1匹目 爆誕!プレコストムス!!
「え~と食い付きバツグンゆっくり沈む極小サイズで・・・淡水魚の必要とする栄養素を全て配合?」
政宗の帰ったあと"いらない!"としてゴミ箱に投げ捨てたドリームタブ。
その後は何事もなく通常営業にもどったが、時刻が午後8時を過ぎた頃。
閉店作業をしている中でふと、その存在を思い出した利眞守はゴミ箱からそ〜と、ソレを引き上げ今に至る。
さっそく謎のエサ"ドリームタブ"を調べてみるが、このご時世にも拘らずネットにも、それらしい情報は一切なかった。
パッケージの謳い文句からしか得られるモノがない怪しさ満点のコレ・・・。
物言わぬドリームタブとしばらくの間にらめっこしていた利眞守は、限りなくクロに近い犯人を見つめる刑事が如き表情で考えたのち──
「まぁ・・・大丈夫なんでねぇの?気に入れば喰うし気に入らなかったら喰わない。水生生物なんてそんなモンよねぇ?」
"カラカラ・・・シャカッ──シャッシャッ!"
意を決して何個かの水槽、何匹かの生体にドリームタブを与えてみる。
すると、どうだろう?
エサを入れた矢先、次々と生体達が群がって来るではないか。
まずは謳い文句に偽りなし!と言ったところか。
気付けば、なんだかんだしている間に時刻は既に午後9時を迎えていた。
誰が待ってるわけでもないが、さっさと水槽のライトを消して帰宅しよう。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
"コポッ──コポコポッ!──バシャッ!!"
翌朝。
いつものように朝特有の冴えない面を天下に晒しながら店のシャッターを開け、店内に入る。
しかし今日は"何か"が違う気がする・・・得体の知れない雰囲気を感じ取った利眞守は一旦立ち止まり、体重を落とし姿勢を低くする。
先ほどまでの冴えない面が一転、彼の表情は既にアクアリストの面構えになっていた。
左腕を前に出し、右腕をその後ろに待機させ踵から、ゆっくりと地面に吸い付けるように歩を進め、足音を殺しならが店内を探索する。
ポンプが空気を送る音、水流が奏でる音、フィルターが水を汲み上げる音・・・今はその全てが敵意に満ちた呻き声に聞こえる。
"──ガタッ!!"
「そこか!?」
棚を隔てた向こうの通路。
すぐさま音のした場所へ駆け寄ると、薄暗いケース棚の下に蠢く小さな影を発見!
少し戸惑いながらも冷静に、外付けライトを外してソレを照らし出す。
"──カチッ!"
「きゅうぅうぅぅ!!」
「うぉっ!?」
刹那、謎の影は結構なスピードでコチラに突っ込んで来た!
アタフタする利眞守を嘲笑うかのように彼の足元をすり抜けると、またドコかへ行ってしまう。
一瞬すぎて何だかよく分からなかったが、その影は"数人の少年少女"のように見えた気がした・・・だが驚いている余裕はない!
相手も、この暗闇の中では自由に動く事すら儘なるまいと、大至急振り返りライトで照らす!
そこで目にしたモノは──
「押忍!!」
少年少女とは似ても似つかぬ褌1丁のムキムキ角刈り男が!
漢気溢れる出で立ちで!
コチラを見つめているではないか!!
「・・・は?」
瞬間的に全ての思考能力が機能を停止した。
本能が状況を理解するという行為を放棄してフリーズしたのだ。
なぜに俺の店にムキムキ角刈り褌男が居るの?
そしてなぜコチラを見つめているの?
目の前に突如現れた理解不能な事象を拒絶するかの如く利眞守の視野は一気に広がった。
そしてようやく、店内に踏み入った際に感じた"違和感"の正体に気付かされる事となる。
「コッチコッチ!パス!」
「きゅうぅ~」
「Kneel before your master!」
「・・・寒い」
店内をところ狭しと駆け回る少年少女達。
段ボールと戯れる謎の原住民族。
ツープラントの練習をしている覆面レスラーコンビ、その他大勢の曲者達がアクアリウム・バックヤードを占拠していたのだ!
