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Prologue 『8』

 黒崎久美は今日も真っ暗な部屋でパソコンとにらめっこをしていた。

 栄養失調でガリガリの体に、病的に白い肌、分厚い度の入った眼鏡。

 ちなみに彼女の机の上にはパソコンの画面が4つ並んでおり、更に机の上の棚にも2つのモニターが設置されている。

 キーボードも3つ程ならんでおり、どこを叩けばどの画面が反応するのか、彼女しか分からなかった。


「おお、なんか新しいスレが乱立してるな」


【月が二つで】chikyuu no owari【朋】 紫色の月 part112スレ


 彼女は注文したピザを箸で器用に食べながら、左手で画面をスクロールしていく。


「『紫色の月』ねぇ……お、そうだ」


 唐突に彼女は3つのキーボードを激しく叩き始めた。

 まるで豪雨が降るような、けたたましいタイプ音。

 6つのパソコン画面が、せわしなく変化する。

 ……いわゆる、クラッキング行為であった。


 しばらくして。


 映ったのは、例の、『紫色の月』の画面である。

 しかも、その画像は宇宙空間からの物であった。


「おお……エンデバーちゃんが動き出してるってことは、マジで『緊急事態』なんだなぁ」



 なんとこのパソコン少女は、この短時間で戦略的軍事衛星・エンデバー8のメインカメラと同調することに成功したのである。

 次の瞬間。


 画面が真っ白になる。


「マジか⁉︎

 エンデバーちゃん、やりおった!」


 戦略的軍事衛星のまさかの先制攻撃。

 光量からはレーザー攻撃を予想した黒崎であったが。


「ええ……無傷……?」


 紫色の月は先ほどと何一つ変わらずそこに存在していた。


「これは、ヤバいなあ。


 ……よし、米利堅と支那と露助の基地に同時クラッキングしておくか。

 紫色の阿呆に、人間様の火力ってものを教えてやろう」


 黒崎は暗い笑みを浮かべるとピザを口にくわえる。

 彼女の語る、まるで妄想の様な台詞は、数分後に達成されることとなる。

 超大国が保有する複数のミサイルの起爆となった自身のパソコンのエンターキーを、大事そうに指でなぞる。

 そして。


「エンデバーちゃんは俺の嫁だからね。

 エンデバーちゃんの敵は俺の敵だ!」


 彼女は大声でそう叫ぶと、まるで儀式でもあるかのように、椅子から飛び上がりながら、ボタンをターンと叩く。


 そして、そのまま華麗に着地するはずが。

 たまたま床に転がっていた黄色透明の液体が入ったペットボトルの1つを。

 間違って、力いっぱい、踏み潰した。

 レモンジュースかな?

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