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アルテイル、魔獣と相対す


 どうやら家の長男が結婚したらしい。というのを母親伝いに聞いたアルテイルは、そう言えば家に住んでいる人間が減っているという事に今更ながら気付いた。何せ最近のアルテイルは朝早くに従士長宅に行って朝の鍛錬を行い、そのまま昼食を食べてから狩りを行い毛皮を鞣してシュタイマーへ転移しその毛皮を販売する。その得たお金で何かを買ったり、そのまま貯めて今度は海へ行きゴブリン達と魚を獲ったり塩を作ったりして過ごした後、それを従士長宅へ持って行き土産を渡し、家に帰ってきて成果を渡して寝るだけの毎日である。食事は全て外で済ませているし、実は風呂に関しても海で済ませてしまっている。塩を抜いた海水が綺麗な真水である事に気付いたアルテイルが魔法で土を掘り固めて岩を積んで足場を固め、そこに真水を投入して風呂に炎の魔法を何発かぶち込めばそれで露天風呂の完成だ。最近ではゴブリン達も風呂の魅力に嵌まり自分達で試行錯誤してアルテイルが来なくても毎日風呂場を利用してお湯を沸かして入っているらしい。そんな訳で、アルテイルが触れ合う家族と言うのは母親一人になってしまっているのだった。


 父親に対しては過去の所業のいくつかがあるのでアルテイルの方から自発的に接触しないようにしているし、父親の方もそれを理解しているのか接触しようとして来ない。他の兄弟に関しても似たようなものだ。これはアルテイルにとって都合が良かったので放っておいているし、別に仲良くしようとも思っていないという現実がある。その事に密かに母親が心を痛めているかもと思ってはいるが、お互いにとって害にしかならないのであれば接触しないほうが良いのだと、アルテイルはドライに割り切っていた。


「じゃあ、結婚式とかしたんだ」


「まぁそりゃあね。身内だけで集まってだけど。アンタは朝から従士様の所に行っちゃったから分かんないわよね」


「アハハ、ごめんね」


 はぁ、と呆れたようなため息に思わず謝罪してしまう。別に困らせるつもりはアルテイルには無いのだが、結果として困らせているので謝るしかないのだ。


「アンタの事は心配しちゃいないよ。まだ子供だけど、一人で生きていけるアンタはもう大人みたいなもんだから。好きなように生きなさい」


「そう言って貰えると助かるよ」


 アルテイルの言葉に苦笑を一つして、母のカミラは洗い物を全て終えてから居間の机へと腰掛けた。そしてふと、気付いたようにアルテイルへと話しかける。


「そういやアル。あんたに話したっけね」


「ん? 何のこと?」


「あんたの姉ちゃんの事」


 その言葉は、アルテイルの時間を止めるのに十分だった。姉ちゃん、つまり姉。この一家に女性などカミラしか居ないと思っていたアルテイルにその単語は、酷く非現実的な雰囲気を持って伝わってきた。出かけようと準備していたアルテイルがギギギ、とまるで錆びたブリキ人形のように首をカミラへと向け、辿々しく口を回す。


「ね、ねねね、姉ちゃんって。俺に姉ちゃんって、い、居たの?」


「ありゃ、やっぱ話してなかったっけ。いるんだよ、今も偶に手紙が来るから元気なんだろうけど、12になってすぐ冒険者学校に飛び出して行った子がね。今年で24ぐらいになるね」


 衝撃の事実にどうして良いか分からず、結局アルテイルは姉の事にはこれ以上触れずに家を飛び出した。向かうのは当然従士長宅であり、毎日の朝鍛錬の開始である。だが今日はアルテイルが浮ついた雰囲気になっており、余り鍛錬に集中出来ていない。とうとうアルテイルは我慢出来す、カルアスに姉について聞いてみることにした。


