Prologue 『19』
テクネチウムは原子番号43の元素で、元素記号は Tc。
マンガン族元素の1つで、遷移元素である。
モリブデンとルテニウムの間にあるそれは、1936年にサイクロトロンで合成されるまで見つからなかった。
比較的若い番号であるにも関わらず発見がこれほど遅れた理由として、テクネチウムに安定同位体が存在しないことがあげられる。
また、生成されるのもウラン鉱などに含まれるウラン238の自発核分裂くらいであり、地球上には存在しないといっても、過言ではないのだ。
山形県西置賜郡小国町に存在する小国鉱山は、かつてウラン鉱山として名を馳せた名山であった。
現在は閉山しており、訪れる者も少ない。
そして、誰も知ることはない。
その山の5000km地下には。
世界で恐らく唯一の、テクネチウム鉱洞が存在した。
銀白色に輝く金属による、1マイル程度の自然洞窟。
彼らはそれを、テクネチウム・テリトリーと呼んだ。
そこで今夜、奇妙なことが起こる。
……テクネチウムが、一斉に光りだしたのだ。
一体何が、起きたのか。
彼らは訝しむ。
そういえば、以前にも同じようなことがあった。
あれは、確か3000年程前。
……もし、あれが再度起こるというのであれば。
我々も、出ずにはいられないだろう。
誰もいない地下鉱洞で、彼らは考える。
テクネチウムは原子番号43の元素で、元素記号は Tc。
マンガン族元素の1つで、遷移元素である。
テクネチウムの中で、最も半減期の長い物は、テクネチウム98。
……およそ420万年である。




