未知との遭遇
平凡な学園生活を送る舞島風磨は、ある日突然、宇宙船に我が家を破壊される。
警察官の手によって、家の修復は叶ったものの、
宇宙船は家の裏に放置される。
そんな風磨が出会ったのは、卵から現れた同い年くらいの少女だった。
卵の中から飛び出した少女は、僕に怯えているようで、華奢な裸体をわなわなと震わせていた。
空色のロングヘアに蒼い瞳。どこか幼い表情をしているが、身体の発育は完全に女子高生そのもので……。
「ごっ、ごめん!!見てないから!!」
ばっと目線をそらし、ちらりと盗み見ながら、
言い訳を並べる僕。
欲の盛んな年頃の僕にとって、完全に目の毒である。
しかし少女はなんの言動も起こさず、定位置で、
僕を警戒している。
「……、お、おい?」
あまりにも動きがなく、心配になった僕は、
出来るだけ視界から彼女の姿を外しながら、
そっと近づいて、声をかける。
けれども、やはり彼女は何一つ動きを見せず、
潤んだ瞳に紅く染まった頬、そして怒りを孕んだ表情でキッと僕を睨みつける。
すると突如、頭に鈍痛が走る。
「痛っ……」
思わず頭を抱えてしまうような強い痛みだ。
彼女は変わらず、僕を睨み続け、どこからともなく衣服を取り出し、それを身に纏い始める。
そして見たこともないタイトなワンピースにマントを羽織った彼女は、足元で痛みにもがく僕を見て、視線で怒りと恥辱を訴えてくる。
「ぐぁっ…あ…っ、この痛み、君がやってるんだろ?
いろいろ、…っ見たことは謝るからさ、!
はやくっ、はやくどうにかしてくれ…!!」
今にも頭が割れそうな痛みから、少しでもはやく解放されたかった僕は、ただひたすら懺悔を続けた。
彼女は、僕と目を合わせようともしない。ひたすら懇願する僕への痛みを更に増幅させる。そして、一蹴。
「ふざけないでっ、…サイテー、ヘンタイ」
今にも泣き出しそうな表情で、罵詈雑言をつらつらと並べる彼女。
どうすれば赦されるのかと、ひたすら考えるけれど、もはや何を言っても殺られそうな気がしてきた。
「ぁぁあああああああああああああああああああああああああっ!!!」
痛みに息がつまる。もうダメだ。僕はここで死ぬんだ。こんなの情けなさすぎる。母さんや幼馴染みに見られたら死ねる。いや、もう死にそうなんだけど。
死ぬ直前になってまで、くだらない事ばかり考えてしまうのは、現実逃避したいからだろうか。
「何か言い残したことはある?」
氷のような冷たい声で、そう告げる彼女。
いろいろな人への感謝、謝罪の気持ち。
色々なものがふつふつと湧き上がってきたけれど、
何よりも僕は母親へ伝えられていないことが沢山あると思った。何から伝えるべきかと考えてみるけれど、それよりも先に口走る。
「もう1回カラダを見せてくれぇえええええええ!!!!!」
しまった、と思ったけれど、時すでに遅し。
殺られかけている相手に向かって、世界で一番情けない遺言を残してしまった。。。
その時、パシンっという破裂音が響いて、頬がじんわりと熱くなっていくのを感じる。
頭痛が嘘のように消え、代わりに頬がヒリヒリと痛みを訴え始める。
「っ!!!ばっかじゃないの!!?」
ツンデレのお手本のような台詞を吐いた彼女は、
耳まで赤くして、部屋の隅で小さくうずくまって、動かなくなってしまった。