「カルアス様。あの、僕に姉が居るらしいんですけど……」


「ん? あぁアイツか。なんだお前、知らなかったのか?」


「えぇ、今朝母から聞くまで知りませんでした」


「まぁお前が生まれる前に家を出ちまったからなぁアイツ。俺は年も近いんで良く遊んでたけどな、昔は。剣の腕も俺より凄かったぞ」


「あの、名前はなんて言うんですか?」


「ん? そこは聞いてないのか。ミューラだよ、ミューラ」


 ミューラ、それが自分の姉の名前らしい。そう言えば自宅には使われていない女の子のような部屋があったのだが、そこがもしかして姉の部屋だったのかもしれない。母はいつも掃除しているようなので、何処かで姉が帰って来るのを期待しているのかも。そう思うと、姉同様家を飛び出していく事に少し罪悪感が出てくるが、それでも家を、この領地を出る事を辞めようとは思わなかった。ここで今後の一生を過ごす選択肢は、アルテイルの中には存在しないのだ。


「それじゃ、今日はこの辺で終わりにするか。アルテイル、昼飯を狩りに行くぞ」


「わかりました」


 そこからはいつも通り、カルアスと二人で従士長宅の近くにある森の中へと狩りに赴く。アルテイルの魔法はこうして毎日狩りを行ったり海へ趣き塩を作ったり魚を獲ったり、細かい作業を繰り返している事で少しずつ成長しているのだった。この日も森に入ってすぐに、気配察知の魔法を駆使し獲物を探した所で、アルテイルは違和感を覚えた。


「あれ、なんだこれ」


「ん、どうしたアルテイル」


「いえ、特にどうという事じゃないんですが。普段よりも、獲物の気配が多くて」


 魔法を展開してすぐ、程近くに兎が二羽引っかかるのは別に良い。その奥にも恐らく猪と思われる気配が存在する。だがその他にも鹿等の普段こちらの森では見かけない動物の気配が多数検知されており、普段の森とは違う事を明確に表していた。通常、森の生物はある程度自己の縄張りが存在しており、その外から出る場合、外敵に襲われるか、縄張り内で食べ物が無かった時ぐらいなものである。だが現在の森は木の実やキノコなど自然に生えているものが多く、鹿や猪などの草食動物の食べるものが不足するような時期ではないはずだ。それなのに現在アルテイルの気配察知魔法には、その鹿や猪が捕捉されている。


「なんでしょう。普段ここらへんでは見ない奴までいますが」


「群れで移動、という訳でも無いよな……」


「えぇ。それにしてはバラつきがありますし」


「とりあえず何匹か狩って帰ろう。いけるか、アルテイル」


「はい、大丈夫です」


 考えるのは一旦辞めて、アルテイル達は狩りを再開する。すぐに兎二羽と猪一匹、鹿を二頭狩り終えたアルテイル達はその成果を持ち帰り食事を摂った後で、再び考える事にした。何故普段居ない動物がこちらの森に居るのか。明らかに普段の森よりも多く存在していた野生動物の気配は一体何なのか。カルアスとアルテイルは二人で考えたが、結局答えは出なかった。


「あー! こういう時ハイネルがいりゃあな」


「ハイネル様はこういう事詳しそうですものね」


「しゃあねぇ。アルテイル、他の森も見て回るぞ」


「そうですね、それが一番早いかも」


 カルアスはアルテイルの他に、手隙の従士数名を連れて、他の森へと散策に入る事にした。念の為狩り用の弓矢を持ち隊列を組んで行く訳だが、先頭は勿論カルアスとアルテイルだ。村の農村地帯を抜けた一番近くの森へと入り、アルテイルが気配察知の魔法を展開する。するとここでも、普段見ない動物の気配が多く検知された。


「一体どうなってるんでしょう……」


「分からん。が、何か嫌な予感がするな。もう少し調べるぞ」


 森の中の動物は入ってきた人間の集団を避けるように移動している。アルテイル達も動物達との接触をなるべく回避しながら移動し、森の奥、村の出口付近の森へと差し掛かった所で、アルテイルの気配察知の範囲に急に多数の反応を察知した。


