絶望の淵で見た希望
ごく普通の高校生、舞島風磨は、夏休み後、初日の学校から帰路についたところだった。
二学期一日目の授業もお疲れ様。
自分に言い聞かせながら、家へ向かうと、そこに
あったのは僕の家ではなく大きな宇宙船だった。
「……なんだよ、これ…っ」
今朝までこの場所に確実にあった「はず」の我が家は、完全に形を失っていた。
僕は目の前の光景を飲み込むことが出来ず、
ただただ頭が真っ白になった。
背中に嫌な汗がツーと流れる。
そして考えるよりも先に体が動く。
「母さん!…母さんっ!」
多くの野次馬をかき分けて進み、そこにいるはずの母親を探す。
つい最近、事故で父親を失った僕にとって、唯一血縁のある大切な家族だった。
「ふうちゃん、落ち着いて…!」
そう呼ばれて後ろを振り向けば、黒いロングヘアの幼馴染み。昼間とは打って変わって、焦った表情で、僕の行動を制してくる。
「落ち着いてなんかいられるかよ..!!!離せ!」
「おばさん、今は海外でお仕事でしょ…?」
彼女にそう言われてハッとする。
僕はようやく呼吸を取り戻して、ゆっくりと頭の整理を始める。
僕の母親は、地球外の生命について研究をしている研究員である。現在は、アメリカで研究者たちの補佐をしているのだった。
「ハァ……っ、そっか…ありがとう、」
父親を失っているせいか、これ以上家族を失いたくない思いが人よりも強いのかもしれない。
・
それから、警察官の能力のおかけで、家を直してもらったけれど、謎の宇宙船は、家の裏に放置された。要するに、今後何日か続けて調べに来るのだろう。持って帰れよ、これ。
「ふうちゃん、大丈夫…?」
僕の幼馴染みの口癖は「大丈夫?」
どんな小さなことでも大きなことでもそう聞いてくる。今の僕にとって、そんな言葉は、ただのプレッシャーでしか無かった。
「…、とりあえず今日は家帰ってくれるか、」
一瞬苦い顔をしたけれど、すぐにいつもの笑顔に戻って、"またあした!"と残し家に帰っていった。
何をするわけでもなく、ただ呆然とベッドに寝転がる。あの宇宙船はなんなのか。
(母さん、早く帰ってこないかなぁ…。)
睡魔に遠のく意識の中、うっすらと目を開けると
部屋の隅に見覚えのないものを見かける。
なんだろう。何かの卵だろうか。
にしても、キャリーバッグくらいのサイズ。
こんな卵初めて見た。
起き上がって、それに近づいてみると、ふるふると揺れているのに気づいた。
「?、なんだこれ」
好奇心8割、恐怖心2割と言ったところで、その卵に、コツと拳をぶつけてみると、そこからピリッとヒビが入る。
それを始まりに、水が染み込むように、殻にヒビが入っていき、中で何かが動いているのがわかる。
「っわ!!」
穴から覗いてみると、中の何かと目が合った。
すると同時に、中のモノが突然飛び出してきて、僕とは反対側の位置まで移動する。
それに焦点を合わせていくと、そこに居たのは、
僕と同じくらいの年齢の少女だった。