カルキ抜き タニシとヤマトの共通点
ココはアクアリウム・バックヤード地下フロア兼利眞守宅。
自宅と言っても店との仕切りは僅かな階段と簡素な作りの扉だけで、鍵すら無い状態。
つまり店内にいれば誰でも自由に出入り出来るノンセキュリティな空間だ。
しかし自分の家とは不思議な場所で、そこに居るというだけで妙な安心感に包まれ、人間が普段持ち合わせている程よい殺気と緊張感、警戒心も薄れてしまうのだ。
そして無防備な状態となった利眞守は部屋の隅で熟睡している。
その為、自らに黒い影が忍び寄って来ている事など一切気付かず、すんなりと自宅への侵入を許してしまう。
ソレは音もなく壁を這い、天井を伝い瞬く間に彼の頭上へ到達、狙いを定め天井を蹴り出し急降下!
空中で体勢を180度反転させ両膝から利眞守の腹部へ着地し、直下型ダブルニードロップを決めた!
「うぼぉぅおぉっ!?」
無慈悲な両膝爆撃に、のたうち回り悶絶する。
このままでは今朝の光陽を拝む事なく永遠の眠りに・・・ソレだけは勘弁願いたい利眞守は気力で意識を繋ぎ止める!
激しい吐き気に襲われながら腹部に、めり込んだ凶悪なる膝をたどると、黒いタイツがシルエットを強調する細く美しい脚部に深緑のホットパンツ。
ぺったんこな、まな板ボディに爽やかな白いシャツと薄茶の上衣。
サラサラ黒髪ロングヘアに特製オメガアイバッジでワンポイントを飾ったコイツの正体は──
「プ、プレ・・・貴様ぁ──っうぅぇ!!」
「おぉ本当に起きた!これが寝起きニードロップか!」
「ねお・・・何だっ・・・うぷっ!つーか、こんな殺人ドロップ俺じゃなかったら死んでたぞ!」
朝一から瀕死のダメージに襲われるも、最低限の常識をプレ子に説き振り払う。
以後、寝起きニードロップが禁止となった事は言うまでもない。
「そんな事より"問題"出してよ」
「問題?今の寝起きニードロップも十分すぎる以上に問題だが?それとも俺が問題行為を──」
「違うよ!問題ってクイズの事だよ。なぞなぞ」
「・・・面倒くせぇなぁ。じゃ1+1は?」
「2!」
「正解。満足したろ?はい解散、解散」
ぶっきらぼうな対応であしらった利眞守を、ジトッと見つめるプレ子は──
"ガブリッ!"
「いやあぁあぁぁ!」
「真面目にやれ!そんな簡単な問題で私が満足するハズないだろ!もっと難しいのを要求する!」
「うるせぇな!なんだって急に」
「最近私は著しく賢くなっているのだ!その成果を試すべくオーナーに挑戦状を出しているのだ!!」
「喋り方は賢くねぇけどな」
「なんだとぉ!?私は・・・なんだっけ・・・"おどうせんしゅん"?先生の教え子なんだぞ!!」
「お前はドコの坊さんに弟子入りしたんだ?」
"おどうせんしゅん"なる人物とは何者なのか?
