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Prologue 『26』

 青森県下北半島……恐山(・・)


 しとしとと降る夜雨の中。

 老女が独り、石を積み上げては溜め息を吐いていた。

 彼女の名は早坂はつゑ。

 現存するイタコの中でも最高峰である彼女は、最近亡くした同じくイタコの喧嘩仲間を想って、軽く頭を振る。


「……だめじゃの。

 付喪(つくも)の婆がおらんと血圧が上がらんわ」


 ボソボソと彼女がそんなことを呟いていると、ふいに雨が止み、雲の切れ間から明かりが差し込んだ。

 ふと、空を眺めると……其処には、おかしな月があった。


「……なんじゃ?


 この巨大な玉子は(・・・・・・)


 光を映さない盲いた眼を大きく見開き、彼女は呟く。


 その次の瞬間。


 ……老女の瞳が、紫色に染まる(・・・・・・)


 積み上げていた石の塔が崩れ落ち。

 何処かで風車が、からりと回る。


 しばらく辺りを静寂が包んだ後。


 彼女は、嬉しそうに声をあげた(・・・・・・・・・・)


「……『たくさん殺せ』か。

 ふむ、精神汚染の一種かの。


 いやはや、イタコに向かって精神攻撃とは恐れ入る。


 ……生憎じゃが(・・・・・)効かんわ(・・・・)それ(・・)


 精神の鍛練者(イタコ)の頂点に立つ彼女は、ニヤニヤしながら紫色の月と対峙する。


「この儂に喧嘩を売るとは、まるで付喪の婆(はくち)じゃの。


 まぁいいか。

 どうせ暇じゃし貴様を破壊することとしよう。


 ふむ。


 参ったの。

 どうやら(・・・・)血圧が(・・・)上がってきおったわ(・・・・・・・・・)


 早坂は紫色の瞳を歪ませ、まるで付喪の婆(はくち)のように呵呵大笑すると。

 足下の水溜まりに映る紫色の月を。



 思い切り(・・・・)踏んづけた(・・・・・)

 イタコってすごい(小並感)

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