暴食VS傲慢 其の一
お仕事辛い
「はははっ、どうしたどうした!避けてばかりでは話しにならないぞ!」
巨大な斧を軽々と振り回すプリシラ、その攻撃のことごとくをハエの如く避ける俺。
バカ野郎、避けなきゃハエは死ぬんだよ!?
大地の加護のおかげでステータスが上がっていてもギリギリ。
斧が動いたとき軌道を予測して避ける、予測に反して急激に軌道を変えてくることも予測して避ける、避ける、避ける、避ける避ける避ける避ける避ける。
何回避けたか数えきれないほど避けた。
そのお陰で避けることがうまくなってきたなんて考えるぐらいは余裕があるみたいだな俺は。
ただまぁ、避けるだけじゃジリ貧なだけだしなぁ。
けど避けるのに集中してないと一発でぺしゃんこなんだよなぁ。現にこの辺はクレーターだらけになってるし。
それに仮に反撃できても出来ない理由がある。
それはプリシラが傲慢の魔王だからだ。
咎人には特殊な能力が備わっている、俺の暴食なら喰らい糧とする、グリードの強欲なら力を奪い取る等。なら傲慢であるプリシラにもなにかしら強力な能力があるはず。
なにかヒントでもあればいいんだけど。
「ほう、妾を前に考え事なぞする余裕があるのか?」
攻撃が止んだ、相変わらずの斧を片手で構え此方を見ている。
「なにか打開策を考えているのだろうがな、妾の咎に打開策なぞないぞ?」
「なんじゃと?」
「妾の強さは妾の支配圏の大きさによって決まる。貴様に打開策が無いなら妾には一生勝てないぞ?」
支配圏?
なにか特別な強化フィールドでも張っているってことなんだろうか。
何はともあれ余程の自信なのだろうな、まさか相手からヒントが貰えるとは思わなかった。
ただまぁ
『おいおい、確かに何もヒントがないよりはましだがよぅ、さっきのでヒントになるのか?』
もちろん、ヒントにはなったけど、まだ何も思い付いてない。
これはいよいよもって賭け事に手を出すしかないかもなぁ。
「まぁ、策がないわけじゃないんじゃよ?」
「ほう?なら何故それを使わない、どんな策であろうが妾はそれを越えて蹂躙するだけだが」
余裕が透けて見えるようだ、笑みを浮かべ、俺の事をおもちゃか何かを見るような目で見ている。
『おい、本当に策があるんだろうなぁ?』
「あるにはあるが、やったことが無いからどうなるか分からんのじゃ」
『本当に大丈夫かそれ』
「無論大丈夫じゃない、じゃが他に思い付かんから試すしか無いじゃろう」
俺は深く息を吸った、これから試すのは使う機会がなかったスキル、竜の魂だ。
全ステータスが上がれば大地の加護と合わせてこの状況を覆せるかもしれない。
ぶっつけ本番だけど、ちゃんと発動してくれよ、竜の魂!
ドクンッ!
そんな音が聞こえるほどに心臓が鳴った。
途端に全身を激痛が包んだ。
「ぎぃ!」
「ん、なんだ?」
痛い、痛い。
頭の先から爪先まで余すところなく痛い。
体が変化に悲鳴を上げている、骨が軋む、肉が千切れる、痛い、痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
やめておけば良かった、強くなった気になって、しなくていいことをして、要らないことに首を突っ込んで、痛い思いをする。
「なんだ、その姿は」
ふと気づくと、痛みが止んでいた。
プリシラの声で我に返ったが、どうやら終わったらしい。
自分の体を見てみると、黒い鱗のようなものが所々に生えていた。
こめかみの辺りには二本の黒い角、そしてやけに体が軽い。
どうやら成功したようだ。
ただ、二度と使いたくない。
「その姿はなんだ!」
「奥の手のようなものじゃ、死ぬほど痛かったが」
「そんな、その姿はまるで………」
信じられないものを見るようにプリシラは後ずさる。
まぁ、俺も信じられないから同じ気持ちだが。
とにかくとっとと終わらせよう、時間制限があるんだ、さっきから腹が減って仕方ない。
「それじゃ第2ラウンドじゃ、いくぞ?」
それだけ言って、俺はプリシラへ突撃した。
次の更新は10/9の予定です。
疲れが取れません、貧弱なのでしょうか




