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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

血塗れのヘンゼルはお家に帰りたいグレーテルのキスに酔う

作者: 苺いもむし

グロちょいエロ注意

世界は何時だって私のことが大嫌いだ。

でなければ普通に慎ましやかなOLとして働いていた女の幸せも知らない私を事故なんかで殺しやしないでしょ?でなければそんな私を犯罪と麻薬が横行するこんな無秩序な世界に転生させないでしょう?


まあでも、そんな世界の中でもそこそこ力のある家に転生させてくれたことは感謝するわ。だけどそんな家ももう終わり、先日父親の上司という男に会って私はそう確信した。あの男、黒い髪に真っ赤な血色の瞳を持った男、あの男は駄目だ。あの男は私たちとは違う別の世界で生きている、他人を顧みる事なんてしない無情の生き物。きっと父は程なくあの男に捨てられるに違いない、だから私はその前に“何をしてでも”生き延びる手段を講じなくてはならないのだ。


(その為に、なにができる)


残念なことに、生前22年を生きぬいた私の体は今や10に成ったばかりの小娘だ。力も権力も無い、無力な少女。……そして、あまり頭も良くない。だとすれば必要なのは“力”と“頭”だ、


非力な私を全力で守ってくれる「盾」と、

無知な私の代わりに思考する「矛」、


「リリア、誕生日おめでとう。何か欲しいものはあるかい?」


私の欲しいものは、すでに決まっている。




×××




「奴隷売場って、初めて来たわ…」


蝋燭の僅かな明かりしかない石廊は酷く寒い。父が付けてくれたボディーガードから受け取ったカーデを羽織り腕を摩ると、遠くから悲鳴の木霊が聞こえて来た。小さな子どもが喉を引き攣らせたような悲鳴に、ボディーガードが驚き小さく悲鳴を上げた。…まったく情けない、まあうちの組織レベルを考えれば娘に5人付いているだけでも良い方か。


「ヒヒ、すいませんね。昨日入ったばかりのブツはどうにも粋が良くて躾けるのに苦労しておる」

「…苦労はお察しするわ、売買人(バイヤー)さん」


ふとすれば石廊の影に溶けてしまいそうな程真っ黒な外套を纏った老人は、私のあっさりとした答えにしゃくれた瞳を見開いた。そうすると、まるで中国の妖怪大全に書かれた妖魔のようで少し恐ろしい。なので私はそうそうに視線を外し、老人の後に遅れないように続きながら話題を振る。


「躾けるって…具体的には何を躾けるの?一般常識?言語?」

「……ヒヒ、それは私の管轄じゃありませんよ。もっと上が決めることだ、ブツの状態に応じてプログラムを組むんじゃよ。ワシらはそれに応じて躾けるだけ、」

「そう…思っていたよりも難しい仕事なのね」


「ヒヒ!面白い子よ!」


そう言って、引き攣ったような嗤う老人に後ろのボディーガードが苦言を漏らす。まあ気持ちはわからないでもない、まるで気狂いのような嗤い声だもの。正直、私も聞くに堪えないわ。


「サービスじゃ“お嬢ちゃん”」

「…その呼び方、好きじゃないわ」


ムッと返したのに、何故か老人は嬉しそうに笑って続けた。


「どんな奴隷が欲しい。お嬢ちゃん程の歳の子が玩具代わりに奴隷を欲しがるなんて中々どうして良い趣味だ」

「私以外にも、ここに子どもが来たことがあるの?」

「さあどうだったかな…“お客”として来るのは珍しいな…」


にたりと老人が笑って言うと、通り過ぎた鉄扉から大きな衝撃音が響いた。吃驚して思わず一歩下がってしまった私を見て老人が楽しそうに笑みを深める。こんにゃろう業とだな、ここはホラーハウスか!


「お、お嬢…」

「大丈夫、歩けるわ」


庇うように抱き上げようとしたボディーガードを引かせて、私は再び老人に並んで歩く。そんな私を見て老人はにやにやしていたけど無視だ、無視。お前なんて知るか!


「奴隷にも色々おるのよ、見目の良いの悪いの、賢いのそうでないの…決めるには用途が大切よ、」

「…」

「観賞用、労働用、肉壁用、…ああそれに性処理用」

「下劣だわ」

「だがそれを求める客が一番多い」


ちらりと視線を送った先で、老人がしたり顔で笑った。


「世界は広いのよ、お嬢ちゃん。俗物を好む金持ちは五万といる」

「あらそう、でも私はその五万ではないわ。蜜で肥え太った醜い豚と一緒にしないで」


ギっと睨んだ先で短い沈黙が落ちる。足音と、僅かな吐息、それに手燭が揺れる音しかない静寂の中でボディーガードがごくりと息を呑む音がやけに大きく響いた。


「では、…何が欲しい。何を求めてここに来た、醜く下劣な豚の子よ」

「その豚に頼らず生きていけるだけの力と頭を買いに来たのよ、」


皮肉にムカッとして返せば、ボディーガードが息を呑む。そりゃそうだ、自分の仕える主の子が今まさに、自分の父親の反抗とも取れる言葉を口にしたのだ。普段なら反抗期で済ませられるものもそうならなかったのは、この奴隷売場にながれる殺伐とした雰囲気と私の家とは180度違う立ち振る舞いの所為だろう。だけど転がりはじめた岩は止まらない、私がこんなものを要求した時点で父はその事位は懸念している筈だ。だから尚更、私はここで確実に求めるものを手に入れなければならない。


