表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/48

Prologue 『7』

 中国奥地の霧煙る大森林。

 その森の奥には、未だ人類に確認されないエベレスト級の山々が存在するという。


 そして、前人未到であるその山の頂上に、『彼』は住んでいた。


 全身の骨が浮き彫りになるほど痩せこけた裸の老人である『彼』は、それにも関わらず、全身からは揺るぎない生命の息吹が感じられる。


 ……前”人”未到の山に住む、老人。


 ……そう、つまり、『彼』はもはや『人』ではなかった。 


 植物すら生えず、野生動物すら寄り付かないその場所で。


 雪や雲や霞を食べて生きる『彼』のことを。




 ……人は……『仙人』と呼んだ。



 『彼』が人間であった時の名は、(キム) 黄斐(キョウヒ)

 しかし、その名前は歴史の風雨に削られ、本人ですらもはや記憶の彼方である。




 ふと、『彼』が、東の空を見上げる。

 そして。


「……ああ、あ、あ~……」



 何かに気付いたように、ゆっくりと声を上げた。


 数百年ぶりの発声で、カラカラに乾いた『彼』の声帯がピーピーと悲鳴を上げる。


 声を上げるのを止めた『彼』は、山の頂上から大森林を悲しそうな瞳で一望した。


 この森は、『彼』が作ったもの。


 ……3千年をかけ、自身の生命力を与えて育てた『我が子』なのだ。




 そして、その『わが子』から、『彼』は、今。



 全て(・・)返してもらう事にした(・・・・・・・・・・)



***********************************


 山の麓のすっかり枯れた森の中(・・・・・・・・・・)から、筋骨隆々の若々しい(・・・・・・・・・)美丈夫(・・・)が現れた。


 彼は一度、森を振り返り、艶のある声で静かに語りかける。


「すまん、『我が子』よ……『厭月怪(エンゲグイ)』が終われば、私も逝こう……」


 悲しそうに響くその声は。


 全く似ていないはずなのに。


 ……どこか、山の上の、『彼』の声に、似ていた。

中国語についての突っ込みは禁止。

適当です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