まさに店内は混沌が芽吹く地獄絵図!!
「いやあぁあぁぁ!?」
"タタッキュゥイィィ!──バタンッ!!"
華麗なコーナリングを決め、狭い通路を猛ダッシュ!
一目散に外へと逃げ出した利眞守は扉にロックを掛け、その場に崩れ落ちるようにして座り込んだ。
何が起きている?ヤツらは一体何者だ!?
処理落ちして固まった身体を無理矢理動かし、おそるおそる店内を覗き込むが──
「はぁあぁ!やっぱりいる!?」
すぐに目線を逸らして何がどうなってるのかを考える。
最初に断っておくと、彼の頭の中には警察に通報するという選択肢など存在しない事を言っておこう。
声なのか魂の漏れ出す音なのか、どこからともなくヒシィ・・・と奇妙な音を立てながら利眞守は"ある事"を思い出す。
若干ニュアンスは違うが"もしかしたらイケるかも!?"と一途の希望が湧いてくる!
「た、たた確か幽霊とか熊が出た時ってててさ、叫べば良いんだったよな?実は相手もコッチにビビってるから押忍とか言ってくるんだよな!?・・・勝てる!!」
御門違いだろうが畑違いだろうが何だって良い!!
意を決して扉のロックを解除すると先制の怒号を上げるべく1歩踏み出し──
「コラァ──」
「押忍!!」
「いやあぁあぁぁ!!」
"バタンッ!カチャッ!"
YOU LOES・・・。
なぜか入り口正面で待ち構えていた角刈り褌の、漢気溢れる"押忍!"の前に成す術なく返り討ちにあってしまった。
過呼吸気味になりながらも、今度は全身全霊ヘルプの雄叫びを上げてみる。
しかし時刻は午前10時をすぎた頃、人通りは皆無。
その叫びも爽やかな晴天へと虚しく吸い込まれてゆく。
ため息1つ投げ捨てて、べた〜っと地面に座り込みアスファルトの隙間から顔を出す、健気な雑草達を意味もなく引き抜いた、その時──
"パァアァァァ!!"
「っ!?」
突如店内から眩い閃光が立ち込める。
今度は何だ!?
さらなる混沌と絶望、そしてこの世の終わりを覚悟した利眞守は念仏を唱えながら、おそるおそる再び店内を覗き込む──
「南無っ!!」
すると先ほどまで走り回っていた少年少女達もムキムキ褌の姿も見当たらない?
店内に渦巻いていた混沌がウソのように綺麗さっぱり無くなった??
外に置いてある水槽に隠れ、疲れきった表情を浮かべながら2度見、3度見を繰り返した後、滑稽ながらも意外に確かなホフク前進でゆっくり内部へ潜入する。
「南無妙法蓮華経・・・南無妙法蓮華経・・・」
再び念仏を唱えながら辺りを見渡し、さらに奥へと入って行く。
時おり後ろを振り返っては、ゆっくりと前進し続ける。
いつもと同じように水槽の設備が稼働する音だけが響き渡る・・・それが不気味でならないのだ。
「いきなり押忍とかやめてくれよ、いやマジで」
段ボールの中、棚の下、設備の裏、あらゆる場所を徹底的に捜索したが誰も居ない・・・さっきのアレは何だったんだ?
夢の中で見た悪夢から目覚めたような不思議な感覚に浸りながら立ち上がり、ブレーカーをONにして店内に明かりを灯す。
なんだか今日は店を開く気力もない・・・一息ついてキャップのポジションを直し、日課の水槽チェックだけして帰ろうと動き出した刹那──
"ドザッ!"
「どぉっ!?」
「ぎゃあぁっ!?」
天井から不意に"何か"が落ちてきた!
