生きる目的
暗い部屋の中、真っ暗なテレビの前で1人座っている美紀子。
美紀子の背面にある大きなテーブルの上に遺書と書かれる封筒がある。
その傍には、「私の貯金は全て娘の美紀子のもの」と書かれた紙が広がっている。
(母は常に傍にいるものだと思っていた。疑いもしない。あまりに急な出来事だった)
(わたしは何のために生きていたんだろうか)
(お金のため?)
(いや、違う。生活のため?そうだ、必死にその日の生活をただ送っていただけだった)
(ただただ追われるように仕事をこなせば何かが報われるような気がして。家族をないがしろにしていたんだ)
(それがこの結果だ)
美紀子の心の中で何かが割れる音がした。
美紀子はかつて不登校だった。
人と群れるのが苦手で、楽しいものが何もなかった美紀子に、母は一緒にゲームをしたり、遊んだり、心の穴を埋めた。
(そう、このときに初めて人と何かを分かち合うことがどんなに煌めいているものなのかを知ったんだ)
(たとえ母でも、私はそう思った)
「一緒にいる人と感情を共有すること……それが私の生きる理由だった」
美紀子がそう呟いた。
美紀子の傍に政人がやって来た。
美紀子はゆっくりと政人を見上げると、政人は美紀子を抱きしめる。
「政人……?」
「じゃあ、今日は俺が美紀子に寄り添うよ」
美紀子は涙ぐんで政人を見つめる。
政人は、真剣な顔で美紀子を見つめる。
「それじゃあダメか?」
「……っそんなことない」
政人は美紀子の背中を何度も撫で「一人だと思わないで。俺がついてるから」と言う。
美紀子は政人の背中を強く抱きしめ、「ありがとう」と呟き一筋の涙を流した。
Dear お母さん
今も私のこと見てる?
お母さんは私に人と分かち合うことの大事さを教えてくれたね。
私はその教えのおかげで、沢山友達ができました。
彼氏もできました。
お母さんも会ったね。
私はまた目の前が真っ暗になりそうだったけど、人と過ごすことの大切さを今度は彼氏が思い出させてくれました。
お母さんが教えてくれたこと、私は一生忘れません。
これからも変わらず見守っていてね。
美紀子




