間違っても俺はベジタリアンというわけではない!
一ヶ月………、一ヶ月だ。
一ヶ月も更新してなかった、なんたる怠惰!!
もっと勤勉でなくてわぁあ!
「~♪~~♪」
鼻唄を歌いながら上機嫌で手元の肉を捌いていく、丸ごと焼いてもいいけど、やっぱりちゃんと焼いた方が美味しいよね。
あ、どうもっ!
肉に目が眩んだダークエルフ、ロアです。
只今ワイルドボアの肉を解体中でございます。
ん?狩り尽くすんじゃ無かったのかって?
米やパンが無いんじゃ俺が満足出来なかっただけです。
それでも久しぶりの肉だったから一頭は獲ったけど。
調味料が無いから素材の味そのままになるけどね。
『しかしまぁ、こいつは少し妙だな。』
そんな声を上げるのは我がパーティ(一人と一匹)に新しく加入した魔導書ディブロ。
木に立て掛けてたらその一つ目を三日月に歪めてこっちを見ていた。
「ん?どういうことじゃ?」
『只のワイルドウルフやワイルドボアなら大したことはないが、お前さんが遭遇したのは群れのクラスに強力な奴だ。本来ならそういうやつは自分の群れを率いている、ボス同士で群れる何てことは聞いたことがない。』
あれで強い部類だったのか、まぁ俺のレベルが高いってだけなんだが。
称号に魔王が付いてからというものレベルのインフレの激しい世界に巻き込まれたからなぁ。
『何か良からぬ事の前触れじゃなきゃいいが…。』
「そのときは速攻で逃げるだけじゃよ。」
『なんだ逃げるのか、てっきり向かってくる奴は残らず丸かじりするのかと思ったぜ。ギャハハハハハ。』
「私はそんな節操無しじゃ無いぞ!?」
全く、この本は俺のことをなんだと思ってやがるんだ。
『そう怒るなよ、ほらもう焼けてるぞ?』
ぬ、確かにいい感じで焼けている。
んー、久しぶりの雑草野草以外の新鮮な肉だぁ!
思えば今まで食べられるのをいいことに草ばっかり食ってたからなぁ。
俺はベジタリアンというわけではないぞ!
ちゃんとお肉も食べるのです!!
「っと、ディブロって食事できるのかのぅ?」
『オレサマは本だぞ?本が食事できるわけねぇだろ、オレサマは魔物じゃないんだからな。強いて言えばお前さんが黒魔法を使えばオレサマはエネルギーを摂取出来る。』
「どういうことじゃ?」
『黒魔法ってのは別名代償魔法、何かを対価にして何かを得るという原理を元に使う魔法だ、たとえばお前さんが今使えるゴーレム召喚は石を供物として捧げて、その対価でゴーレムを使役するって事なんだ。そして捧げる対象がオレサマということ、魔法を使えば使うほど、供物を捧げれば捧げるほど、オレサマはエネルギーを摂取出来るってことだ。』
「エネルギーを摂取するとどうなるんじゃ?」
『それは分からねぇ、今までまともにオレサマを使ったやつなんぞ一人もいなかったからな。』
ふーん、とりあえずディブロは基本食事はせず、魔法を使用したときのエネルギーを糧に出来る?って事かな。
エネルギーを摂取するとどうなるかは、まぁやってみないと分からないから保留するとして、今大事なのは…。
「つまり、ディブロの分の食費が浮く!?」
『あー、なんだ、うん、まぁそういうことだな。』
心底あきれたようにディブロは目を細めながらこちらを見てきた。
なんだよぅ、分かってるって。
ようは魔法を使えばエネルギーを補給出来るってことだろ。
ちゃんと聞いてるよ。
まぁ、方針としては平和をモットーとして穏やかに暮らしたいからな。
なるだけ戦闘はしないから、エネルギーの補給はあんまり出来ないかもな。
「お口が臭い……。」
『そりゃワイルドボアの肉をなんの処理もなく食えばそうなるだろうよ、ギャハハハハハ!』
「キュウ…」
うん、そういえば猪ってくせが強いってよく言うっけか。
死ぬ前に猪なんて食べたこと無いからすっかり忘れてた。
てかディーナまで呆れなくても……。
味はまぁ味付け無しだったからそのまま肉だったけど、久しぶりの肉だったから満足はした。
「お前だって今は私と同じで臭いじゃろうが。」
現在ディブロは俺のお手製猪革のホルダーに入れて腰からぶら下げている。
さっきから笑いまくる本にせめてもの仕返しと、運びやすさと、背後警戒をしてもらうためだ。
『オレサマは本だぜ?本に嗅覚なんぞあるわけねぇだろ、その目論みはハズレだぜ?むしろ柔けぇ尻が背中に当たって極楽気分ってなもんよってあぁっ!?目がぁ!!テメェいくらオレサマが本だからって目潰しは流石にあんまりだろうがよぅ!?本はもっと丁重に扱え!!』
人様の尻を勝手に堪能したんだからむしろプラスだろうが。
全くこの本は、性別が無いにしても精神的に男なんじゃねぇか?
てか触覚も痛覚もあるくせに嗅覚は無いのな。
「私の尻を堪能したんだから当然の駄賃じゃろ?」
『お前は尻を触られたら相手の目を潰すのかよ!?』
「触ったら相手が男なら…鳥になってもらおう。」
『怖ぇよ!?』
仕方ないだろ、心は男なんだからそうなるって。
そんな他愛の無い話をしながら森を進んでいく。
ディーナがディブロの目に水をかけてやっていて、ディブロがギャアギャア言ってる。
ディーナ、気にして水をかけてあげてるんだろうけど、本に水をかけたら流石にダメだと思うよ?
そしてかけすぎたら俺のお尻がびしょびしょになるからやめてね?
そんなこんなで歩き続けてたら視界が開けてきた、どうやら森を抜けるようだ。
『感覚的にエルドラドへの道を最短ルートで進めているはずだ、森を抜ければエルドラドは目と鼻の先だぜ。』
ディブロ、そう言うのはもっと早くに言いましょう?
何はともあれようやくか。
随分寄り道したなぁ、でもここからだな。
目下エルドラドに着いたら自分が無害であることを証明してお金を稼いで、そして美味しいものを食べる。
魔王が嫌われてる中で、何とか無害であることを証明しなくては町にも入れないだろうし。
大変だろうけど自分のためだし、頑張って行きましょうかね!
覚悟完了、意気揚々と森を抜けた。
その先には小高い丘にお城を中心とした立派な城壁を構える街が見えた、あれがエルドラドかぁ。
流石に立派なもんだなぁ。
グリムも立派だったけどここも負けてないね。
ただし、森から街にかけて魔物と人の死体が転がっていなければ。
次はもっと早く更新できるようにします。