脳天から直下型で押し潰された利眞守は一瞬気絶しかけるが、最後の気力を振りしぼり体勢を立てなおし、バタバタと悶え苦しんでいるソレを凝視した。
「な、なんだぁ!?」
「いだーーい!あ"ぁ"ー死"ぬぅーー!!」
「ちょっ、えぇ?いや大丈夫か!?」
腹部を押さえ苦しんでいるのは涙を浮かべた少女(年齢は10代後半だと思う)だった。
ダークブラウンスをベースにスポット柄とΩマークのようなワンポイントが入った個性的な服を着て、体型は俗に"つるぺったん"と表現される見事な貧・・・もとい、まな板ボディである。
あとは黒いロングヘアに身長は平均的な女学生並みと言ったところだろう。
しかーし!肝心なのはソコではない!
「・・・ハッ!ま、まず誰というかなんでココに、つーか天井に!?」
「うおぉ・・・し、死ぬ・・・」
「だから死ぬとか・・・って、ちょっ!待て待て待て!それだけはダメだ!!」
なんだかよく分からないが死なれるのだけはダメだ!
兎にも角にも人として、悶え苦しむ少女を放置する分けにもいかない利眞守は再び尽力する。
と言っても正直なところ物理的な痛みは、時間が解決するモノだし彼女に対して今現状できる事なんて何1つなかった。
代わりに"なにか食べたいモノはない?"などと、あり得ない質問ばかり繰り返す利眞守に、謎の少女は少しイラだち始める有様。
それから数分後。
「あぁ・・・死ぬかと思った・・・」
「俺の店で死人が出るのだけは、なんとしても阻止しなければな。で?すいませんが、どちら様ですか?」
やっと・・・やっとこれで本題に入れる。
臥薪嘗胆の末目的を達成したような妙な、やりきった感が全身を隈無く支配するがコレで終わりじゃない。
今ようやく"少女と向き合う"というスタートラインに立てた・・・つまりココからが始まりなのだ!!
「どちら様って・・・私を忘れたのか!?」
「忘れた?以前お会いした事が・・・?ちょいっと待っておくんなせぃ・・・えぇ!?」
人の記憶というのは曖昧だ。
しかしなんの特徴もない野郎共ならともかく、このレベルの美少女を忘れるモノなのか?
少女の放った何気ない一言は利眞守の中で、男としての大切なモノを賭けた勝負に昇華しつつある。
思い出せ・・・思い出すんだ!
さもなくば男として大切なモノを失う事になる!
意地でも思い出すせ!!
首を傾げ、頭を抱え、脳を捻るも何も出て来ない。
その様子を見た少女は肩を落とし、ため息をつく。
最早ノリと勢いだけで、どうこう出来る状況ではなくなってしまった・・・しばらくの沈黙が場を支配した後、ソレを打ち破ったのは少女の方だった。
「それでも本当に"オーナー"か?」
「オーナーっと言われ・・・あ?」
今なぜ自分は"オーナー"と呼ばれたのか?
利眞守は、その一言をヒントに最もあり得ない可能性を想像してみる。
オーナーと呼ばれた事。
コッチは知らないのに向こうはコチラを知っている事。
何より少女の着ている服には、何処と無く見覚えがあった事。
正しくは服それ自体よりその模様。
ダークブラウンの下地にスポット柄、そしてΩマークのようなワンポイント。
もしコレが"オメガアイ"を意味しているとしたら?
以上のヒントと脳内にインプットされた情報をフル活用して考えた結果、彼の頭脳は"1匹の熱帯魚"の存在を導き出した。
そして、おそるおそるその名前を口にする。
「・・・・・・プ・・・プレコ?」
「おぉ!やっと思い出したかオーナーめ!プレコストムスだぞ!!」
アマゾン川を中心とした南米の熱帯域に生息するナマズ目ロリカリア科アンキストルス亜科の熱帯魚"プレコストムス"だと自らを名乗った少女は両腕を大きく広げ誇らしげな表情をしている。
それに対して利眞守はポカーンとした表情を晒している。
ある意味コレが正しい反応だが、それで終わらせてしまっては話が拗れるは必然。
彼は次なる1手として少女の発言を全面否定する。
「いやいやいやプレコストムス?冗談はいけませんぜ!?まぁツッコミたい所は1億箇所くらいありますけど、何より先より言いたいのはプレコは魚!アナタ様は人間じゃありませんか!えぇ?」
こんな与太話を肯定するわけもなく小馬鹿にした口調で切り捨てる。
そんなバカな事ある分けがないし、あってたまるか!