?マーク飛び交う利眞守にプレ子がお気に入りのノートを見せると、全ての謎は一瞬で解けた。
「御堂ってコレ読み方が違ぇよ!音読みと訓読みを見事に間違えてんじゃねぇか!御堂千春じゃなくて御堂千春な!」
その正体は千春だった。
プレ子が現れて以来アクアリウム・バックヤードには彼女目当て?で政宗、千春、ミハイルが頻繁に訪れるようになった。
その際、彼の知らない間にプレ子は3人と仲良くなり、政宗からは昔の武勇伝や喧嘩殺法を教えてもらい、千春からは勉強や美味しいスイーツの事を教えてもらい、ミハイルからは・・・ロシア語が分からないので何も得るモノがなかった。
そして最悪の寝起きを提供した、先ほどの寝起きニードロップも政宗伝授の喧嘩殺法に他ならない。
その所為で朝っぱらから気分も体調も、すこぶる悪い。
それでも食い下がるプレ子に、1発意地悪な問題を出して諦めてもらおうと利眞守は考えた。
如何に成績優秀な彼女が指導したと言えど相手は所詮熱帯魚。
ちょっと賢くなったとしても、そのレベルなんてたかが知れる。
「じゃいくぞ?AからB、BからC、CからD、DからAと続く道があります。この道は全て均等な距離で、俺はずっと同じ速度で移動してました。AからBまで移動すると1時間30分かかる。BからCまで移動しても1時間30分かかる。ほんでCからDに移動しても1時間30分かかる。ところがDからAに移動すると、なんと90分で着いてしまった。先述の通り俺は、ずっと同じ速度で移動してたし4本の道は全て同じ距離なのに、なぜこんな事になった?」
「う~ん・・・あっ、解った!!」
「マジで?」
利眞守の予定では頭を抱えて不貞腐れるプレ子の姿を見て嘲笑う己の姿を想像していたのに、ものの数秒で彼女は問題を解いてしまったらしい。
もしかしたらホラを吹いているだけかも知れないので一応答えを聞いてみる。
「AからB、BからC、CからD、DからAは全部同じ距離なんでしょ?他は1時間30分かかったのにDからAだけ90分かかったってソレ普通じゃん?だって1時間30分って変換すると90分でしょ?」
「・・・や、やるじゃないか」
予想外にもプレ子の解説は完璧なモノだった。
1時間30分=60分と30分。
ソレを足せば90分となる。
言い回しを変えただけで別に不自然な事は一切ない、意地悪問題だったのだが難なく正解されてしまった。
コイツは数字に強いのか?
ならば、もっと難しい問題を出して悔しがるプレ子を見てみたくなってしまうのが人の性。
上体を起こした利眞守は、ちょっと本気を出してみる事にした。
「いいだろう・・・俺のムダ知識を相手にドコまで抗えるかな?」
「かかってきたまえ!」
「3問続けていくぜ!パイナップル、オルゴール、ビリヤードを漢字で書いてみよ!」
"キュポン──キュキュッキューッ──カチッ"
お気に入りのノートにマジックでスラスラと書いていく、そのペン捌きに一切の迷いは見られない・・・まさか──
「書けたぞ!鳳梨に自鳴琴に撞球!」
「・・・人名は分からなくても、単語なら漢字も網羅してますってか」
コイツの実力が、これ程とは見誤った。
開いた口の塞がらない利眞守は次の手を考える。
数字も漢字も通用しない彼女に一泡吹かせられる超難問・・・ロシア語?
いや、ソレを使ってしまったらクイズというジャンルを超えてしまう。
ならば・・・歴史で勝負だ!
「い、いくぜプレ!コイツは歴史の知識とヒラメキが必要になる超難問だ!」
「返り討ちにしてやる!かかってきたまえ!!」
「いい度胸だ!題して真実を見抜き、手紙の謎を解け!」
「おぉミステリーだ!」
興奮するプレ子に若干の不安を感じながら問題を出す。
利眞守曰く、歴史の知識とヒラメキを必要とする超難問の内容は、このようなモノとなっている。
ある日、骨董商の元に1通の手紙が届いた。
差出人によると、その手紙は第一次世界大戦中に書かれたモノなので鑑定してもらいたいとの事。
古ぼけて変色した手紙は当時のモノと言われても判断がつかないが、骨董商はその手紙の内容だけを見て偽物だと断言した。
実際手紙は偽物だったのだが、骨董商は文章のドコを見て偽物だと判断したのか?
さぁ、みんなも一緒に推理してみよう!
