インガドル王国
南東の大大陸、アスタード北部の丘陵地帯。
大陸北西部から中央域一帯を治めるインガドル王国の王都は、その丘陵地帯の東部に位置する。
東には秀峰インガドル山脈が連なる荘厳華麗な大国であり、王都の人口は三八〇〇〇人。
城壁に囲まれたこの王都は、ラー大陸内屈指の国際貿易都市。
また政治、経済、文化の中心として栄華を極めていた。
古くは一一〇〇年前。
アスタード北部に興ったインガドル王国は早くから頭角を現し、大陸を進行していくと次々と周辺都市国家を制圧していった。
大国となったインガドル王国に敵対する勢力が、インガドル山脈を挟んだ東に位置する実力国ジールの元に集結し、両国はアリオーソ平原で決戦に及んだ。
インガドル山脈によって、東からの侵略を危惧する必要のない天然の要塞国インガドルは、全戦力を結集しジール大公国を打ち破った。
この決戦により、アスタード大陸一の影響力を持ったインガドル王国はおよそ七〇〇年前、各国が魔物の進行に悩まされた際には、国家間、人間同士の抗争を禁止する平和条約を世界の主だった五ヶ国で締結する際の中心となるなど大役を果たす。
以来、同盟国は互いに協力し合い、ともに発展していった。
同盟国の中でも際立って発展を続けたインガドル王国は、およそ五〇〇年前に勇者ボルグから太陽石を授かったことにより、一層ラー大陸内での地位を固めた。
しかし、ラー大陸歴一三五二年。悪魔の年、竜の月の一日。通称『災いの日』の太陽石を奪われるという大失態によって、インガドル王国は世界会議にて方針を決定する権威の座を退いた。
さらに海に魔物が出現し、貿易船を襲撃する事態が頻繁に起こるようになったため、貿易商たちは長距離航海を控え、国際貿易は格段に数を減らした。
かつては海外の船が停泊し、商業が栄えていたインガドル王国の港は寂れ、熱気と活気に溢れた国内からは急速に活力が失せていった。