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Prologue 『27』

 G県山中。

 都市部とは隔絶したこの地区に、カルト宗教であるボツリヌス教の啓悟施設があった。


「「「……ボツリヌス様は、6つの御時に、『魔の王』と『鋼の王』と『大地の王』をお産みになり、それぞれに世界を支配させました……」」」


 今日も信者達(メンバー)は教典を音読し、ボツリヌス様のお心に触れられる様に努力を怠らない。

 

 隣では三跪九叩頭の礼を続けているものがいる。


 別の部屋からは「なるほどーッ!なるほどーッ!」という言葉が大声で延々と発せられている。



 各々が研鑽する中。


 一人の中年男性がその様子を見ていた。

 身体は醜く肥え太っているものの、その穏やかな顔や理知的な瞳からは、悟りを啓いたもののみが持つという、全てを見通す独特なオーラが感じられた。


「……はっ!

 最高啓悟師様!」


 誰かの声で、信者達(メンバー)の読経は中断され。


「最高啓悟師様!

 どうか無知な我々に、今日もお情けの光を施し下さいませ!」


 あっという間に中年男性……光在(ひかりあれ)標高(ひょうこう)最高啓悟師の元へと黒山の人だかりが出来上がったのだ。


 最高啓悟師は苦笑しながら彼らの尊敬の眼差しを受け止める。


「最高啓悟師様!

 お勤めにある水浴みには、一体どう言った意味があるのでしょうか?」


「いい質問ですね。

 これはボツリヌス様が水の神様でもあることから由来するのですよ。

 理由は2つ。

 ボツリヌス様は入水後にお生まれになったという説があることと、ボツリヌス様が飢饉に苦しむ村に赤き玉としてお尋ねになり、雨をお降らせになったという叙事詩があることから来ています」


「では、空中浮遊の修行も?」


「ボツリヌス様が空の神、竜の化身と謳われることから由来しています。

 ……流石にこれを成すためには、悟りを啓かなくては、難しいでしょうが」


 標高最高啓悟師の言葉に、信者達(メンバー)は少しだけ安堵の表情を浮かべる。

 胡座の状態からの空中浮遊など、自分には不可能だと考えていたからだ。




「最高啓悟師様は、空を飛ぶことが出来るのですか?」




 周りが一瞬、しんと、静まり返る。



「ば、ばばば馬鹿かお前!

 飛べるに決まってるだろう!」


「だ、だって俺、見たことないぞ?」


「簡単に見せるものではあるまい!」



 信者達(メンバー)の言い争いが始まる。

 そんな様子すら、最高啓悟師はニコニコと眺めていた。


 その時。


「……な……馬鹿な、早すぎる!?」


 突然、最高啓悟師が声をあげた。


 平素には見せない最高啓悟師の厳しい表情に、信者達(メンバー)は言い争いを止める。


「『紫色の月』……いや、まさか、そんな……」


 屋内で、見えるはずもない月の出現を、最高啓悟師は第3の目で理解したのであった。

 最高啓悟師は何度か自身の言葉を繰り返した後。

 元の穏やかな表情へと戻り、人を呼んだ。


「……アバラワナーヤ。

 アバラワナーヤ啓悟師はいますか」


「は、ここに」


「今日から貴方が最高啓悟師を名乗りなさい」


「え、は?

 し、しかし、最高啓悟師様……」


「私は征かねばなりません」


 最高啓悟師……否、元最高啓悟師・光在標高はおもむろに座禅を組むと、その場で何度か跳ねた後。





「……あ……!」





 ……空を(・・)飛んだ(・・・)

どこかで書きたかった、格好良いカルトの偉い人。


炎上するかな?

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