何故異世界チートハーレムものは主人公がモテなかった奴ばかりなのか
異世界に転生してチートの能力を持って大活躍!
可愛い女の子といっぱい仲良くなってイチャイチャラブラブ!
目指せ一大ハーレム!
よく見るこのような物語。これには一つ共通点が存在する。
モテない男が選ばれるのだ。それも童貞で大体の場合がロリコンだったりオタクだったり。
これは決して偶然などではない。偶然であってなるものか。
「あー、こいつは凌辱ゲーばっかり持ってるのか。流石にナシだな。」
俺は地上のカップラーメンを啜りながら一人の男がパソコンに向かって励んでいるのを眺める。
もちろん俺はそっちの趣味じゃない。妻もいるし二歳になる娘もいる。
そしてこれは覗きではない、立派な仕事なのだ。
何故異世界でチートだのハーレムだのするやつがモテないのか。
それは天界のイメージ戦略でしかない。
化粧品だの整形手術だのの広告で、こんなに酷いものがこんなに綺麗になりました!
といった具合に二枚の写真を比較するアレと一緒なのである。
天界へ行けばこんな素晴らしいことがある!モテない男もハーレムが作れる!
だから天界に行きたいでしょ?という事なのだ。
モテてる男が転生してハーレム作っても、あまり歓迎される事ではない。
しかしこのモテない男。自動で神や天使が判別しているかというと別にそんなことはない。
彼らも忙しいのである。そこで、俺の務める会社は代理で探しているという訳だ。
しかしこの仕事、そう楽なものでもない。ただモテなければ良いという訳ではないのだ。
いくつもの審査基準を満たした男でなければならない。
「あっ!あんの馬鹿、風俗で童貞捨てやがったな。こいつもダメか。」
まず、童貞でなければならない。
いわば女性への幻想というものが必要になってくるからだ。
現実世界の女性をなまじ知ってしまっている男性は天界が快く思わない。
出来ればファーストキスもしていない方がいい。
次に優柔不断であること。
パパッとハーレムを作り平和にされては元も子もない。
多少の紆余曲折がないとイメージ戦略として微妙なのだそうだ。
そこらへんは天界側で調整しろやと言いたいところだが、文句が言えないのが下請けのつらいところだ。
プルルル...プルルル...
電話がかかってきた。これは…親会社のクレーム課か。
何かクレームが入ったのだろう。気が重いが電話に出るしかない。
「はいもしもし。ご無沙汰しております。」
「お前さーまたクレーム入ったよ。」
「あっ、申し訳ございません。」
かなり上から口調だ。しかし我慢するしかない。
曰く俺が推薦した男が熟女好きだったらしい。
この前まで普通に学園もののAV見てただろ!なんで趣味変わったんだよアイツ。
内心電話を叩き付けたいところだが、家族の為に我慢する。
「ということで、今回の報酬は減額な。上に伝えといて。」
「あっ……それは……。」
「何か文句あるのか?」
「……いえ……。」
この仕事は歩合制だ。恐らくあの件の報酬はほぼゼロだろう。
六日も家族を放って調査をし続けてこれだ。思わず電柱を蹴るが足が痛むだけだった。
天界が出す条件の一番難しいのがこれだ。
性癖、趣味。ちょっと変態ぐらいならむしろ大歓迎であり、異世界に適合しやすいオタクも良い。
だから日本で調査をしているわけだ。
だが極端に凌辱、リョナ好きだったりすると宣伝どころか閲覧禁止ものである。
また美少女好きというのも欠かせないらしい。熟女好き、極度のケモナー、極端すぎるロりペドは無理だ。
外部から見たときにいかに羨ましいかが大事なのだ。
いくら本人がよくても、野生動物を犯し始めるのでは問題外である。
ちなみに以前こんな例外があった。
触手プレイ好き、スライムプレイ好き、機械好きだ。
前者二人はそれぞれ触手、スライムに転生させたら需要があった。
機械好きもロボット娘ばかりの世界への転生でそれはそれで需要があったらしい。
かつて異様に『へきへき』に執着した奴がいたが、アレは何だったのだろう。
マイナーすぎるジャンルはもちろんNGだ。
しかし性癖や趣味を判別するのが地獄なのだ。
一人で励んでいるのをただ眺めなければならないのだから。
淫魔の類にやらせろよとか思ったが、つまみ食いされて以来却下らしい。
所持しているAVやエロゲで判断するのもダメだ。
お試しで買ったのか、本命なのかが判断できない。
「あー……とっとと仕事終わんねーかなー……。」
俺は今日五件目の慰め行為を観察している。
今日の仕事を終わらせるには、後十件は観察しないといけない。
慌ててティッシュを探す青年を眺めながら、俺はタバコに火をつけた。
読んでいただきありがとうございました。
宜しければ連載作品の方もよろしくお願いします。