Prologue 『36』
「始めに言っておく。
俺についてこれば待っているのは失業……いや、最悪、死だ。
守るものがある者はここから去れ」
TVプロデューサーの山田泰隆は、番組を作る面々を集めて、そう宣言した。
何故か血塗れで泥塗れの山田に、スタッフは息を飲む。
「紫色の月に関してネガティブな放送をしてはならない。
言ってきたのはポンサー社だ。
計画中の番組内容を放送すれば、恐らく誰もこの業界に、帰ってこれない。
それどころか、場合によっては、生きて帰ってこれない」
最上級の脅し文句に、しかし誰もその場を動かなかった。
「……山田プロデューサー、作りましょう!
我々は最後まで正しいマスメディアであったと、胸を張っていきたいんです!!」
「そうです、スポンサーのためじゃない、一般市民のための番組を!
視聴者だって、きっとわかってくれますよ!」
「お前ら……」
山田は周囲から起こる賛同の声に一瞬目を潤ませると、手にした台本を机に叩きつける。
「よおし、一世一代の大作を作るぞ!
視聴率40%越えなかったらお前ら、死刑だからな!」
「「「任せてください!」」」
一致団結したチームは、その場でスクラムを組む。
輪の中心にある血と泥で滲んだ台本の表紙には、こんなタイトルが付けられていた。
『THE・大原修 陰陽師 ~紫色の月編~』……と。




