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Prologue 『20』

 大阪某地区。


 血塗れの男性がヨタヨタと歩いていた。


 向かう先は、ある施設。


「点滴全開で!

 あと、針と糸も準備!!」


「は、はい独島(とくと)先生!」


 まるで病院のようなその建物の中では。

 医者のような男性と看護師のような女性が、忙しなく動き回っている。


「ううう、いてえよお、独島 東海(とくと とんへ)先生、助けてくれよおおお!」


「取り敢えず痛み止めの座薬だ、自分で入れとけ!」


「あわわ、独島(とくと)先生!

 針と糸、もうありません!」


「ち、じゃあホッチキスにアルコールぶっかけろ!」


「ま、マジかよ先生、か、勘弁してくれ……」


 飛び交う言葉は韓国語。


 そう、ここは健康保険料が払えない患者のためのモグリ病院であった。


「なんなんだ今日は……患者が多すぎるぞ。

 しかも、俺じゃなければ助けられないレベルの奴らばっかりだ……」


 悲鳴をあげる患者の傷口に手早くホッチキスをかけながらモグリの医者、独島東海は呟いた。

 恐らく、あの紫色の月が、関係しているのだろう。

 しかし独島東海に出来ることなどない。

 せいぜい、目の前の患者を救うくらいだ。


 その時……。


「た、助けてくれ……!」


 建物の中に、唐突に響き渡る日本語。

 ふと目を向けると、入り口近くでぼろ雑巾の様になった男が辛うじて立っていた。

 彼の頭から流れ出る血は、未だ止まる様子を見せていない。


 治療を終えた患者の一人が、声をあげる。


「……なんだ、日本人野郎(チョッパリ)じゃねえか、なにしに来た!

 此処は俺たちのように、虐げられている人間の、最後の砦なんだよ!」


 周りの患者が同意の声をあげるより先に。


 声をあげた患者の足元に、メスが突き刺さった。


「ひ、ひい!?」


「そういうのは、病院の外で好きなだけやってくれ」


 独島東海はため息をつくと、笑いながら『こっちにこい』と合図した。


「ほら、さっさとそこに横になれ!

 死んでなければ、どんな傷でも治してやるよ」


 モグリ医者の格好いい台詞に。

 モグリ看護師が、ボソリと付け加えた。


「ホッチキスで、ですけどね」

どこかで書きたかった、格好いい韓国人。

炎上するかな?

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