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Prologue 『29』
「世界最強の格闘技って、なんなんですかねえ」
紫月コンツェルンの秘書、ヲーライフの戯れ言を、男は胡座に瞑想の状態で聞き流していた。
「……ボクシングのイースレイが、日本に入ったみたいですよ」
胡座の男、琉球唐手の師範代、邊土名へぬは、無視を決め込んでいる。
「柔道の姿寸四郎も、東京に向かっています」
へぬはまだ、動かない。
「……剣術の船坂も、動き出したみたいですよ」
へぬは、ぴくりと眉を動かすものの。
その後はやはり、瞑想へと移行した。
紫色の月の従者、ヲーライフは、諦めたように、取って置きを呟いた。
「新陰流が、動きますよ」
琉球唐手師範代、邊土名へぬは、おもむろに立ち上がると、黒い瞳で、呟いた。
「何人殺せば、いいのだ?」




