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Prologue 『35』
それは、日本という国が危機に陥いる度に産まれる、転生体であった。
それは、もはや守り神と化した、日本の意思そのものであった。
それは、ある時はヤマタノオロチを屠り。
ある時は飛騨の猿神を屠り。
ある時は怪物百足を屠り。
ある時は……鬼を屠った。
「今回の転生も、一体何のためなのかと訝しんでいましたが、まさか紫色の月とは」
それは、百地桃房と名を変えて現代日本に転生し、今現在苦々しそうに、空に浮かぶ球体を眺めている。
まるで、3000年前の失態を、思い出しているかのように。
「今回は、思い通りにはさせませんよ」
それはかつて、藤原秀郷と呼ばれていた。
それはかつて、坂上田村麻呂と呼ばれていた。
それはかつて、スサノオノミコトと呼ばれていた。
犬の力に猿の技、雉の速さを持つその少年は。
日本人の誰もが日本一と認める、その少年は。
持っていた吉備団子の一つを一口で飲み込むと、静かに戦場へと足を向けたのであった。
誰なんだー(棒)