「何だこれ、4……8匹。大きさからすると恐らく、狼ですね。それと一匹大きいのが、これは熊かな」


「おいおい、まさか。狼が熊を襲ってるって訳じゃねぇだろうな」


 だとしたら、明らかな異常事態である。通常狼はその縄張り意識から自分達の縄張りに入った兎等の獣を狩る事はあるが、熊のような大型の獣に対しては基本的に手を出さない。明らかに犠牲を覚悟でやり合うには無理のある体格差であるし、獰猛さも熊のほうが圧倒的だ。そういう場合、群れは熊が巣穴にした所から離れた場所へ移動する。それが自然の掟であると、認識していた。だがアルテイルの指示に従い進行した先には、熊一頭を狼の群れが囲み、喉笛を噛み千切っている光景があった。


「マジかよ……」


 余りの光景にカルアスも他の従士達も絶句する他ない。見れば狼達はどいつも傷だらけであり、本当の意味で犠牲を覚悟でこの熊一匹を倒したのだと分かる。だが何故、この狼達はそこまでして熊を狩ったのかが理解できなかった。そしてその熊に対し、狼達はその場で食べる訳でも無く、数匹でどこかへと引きずっていく。


「追いますか?」


「……いや、辞めておこう。それより帰って親父に報告する。森の異常事態だ、村に何かが起こるかもしれん」


 下手に藪を突く必要も無い。カルアスの言葉に頷くと従士を含め森の様子を確認しに来た全員で森を抜け、一旦従士長宅へ集まる事にした。カルアスは当然、領主宅へ赴き状況の説明だ。野生動物の大移動に、熊を集団で狩る狼の群れ。しかもその場で食べずに何処かへ持っていくという不可解な状況に、アルテイルは嫌な予感が止まらないのだった。


 従士長宅へ戻ってきたカルアスは従士達へ今夜から森の入り口近辺への監視を入念に行う事を指示した。村の内部へ入るには森との境目にある柵を超えなければならないのだが、もし万が一、狼が徒党を組み襲ってくる事があったら、村は大惨事だ。なので昼夜問わず、今日から従士達は森の監視を行う事になる。事態が収まるまでの間、アルテイルの鍛錬はお休みである。いつ何時事態が動くかは分からないのだから。思わぬ休みを貰ったアルテイルは、それでも不安を打ち消すかのように魔法の鍛錬を行い、昼間は海へ行き魚を釣ったり塩を作ったりと、精力的に訓練を行っていた。


 そして休みから三日目の深夜に、事態は動いたのだった。


 村中へ響き渡る半鐘の音にアルテイルは飛び起きた。木のベッドから転がるように降りてすぐに着替え、いつもの魔法の鞄を下げて居間へと急ぐ。居間では同じように起きたのだろう父と母、そして未だ一緒に住んでいる二人の兄が集まっていた。


「この鐘の音は?」


「さぁ。多分何かあったんじゃ――」


『狼だ! 狼の大群が現れたぞ! 住民はすぐに従士長家か領主家に避難しろ!!』


 どうやらアルテイルの嫌な予感が当たったようである。狼の群れが大群をもってこの村へと襲い掛かってきたのだ。


「早く逃げたほうがいい! いくぞ!」


 父の声に母達がとりあえず手荷物を持って家を出た所で、アルテイルは一人家族達とは逆方向、村の出口へと向かって走った。


「アル!」


「すぐに俺も行くから! 先に避難してて!」


 背後からの母の声に返事を返し、人波を逆に走って行くと、脇の道から勢い良く剣を下げたカルアスが飛び出してきた。


「ったく。お前の事だから来ると思ってたよ!」


「すいません! でも僕の魔法なら何とかなるでしょう!?」


「そりゃぁな! だが親父に禁止されている事を忘れるなよ?」


「それも覚悟の上です!」


「そうか! それじゃあ頼りにさせて貰うぞ!」


 恐らくここで魔法を使えば、アルテイルはこの村に居られなくなるだろう。領主の命に従わない住人など、この領地には必要無いのだ。だが自身の魔法で被害を抑える事が出来るのであれば、アルテイルは魔法を使う事を厭わない。二人で最前線となる村の柵に到着すると、そこでは既に従士達と狼との激戦が始まっていた。