※翻訳されている事は気にしないでくれよby利眞守
~~愛しのエカテリーナへ~~
お前と会えない日々も早いモノで2年が過ぎた。最後に肩を並べ、共に将来を語ったりあったのはヴラジヴォストクの港だったな。忘れもしない1915年7月の夜。25度を超える暑い夜風が俺達を抱きしめながら最悪の報せを運んできた。その日を境に、俺は今でもマドセン軽機関銃を持ち戦火の中を駆け回っている。この第一次世界大戦は人類史上最悪の戦争として未来永劫語り継がれるだろう。終わりの見えない戦いの中で、お前から送られてくる手紙だけがボロボロになった今の俺を支えている。その手紙に返信を書く度に俺は誓う・・・必ず生きて帰える!俺には帰る場所があると!自分の為に戦う兵士は強いが、愛する者の為に戦う兵士はソレ以上に強い。信じていてくれ・・・俺は絶対に生きて帰ってくる!そうしたら、また2人で肩を並べて未来について語らおう。
~~1917年9月21日 セルゲイ・ルディ~~
「う~ん・・・あっ、解った!!」
「ウソでしょぉ!?」
信じられん・・・またもコイツは数秒で問題を解いてしまったらしい。
おそるおそる、プレ子に問題の解説を要求してみると──
「コレって先入観を利用した問題だよね。"第一次世界大戦は第一次世界大戦だ!"っていう先入観をさ。第一次世界大戦って1914年7月28日から始まって1918年11月11日に終結したでしょ?でも、その時はまだ、第一次世界大戦は第一次世界大戦って呼ばれてなくて、世界大戦とか大戦争とか欧州大戦とか呼ばれてて、それが第一次世界大戦って呼ばれるようになったのは第二次世界大戦の後なんだよ。で、第二次世界大戦は1939年9月1日に始まって1945年9月2日に終結したから第一次世界大戦中に書かれた手紙に、第一次世界大戦って単語が出てくるのはあり得ないのだ!どうだオーナー参ったか!」
プレ子の答えはパーフェクトだ。
問題の引っ掛けポイントから正しい歴史の時系列まで解説されてしまっては彼女に返す言葉もない。
最早利眞守はダウン寸前。
数字も漢字も歴史もダメ!
ならばこの変則問題でどうだ!?
ぷるぷると指先を震わせながら、1から9までの数字が書かれたトランプを2組用意する。
そしてプレ子に好きな数字を2枚引かせる。
要は彼女が何のカードを引いたかを当ててみせ、一体どうやって当てたのかを答えてみろ!という内容になっている。
利眞守が背を向けている間にプレ子が引いたカードは9と5だ。
「引いたか?ンじゃ引いたカードの好きな方1枚を選んで、その数字に2を掛けてくれ」
(え〜と・・・9×2だから18だ!)
口に出さないようにノートに式を書き込むプレ子。
「今度は、その数字に7を足すんだ」
(18+7だから25だ!)
「そんたら、その数字に5を掛けるんだ」
(25×5で・・・125!)
「で、その数字にもう1枚のカードの数字を足すんだ」
(もう1枚のカードは5だから足して130だ!)
「全部計算したらどんな数字になった?」
「130になったぞ!!」
「なるほど・・・お前の引いたカードは9と5だな?」
見事に的中させた利眞守が満面のドヤ顔と共に振り返るが、プレ子は特に驚いた反応を見せなかった。
ココまで来ると彼女に恐怖感すら覚え始めた利眞守が、そのノートの中身を見てみると──
9×2=18
18+7=25
25×5=125
125+5=130
────────────
(9×2+7)×5=9×2×5+7×5=9×10+35
9×10+35+5=130
9×10+35+5ー35=9×10+5=95
「へぇ〜・・・つまり合計した数字から35を引いた数字の、十の位と一の位が最初に引いたカードの数字になるんだぁ・・・よく思い付いたなオーナーめ!」
(うそでしょ嘘でしょウソでしょUSOでSHO!?)
自分という存在を形成している原子の1つ1つがグニャグニャと、ひん曲がっていくような例えようもない恐怖に、利眞守の額からは脂汗が滴り落ちる。
そこで気付けとばかりに自らの左頬に掌底を打ち込み、取り乱した心を無理矢理落ち着かせる。
そうだ・・・冷静に考えろ・・・何を取り乱す事がある?
要はプレ子が"間違えてくれさえすれば良い"のだ。
ならば残るは・・・地理!
よくある国土の面積問題を出してみよう!
一見するとグッと難易度が下がったように感じるが、利眞守も悪知恵の働く男。
連勝続きの彼女が余裕ぶって問題をフライングしてきたら・・・勝てる!
その為の布石も既に用意済みだ。
クククッ・・・せいぜい束の間の勝利に酔いしれ、その首を自らの手で絞めるが良い!
「では問題だ。世界で最も面積の広い国はロシア、逆に最も小さい国は──」
「う~ん・・・あっ、解った!!」
掛かった!
