Prologue 『22』
ここはフィンランドのホットスポット……いや、アイススポット。
摂氏マイナス80℃の大地である。
豆腐の角で頭をぶつけて死ねるこの世界に、白い袋を背負いながら、虚空に向かって言葉を発し続ける少年がいた。
彼の名はニコル・ニコラウス、今年で12歳になる“ちび” で“泣き虫”の少年である。
「もちろん、本当はこんなことしちゃいけないんだけど……でも、このまま日本がなくなっちゃったら、オモチャとかゲームとかもたくさんなくなっちゃうし……。
あの紫色の月をどうにかしないと、世界中の子供が悲しむよ?」
少年は、人ではない何かを、一生懸命説得しているようである。
しばらくの間があって。
「……しょうがないな、今回の事件の間だけ、だぞ?」
何処からともなく、そんな答えが聞こえた。
「ありがとう、魔法の袋さん」
“ちび” で“泣き虫”のニコラウスは。
……いや、『聖・ニコラウス』は、背中に担いだ白い袋にお礼を言う。
「……でも、どうやって向かおうかなあ。
トナカイだと時間かかっちゃうし……」
そう言うと、ゴソゴソと魔法の袋に腕を突っ込むニコラウス。
取り出したものは……。
マッハ2で空を飛ぶ超高速旅客機、『コンコルド』、であった。
「おお、成長したな!
“ちび” で“泣き虫”のニコラウスが、こんなに凄い物を俺から出せるようになるとは」
「えへへ……」
“ちび” で“泣き虫”のニコラウスは、しばらくこの銀世界に不釣り合いな金属の鳥を眺めた後、満足そうに呟いた。
「よし、トナカイで行こう。
運転のしかた、わかんないし」
ニコラウス君は別の小説の主人公しておりますのでよろしければ。
>クリスマスはもともとイエス・キリストの誕生日では無くサタンとか異端の神々を祝うお祭りが起源と言う説があるなんてトリビアとは全く関係ない冬童話2016のために書いたチビで泣き虫のサンタさんが頑張る童話




