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Prologue 『42』
富士の樹海の奥の奥。
霊堂零士は物言わぬ骸へと声をかけている。
「そうか、会社をクビに……それは辛かったね」
霊堂は骸の無念が聞こえるかのように、相槌を打っている。
わざとらしく何度か頷くと、笑顔でこう言った。
「じゃあ、みんな殺せば良いじゃん!」
次の瞬間、富士の樹海が鳴き声を上げる。
樹海で命を落とした者たちが、鳴き声を上げる。
その中心に立つ樹海の王、霊堂零士が笑い出した。
「そうだ、地獄は亡者で一杯だ。
だから生者から場所を分けてもらおう!
俺達を虐げた奴らの住む世界だ、滅ぼした方がいいに決まっている!」
怨霊達の怒号が、どこまでも木霊する。
……その昔、叶わぬ恋で自ら命を断った霊堂零士は、紫色の瞳を揺らして、怨霊の集団を率いていった。




