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日本で一番有名な大学の講堂
その講堂はいつもなら締め切られ決して中に入ることはできない。
しかし今日は出入口全てが開け放たれ講堂の周りにも人で埋め尽くされている。
日本の大学が所有する土地の中でもここは異様に広かった。
全学生の半分の人数を網羅できるくらいの広さなのである。この大学では今日と明日に分かれ説明を受けるがほかの大学では十分な広さがかくほできないため一週間かけて説明をする所もある。
大学生たちは事前に告知されていたゲームの説明が始まるのを今か今かと待っている。
その期待感は開始の時間が近づくにつれ周りの話し声の大きさと共に大きくなっていく。
世界で初めて試験的ににほんで開始されるものだからその期待感は当然ともいえる。
そんな中、講堂の中の丁寧に等間隔に並べられているパイプいすの一番前の席に冷静な、いやっ若干興奮気味だがそれをおくびにも出さず座っている少年がいた。
勿論、泉創一その人である。
創一は講堂に人が集まる大分前からここにおり一番前という席を確保していた。
そして何をするでもなくただ檀上にめを注いでいた。
そして説明開始の時刻まであと四半刻というときにふいに右隣の人物から話しかけられた。
「私、一回生の立花朱里っていいます。」
彼女は、ショートカットでどちらかといえばきれいなタイプの印象を受ける。しかし、その整った顔立ちには、周りの大学生と同様にこれから始まるゲームに対しての期待と不安が伺える表情をしていた。
「私も一回生の、泉創一と言います。とっても緊張しますね」
そう声をかけ、心の中ではこれから始まるゲームにおいてチーム的な要素があった時のために愛想良くしておこう、という打算的なことを考えながら返事をした。
「同回生だったんだぁ。てっきり年上かと思っちゃったぁ。」
「よく言われるんですよ。老け顔だって。ちょっとしたコンプレックスってやつですね」
冗談を交えて返してみたら、立花朱里は慌てた様に
「そういう意味じゃなくって、なんていうか、大人っぽいっていうか、もしきにしてたんならごめんなさい!!」
椅子から立ち上がり頭を下げて謝ってきた。
「あのう、冗談なんで。謝らないでください。なんだか悪い気がしてきました」
そう言い、彼女に頭をあげてもらい座るように手で促した。