異変
お待たせです!
目が覚めると、知らない天井だった…………。
あ、どうも!
激闘の末、勝利を納めたダークエルフのロアです。
で、ここどこ?
全体的に白い部屋に白いベッド、病院かな?
何でこんなとこに俺はいるの?
確か、グリードとの戦闘で………。
「ロアお姉さん!気がつきました?」
ベッドの横を見ると、エルザが嬉しそうに俺を見ていた。
「エルザか、私はどうしたんじゃ?」
「覚えてないんです?」
エルザから聞くに、グリードを撃退した後ぶっ倒れたんだそうだ。
あぁ、思い出したわ。
腹の減りすぎで倒れたんだ。
使いすぎには注意しないとな、さもないと年中行き倒れる。
思い出したらなんだか腹が減ってきたな。
「どうしたんですか?まだ具合が悪いんですか?」
エルザが心配してくれてる。
優しいエルザ、ぷにぷにした頬っぺたにしなやかな体。
あぁ、なんてオイシソウ。
っは!?
今俺はなに考えた!?
落ち着け、クールになるんだ。
単純に腹が減ってるだけだろう。
「あぁ、お腹が空いたんじゃよ。」
「なるほど、分かりました!今すぐご飯をもらってきます。ロアお姉さんは沢山食べるから、沢山貰ってきますね。」
「い、いや、流石に沢山貰うのは迷惑じゃ……。」
「大丈夫ですよ、ロアお姉さんは魔王を撃退した良い魔王って言われてますから。」
そういうとエルザは病室?から出ていった。
まじか、俺そういう立ち位置にいるのか。
やったぜ、良い魔王になるってのは目標だったし、このままキープせねばなぁ!
エルザが大量の料理をオスカーと持ってきてくれた。
うむ、くるしゅうない。なんちてね!
「ロアさん、ご無事で何よりです。」
「オスカーにも心配かけたのぅ。」
「本当ですよ、でもまぁ、貴女が魔王であるのなら、あのぐらい出来て当然でしょうけどね。」
オスカーはやれやれと言った感じで苦笑いを浮かべる。
解せぬ。
オスカー達から聞いた話によると、あの戦いから2日経っているらしい。
俺は2日も寝てたのか。
病院のベッドで安静にしてれば回復するとのことだったらしいが、そこは魔王パワーってことかな?
「ご馳走さま、美味しかったよ。」
「病み上がりのはずなのに、本当によく食べますねぇ。」
まだ腹半分にもみたってない無いけどね。
お腹が空いたなぁ、そういえば、グリード結構美味しかったな。
ほどよく鍛えられた筋肉、コリコリとした軟骨、歯応えのある骨。
丁度、そこのオスカーも良いかんジニ。
って!
なんだ、どうしたの俺!?
タベナイノ?
誰だよ!?
タベヨウヨ。
やだよ!
「どうしたんですかロアさん、そんなに汗をかいて。」
オスカーが心配そうに様子を伺ってくる。
「いや、ちょっと、疲れただけじゃよ。病み上がりじゃからかのぅ?」
「そ、そうですか?ならもう休みますか?」
「そうしよう、すまんが寝かせてもらうのじゃ。」
そういって布団に入る。
「なら、僕たちは隣の部屋に居ますから、何かあれば呼んでくださいね。」
そういうと、オスカーとエルザは部屋から出てくれた。
助かった、それにしたっておかしい。
何で俺はあの二人を美味しそうなんて思ったんだ。
タベタイヨ。
またお前か、グリードの時も聞こえたな。
タベヨウヨ。
もしかしなくても、お前がフェラガイか。
ヒトガタ、オイシカッタ。
ヒトガタ?
コリコリ、オイシカッタ。
コリコリ美味しかった?
タベヨウヨ、タベヨウヨ。
駄目だ、あの二人は駄目だ。
ナラ……。
その声が聞こえた瞬間、意識が窓の外に向けられた。
窓の外には公園があり、子供たちが遊んでいた。
まさか、なにいってんだ、そんな、あり得ないだろ。
アレナラ、タベテイイ?
駄目だ、これは駄目だ。
この化け物は危険だ。
何がっていったら、コイツの意識が俺に入ってきて、俺までオイシソウって思ってることだ。
せっかく良い魔王になったのに、コイツのせいで大量虐殺とか洒落にならん。
そもそも、こんな状態でオスカー達と旅してたら、いつ寝込みを襲うかわからん。
よし、逃げよう。
もう、人間の街には近付かないようにして、森とかに籠ろう。
食人鬼とか流石にごめんだ。
だから、黙って出ていくけど、ごめんね。
俺は絶影を使い、音を立てずに病室から抜け出した。
街に出て人とすれ違う度に、フェラガイの声が聞こえる。
タベテイイ?
タベヨウヨ。
タベナイノ?
イッパイイルヨ?
うるさい、それは俺が嫌なの!
聞こえる声を無視し、無心で街を駆け抜ける。
しばらくすると、俺は街から出たすぐの街道に出ていた。
街道も駄目だな、森に入ろう。
街道から外れて進んだ森に入る、こうやって進んだら誰にも分からんだろ。
魔物以外には。
森に入ってきて少しすると、魔物の群れに遭遇した。
それぞれ餌がきたとばかりに涎をたらしている。
奇遇だな、俺も腹が減ってるんだよ。
タベテイイ?
あぁ、丸ごと食い尽くせ。
魔物たちは、自らが捕食される側だとは少しも思わずに、俺たちに周辺の木々ごと丸のみにされた。
ご馳走さま。
けど、まだ足らないな。
足取りは重く、俺とディーナと新たな怪物は、深い森へと消えていった。
次の日、ロアがいないことに気付いた二人は急いで旅支度をし、エルドラドへ、向かった。
その後日、奇妙な場所が見つかった。
そこは、何でもくり貫かれたように何もないのだそうだ。
唯一あるのは、まるで何かに噛み砕かれたような木々があるだけだそうだ。
魔物たちがやらかしたのだと、町人は言うが、真実は今だ謎なのだという。
さあ、今後ロアはどうなっていくのか。
それは、私にも分からない(笑)




