Prologue 『12』
紫月コンツェルンの総合商社ビル。
その最上階の部屋に、2人の男がいた。
社長室の椅子に座る者。
……即ち紫月コンツェルンの社長である紫月焦夜は、チェスに似たテーブルゲームの駒を弄んでいた。
「相手方の戦力が、大分貧弱だなあ。
数えられるのは、魔女と、仙人と。
後は、鬼と、鬼殺し、位かなあ」
とん、とん、とん、とん。
盤上に、それを模したと思われる白い駒を置いて行く彼。
その声は、想像以上に高い。
それもそのはず。
椅子に座っているのは、声変わり前の子供。
どう年上に見たとしても小学校の低学年が関の山だ。
「下手したら、ウチの『伯爵様』1人で、どうにかなっちゃうよ。
つまらない戦いになるかも、ね」
少年は、蝙蝠の形をした紫色の駒を振るい、先程の4つの駒全てを盤上から弾き飛ばした。
「恐れながら、紫月様」
闇の中で立ち尽くす影が、椅子に座る主人の言葉に釘を刺す。
「今代の新陰流後継者は、化け物だと聞いております。
あれは、対・人外用の気が触れた剣術。
油断なさらぬ事をお勧めいたします」
「ふうん……そか。
ヲーライフが言うなら、そうなんだろうね。
分かったよ、気を付ける。
ところで、ヲーライフ」
少年は、紫色の瞳を歪めると、闇の中の男に向かって笑顔で呟く。
「なんだかお前、頭が、高いなあ」
紫色の月チーム、そのトップは少年でした。