「直ぐに必要なの。だからつべこべ言わず私をブツの元に案内しなさい、この老害」

「…口の聞き方をしらないお嬢ちゃんが来たもんだ」


だが嫌いじゃあない、そう言って老人は再び歩き出した。

漸く案内する気になった老人に私は嘆息して続く。…どうやら漸く、この終わりのない石廊のループから抜け出せる。ちらりと、私が岩に刻んだ正の字の“パンくず”を見た。ここがパンくずを食い散らかす鳥がいない地下で良かった。





「…これは!」

「…」


そこは偽りなく血の海だった。

父親が非人道的な仕事をしているとはいえ、私はそれほど血…それに人の死体を見慣れている訳ではない。でもその時、真っ赤に染まった部屋と言う名の牢獄を見ても何故か恐ろしいと思わなかった。それ以上に、その中央に立つ存在に心を奪われていたから。


魅了された所為で呆然と立ち尽くしている私を、勘違いしたボディーガードが守る様に前に出た。その隣で千鳥足で部屋を見渡していた老人がナニかを見つけて呆然と呟く。


「バロン…教育係を殺したのか、」


バロン、と呼ばれた死体は無残だった。まず手首を切られ、そして舌を切られている。きっと悲鳴を漏らされないように彼がやったのだろう。その後どんな拷問をしたのか皆目見当がつかない程、彼の下半身はぐちゃぐちゃの肉塊に変えられていた。


「そして奴隷も殺したのか…!」


茫然と叫ぶ老人のしゃくれた瞳の向う側。

そこで、部屋の中央に佇む少年が訳が解らないと言う様に小首を傾げた。


そう少年だった。この部屋で唯一生き残っている生物、それは驚くことに彼だけだった。

全身を血塗れにして、首に鉄の首輪と鎖を下げた少年。その手には細い指に似つかない大振りの鉈が握られていた。きっと奴隷を躾けるために常習的に使われていたものだろう、その柄は寂れ今にも壊れそうだ。そんなボロボロの得物で、少年はここにいた全ての人間を殺したのだ。殺しつくしてまだ殺そうとしているのだ、それはなんて、


(凄い…ちから、)


私が求めていた、唯一無二のもの。

無意識に、ごくりと息を呑んだ。ああ、魅了されてしまった。私はアレが、アレがなんとしても____欲しい。


「お嬢さまをお守りしろ!!」

「下がって下さいお嬢さま!」


ふらりと動いた体は野暮なボディーガードに邪魔されて動かない。ボディーガードの中でも腕利きのリーダーが懐から銃を取り出した、いやだ止めて。それで何をする気。

咄嗟に止めようと声上げるも、先にボディーガードがトリガーを引いてしまった。その瞬間、私はまるで世界が終ってしまう様に感じた。それは死ぬ時に感じて、生まれた時に思い出した絶望に似ていた。世界が、終わってしまう。


そう思ったが、その感覚は次の瞬間に轟いた悲鳴に打ち消された。

ビリリと鼓膜を揺らすそれは少年の声とは似ても似つかない大人の叫び声。私はそれを知っている、あのボディーガードの声だ。


「ぐぽっ」


血の泡を吹き出して、見知ったボディーガードが倒れた。

彼の黒いスーツの向うから現れたのは、…あの少年だった。大振りの鉈に、新たに私のボディーガードの血を滴らせてそこに立っている。その顔は何処までも無表情で、無感動だ。まるでゴミでも扱う様に、ボディーガードの遺体を踏みつけてふらりとこちらに歩み寄ってくる姿に私は全身が震えあがるのを感じだ。


「止まッ____!」

「ヒィイ…!」


静止を叫んだボディーガードが拳銃を取り出そうとしたがそれは叶わない。なぜならその腕は取り出すより先に、少年の鉈で切断されてしまったから。まるで魚のように、血まみれの石畳の上を跳ねた腕を見て、私は思わず(鉈ってこんなに綺麗に人体を切断できるんだ)なんて思ってしまった。いや、違うだろ自分。

そう思う中でも、事態は進む。一人、また一人と私のボディーガードが死んでいく。そして私を庇っていたボディーガードもあっさりと死んだ。…最後の最後で、私を置き去りにして逃げようとした背を、少年の鉈に袈裟切りに切られたのだ。