読み通りプレ子はフライングをしてきた!
ココで利眞守はクイズにおける伝家の宝刀"バチカンですが!"を言い終えてプレ子を見下した。
さすがの彼女も"しまった!"と表情を渋らせる・・・勝てる!コレは勝てるぞ!
「見誤ったな!問題は最後まで聞くのが鉄則だぜ?つまりお前は問題を解くだけじゃなく、問題文そのものを推理しなきゃイケないってわけよ!さぁ最大の国ロシアと最小の国バチカンから問題のゴールはドコに向かう!?」
「う~ん・・・世界最大と最小の国・・・じゃ日本の都道府県なら・・・最大は北海道で・・・あっ、解った!答えは香川県だ!」
「・・・ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー!」
勘が良いのか?
それともコイツは超能力が使えるのか!?
このままでは人類史上初、知恵比べで熱帯魚に負けた男の名で動物界脊椎動物門哺乳網霊長目ヒト科の汚点として歴史に刻まれてしまう!
そもそも千春が教えたのなら学校で習う範囲や、その手のジャンルは全て対策されているハズ。
しかもプレ子には教養がない為、変な固定観念もない。
コレはクイズに限ってだけ言えば、とんでもない利点である。
やはり卑怯と言われてでもアクアリウムから出題するしかない!
それにアクアリウムなら、少なからずプレ子にも通ずる部分はある・・・まぁセーフでしょう。
斯くして霊長類VS魚類の意地とプライド?をかけた最後の1戦が幕を開ける!
「プレ・・・タニシとヤマトの事は、もちろん覚えてるよな?」
「もちろん!」
「よろしいでは最後の問題だ。タニシもヤマト・・・つまりは淡水エビも世界中に分布する生物だがヤツらが生息していない場所として、いわゆるブラックウォーターと呼ばれる水質のエリアがある。様々な効能を持ち、意図的に作られる事も多いブラックウォーターだが、なぜ淡水貝と淡水エビはブラックウォーターと化したエリアには生息していないのか?」
「う~ん・・・」
(おっ!良い感じに悩んでるじゃねぇか)
渋い顔で考え込む。
やはり千春の知らない事はイコールでプレ子も知らないと見て間違いないだろう。
しかし彼女の恐ろしいところは知識の応用力であり、もしかしたらもしかするかもしれないので最後まで気を抜けない。
「メガネ?それとも筋肉?」
だが全ては利眞守の計算通りに進んでいる。
最初に彼が放った"タニシとヤマトは覚えてるよな?"という何気ない一言。
実は、この瞬間に利眞守は心理的トラップを仕掛けていたのだ。
プレ子に固定観念がないのはソレ自体を知らない為であり、逆に言えば彼女にとってタニシはメガネ、オタク、ピンク色のイメージ。
ヤマトは筋肉、褌、漢、ポージングというイメージが存在している。
つまり利眞守の一言によりプレ子の中のタニシとヤマトのイメージ像が、あの2匹の存在感を色濃く残し肥大化する。
こうなってしまっては真実は闇の中。
なぜならオタク少女とムキムキ褌に共通点は存在しない・・・コレはあくまで、タニシとヌマエビがブラックウォーターに生息していないのはなぜか?という共通点を探る問題なので、そこに気付かない限り永遠に答えたには、たどり着けない。
「う~ん・・・筋肉でござる?」
(ちと卑怯な気もするが戦いとは非情さ。例え政敵であろうと勝利の為なら利用する・・・なぜなら俺も負けたくないのでな。この1戦はNIKEに捧げる勝利の聖杯。悪く思うなよプレ・・・最後に笑うのは俺なんだ!)