「アルテイル!」


「みなさん、どいて下さい!!」


 カルアスの指示で目の前の狼目掛け、風の刃を放つ。従士達に当たらないよう調整しながらの作業で少し加減が難しかったが、従士に被害は無く、アルテイルはホッとした。走ったまま従士達の前に踊り出ると、右足をダンッと地面に叩きつける。途端、前に居た狼の群れを地面から生えた無数の土の槍が狼の群れを一掃した。


「すげぇ……」


「ボサッとしてんな! 被害はどれぐらい出た!?」


「は、はい! 軽傷者二名、損害は軽微です!」


「良し! アルテイル、群れの第二弾だ、いけるな」


「魔力は全然余裕ですよ」


 従士の報告を聞いている間にも森からは続々と狼が溢れ出る。それを再び風の刃で切り刻み、取り逃したものを土の槍で串刺しにする。悲鳴すらあげずに血を流し倒れる狼の軍勢だが、アルテイルは先程から沸き上がる嫌な感覚を捉えることに必死だった。森の奥、恐らく狼の群れの最奥に、禍々しい魔力を持つ何かが素早く動いているのを確認する。そしてそいつは、急にスピードをあげて森の出口へと向かってきたのだった。


「カルアス様! ヤバイのが来ます!」


「分かってる! こんなヤベェ感じがビンビンする奴ぁ野生動物なんかじゃねぇ!」


 ガサッと木々を揺らして飛び出した黒い巨体が勢いをそのままに、アルテイルへと襲いかかる。それを魔力障壁で防いでから、もう一つ巨大な影が飛び出してきたのを確認し、アルテイルは土の槍を生やした。だが巨体は土の槍を器用に避け、背後へと飛び退る。動きが停止した事で、その巨体の正体がアルテイルとカルアス、従士達の前に姿を表した。


 その姿は漆黒を湛えた怪しい艶のある毛を蓄えた、高さ三メートル程の巨大な狼だった。そして身体中から沸き上がる禍々しい魔力が、その狼達をただの獣であるとは示していない。


「狼の、魔獣か。通りで」


 通常の狼は、熊を狩るような危険な橋は渡らない。その他にも兎や鹿など、狩り易い獲物は森に多く住んでいるのだから。だがその狼達に魔獣が混ざっているとなれば話は別だ。魔獣は大きく分けて二つに分類される。元々獣だったものが年を経たり何らかの作用により魔獣と化すか、元々魔獣として生まれるかのどちらかだ。目の前の魔獣は恐らく前者であり、元々狼の群れを統率していた力のある群れの主が魔獣と化したものだと推測される。この巨体だ、食う量も相当なものだろう。熊ぐらい食べなければ身体が持ちそうもない。


 そして魔獣と化す事で力を増し知恵をつけたこの狼の指示により熊を含めた森の獣達は狼の群れに狩られ、運良く逃げ延びた獣達が別の森へ避難したのだろう。今更ながら、多くの野生動物が他の獣の縄張りに入る事に躊躇いなく森に潜んでいた理由が分かった。そうしなければ、狼共の餌食になるからだ。そして獲物を取り逃がした狼達が今度は、手近な獲物として人里を襲いに来たのである。


「二体ですけど、どうしますか……」


 唸り声を上げてこちらを威嚇する二体の魔獣に、アルテイルは冷や汗を背中に流す。初めて相対する魔獣が、これ程禍々しく凶悪であるとは想定していなかった。先程の体当たり気味の噛み付きも、普通の人であったら防げなかったかもしれない。しかもそれが二体も居るという脅威が、目の前に存在している。


