そうして俺は大魔王の誘いを断った
「フェラガイを従えると食欲が何倍にもなり、抑えが効かなくなるのです。いずれはこの世界すべてを食い尽くすでしよう」
アルヴァさんは確かにそういった。
あ、どうも。
いつものロアさんですよー。
なんだかヤバそうな事になったなぁ。
「そもそも、フェラガイってなんなんじゃ?」
その問いにアルヴァさんは初めて笑みを消して真剣な表情を作った。
結構コワイ。
「こやつらは、各魔王の中にあるもっとも強い欲の塊。使い方次第で毒にも薬にもなるものです」
「毒にも薬にも……。」
「はい、毒とは即ち意識をすべてを飲まれ、只の獣に堕ちること。しかし、己が物にしたときには莫大な力が手に入ります」
莫大な力ねぇ。
獣に堕ちるなんて嫌だなぁ。
てか、俺のもっとも強い欲の塊が食欲だったのか。
確かにストレスを感じると物を食ってたけど、まさかそこまでだとは思わなかったなぁ。
「どうすれば、力に飲まれず制御出来る?」
「そのための提案ですよ」
そういうとまたニコニコしだした、真顔よりはマシだな。
「どういうことじゃ?」
「ロアさんには、これから我が国へお越しいただき、魔獣フェラガイを使いこなす鍛練をしてもらおうかと」
ファっ!?
「ま、まてまて。今からじゃと?ここからニブルヘイムまでどんだけあるんじゃ!?そもそも、鍛練といってもそう簡単にいかんじゃろ!?」
「そこはご安心を、私が魔法で転移しますので。そして鍛練もわたしがお手伝い致します」
「アルヴァさんが?」
「はい、こう見えて憤怒の魔王なので」
まじかよ、ずっとニコニコしてるくせに憤怒かよ。
まさか反対の事をするのがコツだったりするのか?
「なんで、そこまでしてくれるんじゃ?」
そう、一番気になるのはそこだ。
現在であれば有無を言わせずに殺せるはずだろ?
なんでわざわざ忠告に来て、更には稽古をつけてくれるなんて、裏がなかったら嘘だぜ?
「なぜ……か。」
ふっと何処か懐かしむようにアルヴァさんは目を瞑った。
「似ているんです、彼女に。先代の暴食の魔王に。ただ、それだけですよ」
そういうと彼は苦笑いを浮かべた。
おうおう、なんだなんだこのラブな感じは。
内心ニヤニヤしていると、アルヴァさんは顔をニコニコに戻した。
「何か他に聞きたいことはありますか?」
んー、一応聞いとくか?
「あ、グリードという奴は知ってるかのぅ?アイツも強欲と名乗っておったし咎人なのじゃろう?」
「あやつはここ最近魔王にされたものです。その中でもやや特殊のようですが」
「されたものということは、誰かが魔王に強制的にさせているのかのぅ?」
「察しがよろしいようで、ここ最近の魔王たちは何者かに力を与えられて魔王になっているのです」
「何者か、と言うことは誰なのかは分からんのじゃな」
「残念ながら」
何者なんだろうな、相当強いんだろうか。
関わりたくねぇ。
「というわけですがどうですかな?」
あー、そういう話だったな。
「残念じゃが、私はいかんよ?」
そう答えると、アルヴァさんは目を細めた。
やめてくれ、その顔は怖いんだからさぁ。
「理由を聞いてもよろしいですかな?」
「やっぱりそこまでしてもらうのは悪いと思うからじゃな、自分の事ぐらい自分で何とかしたいしのぅ。」
これで頼っちゃうと頼りっきりになりそうだしね。
「……………。」
あぅ、沈黙が重い。
怒らせた?死刑?
内心ビクビクしていると突然アルヴァさんが笑いだした。
「ははははっ、面白い人ですね貴女は。本当に似ている。」
その表情は本当に愉快な様子だった。
なんだよ、そんなにおかしいか?
「わかりました、一先ず貴女を信じましょう」
「えらく簡単に身を引くんじゃのぅ?」
「いえね?貴女を見ているととても懐かしくなりまして、貴女がどうしていくのか興味が湧いたのです」
そう言うとアルヴァさんの足元に魔方陣が浮かび上がった。
「困ったことがあれば我が国へお越しください、力になりますよ?」
そう言い残すとアルヴァさんは魔方陣に吸い込まれた。
ふぇ、緊張したぁ。
今思えば、俺がダークエルフだから優しかったのかな?
とりあえずヒントも貰ったし、早速やってみますか。
俺は影の中からフェラガイを出した。
その他ご意見ご感想あればバシバシ下さい。
プラス意見は咽び泣き、マイナス意見は(´・ω・`)こうなりますが、出来るだけ反映出来るようにしていけたらと思います。
よろしくお願いします。




