魔導書
お待たせしました、申し訳ないです。
どうもっ!
教えて貰った方向へ一直線に歩きながら草をモシャモシャ食べているダークエルフのロアです。
走ってもいいけど、旅って歩く方が楽しそうじゃん?
だから腕一杯に雑草を持って、ポテチの如くモシャモシャしてるわけです。
雑草なのは、この辺りに食用の野草が生えてなかったから。
もはや食べられれば良い的な?
癖があるけど美味しいよ?
端からみれば只の貧乏人だけどさ。
と言っても、結構遅くなってきたから夜営の準備をしましょうかね。
適当にその辺の枝やら何やらを集めて組んで、火を着けたらはい完成。
うん、魔法って便利だね。
焚き火の枝を探してるときに野性動物も探したんだけど、一匹も見つからなかった………。
肉ぅ…。
さて、晩御飯を食べたところで(草しか食ってない)そろそろ頂き物の魔導書を拝見しますかね?
女王さまから貰った物、さまざまな文様が書かれていて、どこか目と口があるようにも見える古い本。
グリムの王が代々受け継いできたと言うからには、とても価値のあるものなんだろうけど、ちょっと不気味だよなぁ。
改めて手に持つとずっしり重く、これで叩いたら痛そうだなぁなんて思ったりして。
期待半分、不安半分で魔導書を開いた。
その本には何も書かれていなかった。
「え、白紙?」
流石にこれは拍子抜けだわ、どのページをめくっても白紙白紙白紙、この成りでこの本ノートなのかな?
『どれだけ頑張ってめくっても白紙だぞ?』
突然声が聞こえた。
この近くに誰かいたのか?
さっき枝を探してるときには見つけれなかったのに。
周りを見渡してみる、幸い暗い中でも良く見えるのだが、人ッ子一人見えないし、気配もなかった。
『おいおい、どこを見てんだよ』
また声が聞こえた。
大分近いな、それにこの男と女が同士に話してるような独特な声。
なに、俺ってばまた厄介事に巻き込まれた?
『はぁ………、お前とりあえず自分の持っている本の表紙を見てみな』
表紙?
思わず俺はパタンと本を閉めて、本の表紙を見てみた。
『よう、初めましてだな』
本に書かれていた目と目があった、口のようなものは口角を上げてニィッと笑みを作っていた。
「キモッ!?」
『ガッ!?』
思わず持っていた本を投げてしまった。
え、なんなんだあれ?
目があったよ?
目と目が合ったよ?
なんか笑ってたよ?
『いってぇな、いきなり投げ捨てるなよ!物は大切に扱えって親に教わらなかったのか?それとも本は一回投げるとか言うルールがお前の家にはあるのか?全く最近の若いやつは乱暴でいけねぇ、本のひとつも大切に扱えねぇのか?あぁ、お前が投げたからうつ伏せになっちまった、口に砂が入るからとっとと起こしてくれ!』
「あ、はい」
スゴい剣幕だったのに驚いた、素直に俺は本を拾いにいった。
『全く、今回の主は乱暴者のようだな。本は持ち主を選べないから、諦めるしか無いんだがな。』
俺が拾い上げると、その本はあきれたような表情をしていた。
…………その顔動くのか、模様じゃなかったのか。
そもそも喋る本とか聞いてないぞ!
『んで?お前さんがオレサマの新しい主サマか?』
「まぁ、そうなるかのぅ」
『ほう?乱暴者だが顔は悪くないな、乱暴者だがべっぴんさんが持ち主なのはラッキーだったな、まっ、仮に男で嫌でも本には主人を選ぶ権利はねぇんだけどな!ギャハハハハハ!』
そう言って本は笑う、いや笑う本とかホラー以外の何者でもない。
良い子なら泣き出すレベルだ、正直実際に見ると俺も怖い。
『んじゃあ、仕方ねぇから、とっとと契約しようか?』
この本のモデル、分かる人いるかなぁ(´・ω・`)




