強い否定の意志を匂わせる。
「安心しろ。お前に横を見る余裕などありはしない」
こちらも言外に自惚れるなと、含みを持たせるローレスの言葉。
ゲノシディオの全身から殺気が迸り、ローレスに向けられる。
一対一の構図が二組。
天空の使徒と選ばれし勇者を抹殺するべく推参した血に飢えた鬼神。
内部から王国崩壊を招いた魔導剣士。
決戦の火蓋が今まさに切られようとしていた。