彼女はコチラの発言をボケと受けっとてノってくれただけだ!そうに違いない!
魚が人間になる?一体ドコの錬金術士の仕業だ?
そんなモン今時の幼稚園児だって愛想なく否定するぞ!
メルヘンとしては面白いがクオリティは低くいし、何より現実味がなさすぎる。
だが謎の少女も黙ってはいない。
若干ムキになりながら利眞守の発言に異議申し立てる。
「さっき自分で私の事を呼んだだろ!何を否定する!」
「それはアレじゃん、ほら・・・アレだよ!!てか本当にプレコなら"壁に張り付く"くらい出来るハズでねぇの?」
「もちろん!」
「い、意気込むじゃないか・・・では張り付いてもらおうじゃないの?」
「よかろう!!」
無理に決まっている。
人間が壁に張り付くなんて出来る分けがない。
しかし妙な自信に満ちた表情の少女は迷う事なく、薄汚れた壁の前に立ち、じー・・・とその1面を見つめている。
さて何をしてくれるのか?
壁に張り付けずスベり落ちた少女に対して"どんなリアクションをしてやろうか?"と利眞守が1人嫌味ったらしく考える中、おもむろに彼女は壁に向かって跳躍。
すると──
"ピトッ"
「えっ?」
ちょっと待て・・・分けが分からんぞ!
だが実際に目の前で少女は壁に張り付いてみせた!
しかも両手両足で踏ん張っている分けでもなく、体を一直線にして自然体で張り付いているではないか!!
「・・・マジで?」
「恐れ入ったか!プレコストムスの力、ナメるなよ!」
この瞬間、利眞守は少女を否定する権利を失った。
こうなりゃ最後の悪あがきだ!とばかりにアクアリストの知識で対抗してみるも──
「マジで・・・プレコなの?いや、だけどプレコって吸盤状の口を使って張り付いてるんじゃなかったか?なんで喋れんの!?」
「そんなの知るか!オーナーが私をこんな体にしたんだろ!!」
「・・・なに?はぁっ!?俺が犯人なの!?」
さらなる追い討ちを食らう結果となってしまった。
身に覚えのない事だが当事者がそう言っているのなら、そうなのだろう。
だが彼女に何をした記憶もないのだが、何がどうしてこうなった?
全てが腑に落ちないが一応彼女に聞いてみる。
「お、俺は何したんですか?」
「はぁ!?あの食事はオーナーが用意したんでしょ!」
「メシ・・・はぁあぁぁっ!?」
脳裏に浮かぶドリームタブ、浅ましきは己が愚行、そして全ての元凶たる政宗の憎たらしい程の暴力面。
利眞守は全てを覚った。
店内を走り回っていた少年少女達もムキムキ褌も、全てこの店にいる水生生物達。
だから・・・だから"いらない!"って言ったんだよ!
八つ当たりにも近いイラだちを覚えた直後、脳天に核弾頭を撃ち込まれたかのような激しい目眩が利眞守に襲い掛かる。
そんな中、プレコの訴えが彼にトドメを刺した。
「分かったか?分かったら私を元にもどせ!」
「なに?元にもどせってまさか、もどれないのか?」
他の生体達はもどっているのに、なぜかプレコだけがもどれない?
マズい、これは非常にマズい。
なんだかよく分からない内に、なんだかよく分からない事が起きて、なんだかよく分からない展開を迎えている!!
森羅万象のバカやろう!
なんたって、こんなエゲツない試練を与えてくれちゃったりしてくれちゃうんだ!!
「いやあぁあぁぁ!こんなのイヤだあぁあぁぁ!!」
"タタッ!──ガチャンッ!"