「…」

「ぐはっぐほ、た、たすけ___ァ、」


ぐちゃ、ぐちゃ。

そうやって動けない男の足を引き裂き、肉を削ぎ、命を奪う少年。漸く満足したように重い鉈を人体から引き抜き、ゆらりとその目で私を見る。その顔はやはり無表情で無感動だった。


まるで、ガラス玉みたいな赤い瞳。

狂いに狂って、逆に澄んでしまった無垢の死の色。


ずるりと、鉈を引きずりながら少年が私の元に来る。

一歩二歩、歩いて、その足で歩いて私の所に来てくれる。


「…」


そうやって、私の前で止まる。ああ、なんてきれいなんだろう。なんてきれいな、せいのいろ。


少年の柔腕に持ち上げられた鉈から落ちた赤い雫が、私の頬を汚した。


死ぬ、


2人の間に、言葉じゃないが共通の感覚が走る。少年は私を殺す、私は少年に殺される。

でもごめんね、それはもう少し先にして。


ふわりと、笑った私を見て漸く少年が反応を示した。

ぴたりと一瞬だけ止まった鉈を見て、私は確信する。やっぱり私と君は、運命なのだと。ならば私は逆らわない、この込上げる衝動のまま君を求めよう、


「____!!!!」

「ん」


がばりと自分とは思えない反射神経で立ち上がり、私は逃げるのではなく少年へと向かい、その、無垢な唇を私のそれで塞いだ。初めてのキスだった。前世で男っ気が悲しい程無かった私はもちろん全てが未経験、そんな私からのキスはどんな味がするのかな。まあ取り敢えず、レモンじゃないよね。


「っ、__ん」

「はっ」


逃げる様に顔を放した少年を追って、私はもっと深く口付けた。

僅かな開いた口内に今度は惜しみなく舌を入れた。マンガで知ってはいたけど、思っていたよりもずっと舌を絡めるのって大変だ。しかも私の舌は小さいから上手く少年の逃げる舌を絡められない。それでも必死に、貪るように唇を重ねる。溢れる唾液も、不思議と心地悪いとは思わなかった。少年の息吹を、命を、全てが欲しい、全てを奪う様にして、私は少年のキスを奪った。


「はっ…!」


名残惜しくも唇を放すと銀色の糸が繋がる。

はあはあと荒い息を繰り返す少年の頬は僅かに高揚していて、私なんかのキスでも感じてくれたんだなあって思ったらとても嬉しくなった。もっともっとキスしてあげたい欲求にかられるもそれをぐっと堪え、私は濡れた唇を舐めて少年に微笑みかける。


唇に僅かに残る少年の温かみに子宮が鳴いた。



「わたしのものになりなさい」



奮える喉で必死に紡いだチープな言葉。

だけどもちろん、返事はYESしか許さない。


少年の首に下がる鎖を手に絡めて、私は困惑している少年もう一度、今度は触れるだけのキスを送る。


「代わりにわたしの命をあげるわ」


その時の私は、きっとこの人生で初めて本当に綺麗に笑えていたと思う。


世界……

 地球をベースにした異世界。犯罪とか日常茶飯事、イメージ的にはバッ●マンのあのシティ。あるいはブ×ラグのあれとか。ちょっとロココチックはいってます。


リリス………

 とある大きな組織に仕えている父の娘。冷静沈着、だって中身は22歳+α。でも親の前では猫かぶり気味。母親は既に死去している。生きる為なら汚いことでもしますよ?だって死にたくないもん。

 この後、組織を乗っ取ったり乗っ取らなかったり。無事に”矛”も手に入れて二匹の狂犬に愛されヤンデレされながら真綿に包まれて生活したりする。頭も悪くて運動神経もわるいが、かわいいので許される。特権です!銀髪青目でも良いけど…ビジュアルは結構決めてない。


ヘンゼル(仮)………

 少年奴隷。リリスに飼われる狂犬①。殺人というカテゴリーにたいして凄まじい才能を持つ。ちなみに日本人。茶髪に赤目の線は細めのイメージ。リリスにファーストキスを奪われる。

 その後、忠実なリリスの犬になる。リリス大好き。リリスのメーレイに答えると貰えるゴホービのキスが最高に好き。その為ならなんでもしちゃう。ドSに見せかけたドM。リリスになら本気で踏まれたいリリスの”盾”。


????………

 後にリリスの”矛”になる。インテリ。リリスより年上で、実はある組織に仕えていたがリリスにチェンジで。あまりイメージが固まってないけど、多分敬語+粘着腹黒+変態+眼鏡あたりになる。あれ?これってムーンじゃなくて大丈夫か?


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― 新着の感想 ―
[一言] こういう設定すごく好きです 悪い少女萌え!!
[一言] この作品、好きです! 書けたらで良いんですけど、続き読みたいです!!
[良い点] 病んでる感じがたまらない← [一言] 面白いです ヤンデレ大好き 続編読みたいです!←
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