ふとした時に表れる黒利眞守は非情だ。
ただただ大人気ないだけとも言えるが、その大人気なさが彼の魅力でありウザいところでもある。
そんな男が、その気になれば幼稚園児と本気でケンカする事も出来るだろう。
となれば熱帯魚を相手に同レベルの争いをする事くらい、どうって事はない。
良く言えば少年の心を忘れない男であり、悪く言えば成長しないガキ。
この2つが似て非なる全くの別物であるという事に気付いている人間は意外と少ない。
「まさかオーナーが、こんな姑息な問題を出してくるなんて・・・!」
「ギブアップか?正直わからない事をいくら考えても答えは出ないぜ。世の中、諦めも肝心なんよ」
「くっ!卑怯だぞオーナー!」
「光栄だぜ」
両目を閉じてムキー!と悔しがるプレ子。
いつぞやも、こんな表情を見た気がする。
負けず嫌いな彼女は自分の口から"ギブアップ!"の一言は絶対に出ないだろう。
そんな時は出題者が状況を見て、解答を述べるしか方法はない。
決して折れないプレ子を無視して、ゆっくり答えを発表する。
「要はタニシとヤマトの共通点は殻だ。タニシなら貝殻があるし、ヤマト・・・えっと淡水エビは甲殻がある。コレがポイントなのよ」
フンッ!と腕を組み、そっぽを向くプレ子。
問題が解けなかったのが相当悔しいのだろう。
「前にも言ったかも知れないがブラックウォーターってのは酸性の軟水だ。水質にはアルカリ性と酸性と中性があって、さらに軟水と硬水ってのがあるのは、わかるか?1つ1つ説明していくとアルカリ性ってのはナトリウムやカルシウムとかのイオンって物質の密度が高い状態の水質を言うんだ。ちなみに人間の体液は弱アルカリ性らしい。ンで酸性ってのは読んで字の如く、酸の密度が高い状態の水質を言う。わかりやすく例えるなら酸性の水は飲むと酸っぱいって事だな。中性はその中間の水質の事。まとめるとアルカリ性は酸の密度が低く、イオンの密度が高い。酸性は逆にイオンの密度が低く、酸の密度が高い。次に軟水、硬水って言うのは水中の金属イオンの密度で区別される。密度が低ければ軟水で、高ければ硬水だ」
プレ子は腕を組みながら首を傾げている。
その頭上には沢山の?マークが浮かんでいる・・・ような気がする。
「話をもどすとブラックウォーターは酸性の軟水だから水中の金属イオン、つまりカルシウムが少ないって事だな。コレはイコールでタニシやヤマトの"殻"を形成する主成分が足りないと言う事になる。その結果ブラックウォーターで生活しているとタニシ達は自分の体を維持できなくなって弱ってしまったり或いは死んでしまう。これがブラックウォーターにだけ生息していない理由ってわけよ」
「そんな問題解けるか!!」
「まだまだだな」
「バカオーナー!なら私も問題出すから解いてみてよ!」
「あぁ上等かかってきたまえよ?」
攻守交代、今度はプレ子が出題者だ。
「じゃいくよ?A君とB君がいます。A君とB君はとっても仲良しで、ある日2人はA君のお父さんからお小遣いを貰いました。A君は1000円貰いました。B君は3000円貰いました。どうしてB君だけ2000円も多く貰えたのでしょうか?」
「古典的なクイズだな?逆に、こーいうのに限って難しかったりすんだよな?A君とB君・・・なぜB君だけ多く貰えたのか?」
利眞守は必死に考えた。
しかし答えらしきモノは思い浮かばない。
何か見落としてるのか?それとも引っ掛けか?
問題文も大して長くはないシンプルなモノなのだが・・・さっぱりわからない。
コレはかなりの難問だ・・・熱帯魚ごときに遅れは取りたくないが、この調子では一生考えても答えは出ない。
たっぷり考えた末、利眞守は渋々プレ子に答えを聞いてみる。
「ダメだ・・・サッパリだ」
「オーナーもまだまだだね。じゃ正解発表!」
悔しいが完敗だ・・・キャップに手を置き、目元を隠すようにさらに深く被り直す。
「実はA君のお父さんはB君のお母さんと禁断の関係になってしまい、その後ろめたさからB君だけ2000円多くお小遣いをあげた。が正解でした!」
ぽかーんとした表情でフリーズした利眞守は、指先1つ動かせずにいた。
どういう事だ?と頭の中で、問題分と正解を延々ループtoリピートしながら考えに考えて、ようやくこの"問題"に隠された本当の意味と、真の答えにたどり着く。
それを理解した時、彼は無意識のうちに全身全霊の力を込めた雄叫びを放っていた。
「うぉおぉぉ!?ソイツは事件だあぁあぁぁぁ!!」