「あっ、こらオーナー!ドコに行く気だ!!」
本日3度目の逃走。
壁に張り付ついたプレコ1人(1匹?)を残して利眞守は店の外へ、出て行ってしまった。
「オーナー・・・」
絶望の雄叫びをあげながら街中を駆け回る彼の姿は第三者から見れば文句なしの危険人物。
幼い子供を連れた母親は、そっと我が子の目を隠し、制服を着崩した不良達も不自然に空を見上げて"良い天気だな"などと抜かし始め、挙句には警察官すら見て見ぬフリをする。
そんな周りの目など気にも留めず走って、走って、走り続けて気付けばココは県境。
サンサンと煌めく太陽を背に浴びて、ようやく冷静さを取りもどした利眞守は1人考えていた。
これから自分はどうすれば良いのか?
何をすれば良いのか?
そしてプレコは今頃どうしているのか?
考えても答えは見つからない・・・ならば一度もどるしかないだろう。
現実逃避もココまでだ!
全てと向き合う覚悟を決めて利眞守はアクアリウム・バックヤードの前まで、もどって来た。
「ふぅ・・・現実とやらよ、いざ参る!!」
"──ガチャ!"
1歩中へ踏み入れば、店はあの時と同じ状態で出迎えてくれた。
聞き慣れた設備の稼働音を戦歌に、奥へ奥へと突き進む。
「プレコ・・・ドコだ?プレコさーん?」
もしかして元の体にもどったのか?
一目散にプレコの水槽を確認するが生体の数が多くて、どれがあのプレコか分からない。
まさか店の外に出ていってしまったのか?
不安を抱きながらも、さらに店内の探索を続けた。
「おーいプレコ?オレンジスポットセルフィンプレコストムス?」
問い掛けても返答は無い・・・自分でも分からないが一抹の寂しさが胸を締め付ける。
先ほどまで厄介者扱いしていた相手が居なくなったとあらば、普通なら喜ぶべき事なのだろうが・・・なぜだろう。
この心にポッカリと穴が空いたような虚しさは?
ソレを感じ取ったのと同時に、言いようもない罪悪感に襲われる。
「プレコ・・・」
キャップに手を置き片膝を着いて、無気力にその場にしゃがみ込む。
ふと横を見ると、いつもと同じように生物達が水槽狭しと泳いでいるが今は何も考えられない。
「そうか・・・俺は・・・」
力無く片膝の体勢を崩して完璧に座り込んでしまった。
最早前を向く気力もない。
項垂れる姿は、まるで糸の切れた操り人形、或いは呼吸をするだけの肉塊か。
キャップに隠れた眼を閉じて1人、彼女の事を思い出す・・・その時──
「反省したかバカオーナー!!」
「っ!?」
聞き覚えのある声、聞き覚えのある口調、そして今利眞守が最も求めていたモノが聴覚を伝って脳を刺激する!
間違いないプレコの声だ!ドコにいる!!
左を右をキョロキョロと、後ろを前をグイグイと見渡していた刹那──
"──シヒュウゥゥ!!"
「・・・なぁにこの音は?」
無意識に天井を見上げた時、利眞守は思い出す。
プレコストムスが水槽内の流木、ガラス面など至る所に"張り付いてる姿"を。
そしてソレが無防備な体勢の自分に降ってくるところを。
眼はソレを捉え頭はソレを理解したが体が・・・動かない!!
「ヤバい・・・」
"──グギッ!"
「あ"ぁあ"ぁ"ぁ!!」
前回の反省からかプレコは背中から落ちてきた。
本来なら受け止めてあげるのが絵的にも良いんだろうけど、それはあくまで理想の話。
結果として利眞守は己の首だけで彼女の全体重+重力なんちゃらを受け止め、同時に耳を塞ぎたくなるような鈍い音を鳴り響かせた。
何はともあれプレコとは再開出来たが、この日を境に彼女を元にもどす為の、生き地獄が如き日々を送る事になった。