「カルアス様……」


「一体は、俺達で引き受ける。悪いがもう一体、アルテイルで何とかできるか?」


「やってみます」


「よし! じゃあ行くぞ!!」


 カルアスの掛け声と共に二体の間に土の槍を無数に生やし、二体を分断する。一体にはカルアスを含めた従士全員で。もう一体は、アルテイルが先手必勝とばかりに風の刃を仕掛けた。だが敵は土の槍と共に風の刃を避け、その高い身体能力で一気にアルテイルへと前足を叩きつける。


「ちっ! この!!」


 前足での攻撃を魔力障壁で防いでから返す刀で炎の矢を生成、二十本を狼目掛けて放つが、その全てを巨狼は回避した。巨狼の武器はその圧倒的な体格差による前足での攻撃と体当たり、噛み付き。そしてその俊敏さにある。人間の足では決して逃げ切れないその足の速さと、そのスピードが盛大に乗った巨体からの体当たりでほとんどの人間が致命傷を負う事になるだろう。また大きな顎に噛み付かれれば、力では引き剥がせず、骨まで噛み砕かれ一瞬で絶命する。この圧倒的なまでの基礎能力を持つ魔獣を打倒するには、アルテイルのように魔法のような特異な力を振るうか、カルアス達従士のように数で攻めるしか無いのである。基礎能力で劣るアルテイルは当然、魔法の力を駆使して巨狼を打倒する事を選択する。


「くそっ、速すぎて当たらないか。ならっ!」


 遠距離からの攻撃では当たらないと悟ったアルテイルは、身体強化の魔法を最大限に発揮し、一気に狼の懐へと飛び込む。懐から一気に飛び上がり拳をぶち当て身体を浮かすと同時に、無数の風の刃をお見舞いした。


「ギャゥウッ!!」


 悲鳴をあげる狼だが敵もさるもの、すぐに前足でアルテイルの身体を吹き飛ばし体勢を整える。そして、一気に終わらせようと飛びかかってきた所で、アルテイルが緊急避難的に飛翔の魔法で空中へと飛び上がった。


「いい気になるなよこの獣がぁあっ!!」


 そのまま飛翔の魔法で体当たりをぶちかまし、横に倒れた所に土の槍を生成し、身体中に突き刺す。アルテイルは先程吹き飛ばされた事で相当なダメージを負う事になり、額から流れる血を止める為、とりあえずの癒やしの魔法で応急処理を行った。その間に狼が土の槍という枷から自身を解き放ち、アルテイルへと血走った目を向け威嚇する。この短い間にどちらも身体から血を流し壮絶な様相をしているが、まだ戦いは終わらないのであった。再び身体強化の魔法でアルテイルが飛び込むと狼は右前足で迎撃し、それを魔力障壁で防いだ所で左前足からの挟撃が来る。それを頭を屈めて回避して、アルテイルは一気に飛び上がり狼の顎を撃ちぬいた。


「ガフッ!!」


 もんどり打って転がる狼に向かって、アルテイルは身体強化を最大に、拳に魔力を込めて顎へ突き刺す。ズボッと生々しい感触を受けながらアルテイルは突き刺さった腕に魔力を集中し、一気に炎の魔法へ変換、爆発へと昇華させた。


「吹き、飛べぇぇええっ!!」


 顎の下から急激に発生した炎の魔法が爆発へと昇華し、巨狼の頭を勢い良く吹き飛ばした。ドゴォンと地響きを鳴らして吹き飛ぶ頭と、そこから出る体液やら何やらを被りながら、アルテイルは自身の仕事が終わった事を確信した。無理な身体強化と巨狼からの攻撃で身体の節々が痛いがもう一体残っている事を思い出しそちらの方を見ると、丁度他の従士が巨狼の前足を槍や剣で串刺しにした所をカルアスが首を一刀両断している姿があった。


「あぁ、終わった……」


 遠目にこちらを見つめていた野生の狼達が散り散りに森の奥へ逃げて行くのを眺めながら、アルテイルはその場に大の字に寝転がった。今夜はとても綺麗な満月が、空に輝いていた。


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