閑話 僕が勇者になった訳 終わり
今日は二本連続で投稿します!
「「はぁ!?」」
先代の勇者が放った言葉に流石に度肝を抜かれた。
「ちょっと待ってください!ここって、この勇者の洞窟ですか!?」
『はい、すみません。』
「ふふっ、まさか最初っからクライマックスとは。流石に予想外だわ。」
またアリアが変なこと言ってる。
『ちなみに、この墓標の中に邪神と私の使ってた剣が入ってます。』
「それを言われてどうしろっていうんですか!?」
「まぁ、落ち着きたまえよオスカー君。邪神が今すぐ復活するわけでも無しに、まだ慌てる時間じゃないわよ?」
「なんでアリアが落ち着けてるのかが全く僕には分からないんだけど?」
普通少しは狼狽えるよね?
僕が異常なの?
ピキィッ
なんだ?何かにヒビが入ったような音が……。
「あ、墓標にヒビが入ったわね。」
…………はい?
「ちょっ、ちょっと先代様!?大丈夫なんですよね!?」
あの墓標に邪神が入ってるんですよね、割れたらヤバいんじゃ…。
『非常にまずいです、邪神が新たな勇者に反応してしまったようです。』
「そんな、なんとかなら無いんですか!?」
『今の私ではなんの力にもなれません。』
そ、そんな………。
墓標の亀裂はどんどん拡がっていく、それにつれて墓標の周りにおぞましい魔力が流れ出る。
僕は怖かった、逃げ出したかった。
何もかもかなぐり捨ててここじゃない遠くへ行きたかった。
でも、足が動かなかった。
単純に力が入らなかった、それに何処かで分かっていたんだ。
何処へ逃げても同じなんだと。
「ねぇ、このまま邪神が復活したらどうなるの?」
僕が恐怖に囚われている中で、どこまでも普通に、いつも通りにアリアは先代の勇者に問いを投げた。
『この一帯は完全に崩壊し、世界の終わりへのカウントダウンが始まります。』
「んー、それは困るわねぇ。この辺り一帯ってなると、お父さんやお母さん、村の人たちが死んじゃうわ。」
本当に困った様子で、それでも決して慌てていなかった。
「じゃあ、次の質問ね。勇者の引き継ぎって選ばれたものじゃないといけないの?」
『いえ、当代の勇者が心から信用できる人になら引き継ぎは可能です。』
「どうやるの?」
『え、勇者の証を相手に当てて念じるだけですが……。』
「あっそ。」
それだけいうとアリアは手を僕の肩に当ててきた。
ってあっつ!?!?
『ちょっ、ちょっと貴女何を!?』
「え?何って引き継ぎ。」
『なぜこの状況で引き継ぎを!?』
「そりゃあ、邪神を倒すには勇者が必要だからでしょう?」
なに言ってるんだこいつはと言わんばかりだ。
正直僕にも説明してほしいんだけど。
「んじゃ、今から邪神を封印するから。」
……………はい?
「ちょっと待って、アリアそんなことできるの!?」
「まぁ、一応?」
一応って……。
「オスカーを勇者にしたのは、封印しているときは私が身動きとれないから。そして……。」
少し空けて僕の目を真っ直ぐ見てきた。
「私はオスカーを一番信じてるからね。」
そう言うと背中をバシバシと叩いてきた。
「頼んだわよ、とっとと倒せるようになって私を助けなさい。」
僕が返事をする前に、彼女は墓標の前に立った。
待ってくれ、まだ僕はなにも!
「はぁ、まさか貰い物のチートスキルがここで役に立つとはねぇ。まぁ、使わないよりマシよね。」
アリアがなにか呟くと墓標と彼女を包み込むように茨が何処からともかく生えてきた。
あっという間にアリアもろとも墓標を包み込むと、辺りに漂ってきていたおぞましい魔力が途絶えた。
墓標もアリアも茨に阻まれて、影も見えなかった。
残されたのは僕と先代の亡霊と勇者の証だけだった。
『これから、どうするのですか?』
モイラが問いかけてきた、これからどうするのか。
それは僕が一番知りたい、自分自身どうすれぱいいのか分かっていない。
有無も言わさずに勇者を押し付けてきたアリアには声も届かない。
何をすればいいか分からないけど、言ってやりたいことはある。
「とりあえず、仲間を探してみようかと思います。」
『仲間、ですか?』
「アリアの封印がどのくらい持つのか分かりませんし、僕は弱い。だから僕と一緒に戦ってくれる仲間を探します。」
『それは…。いえ、貴方ももう勇者に名を連ねる者。これは貴方が解決するべき事ですね。』
「何ですか?」
『いえ、旅の武運を祈ってます。』
そう言うと先代様は空に消えていった。
一人か……。
とにかく、さっさと仲間を探して、アリアをあそこから出して一言いってやらないと!
僕は自分でやるんじゃなくて、誰かにやってもらう為に旅を始めた。
それが間違いと思ったのは、しばらく後だった。
「と、こんなことがあったんだよ。」
「へぇ、今もオスカーさんは誰かに邪神と戦ってもらおうと考えてるんですか?」
「まさか、今は僕と一緒に戦ってくれる人を探すよ。出来ればロアさんにも手伝ってほしいけどね。」
「そうですか。」
うん、とりあえずはロアさんを探さないと。
本当は急いでアリアのところに戻りたいけど、もう少し待っててね。
きっと「僕が」邪神を何とかするよ。
とりあえずこれで勇者の話はおしまいです。
変なところが一杯あると思うけど、許してね(´・ω・`)




