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私が最推ししているラスボス年下王子は、どうやら呪われているらしい  作者: As-me・com


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11/11

〈11〉今さら思い知らされると、それなりにショックが大きいです

「というか!せめて今日それ(婚約破棄)を宣言するのだけは勘弁して下さい!!」


 たとえクロード様から見たら20歳の年増とはいえ、誕生日の朝から婚約破棄宣言なんかされたらいくら私でも立ち直れませんからぁ!!


「あっ、リゼル嬢……?!」


 戸惑うクロード様の横をすり抜けるように駆け抜け、私は部屋からの脱出に成功しました。このまま塔の外(庭)に逃亡しましょう!そして、今日中にクロード様が考え直してくれるようになにか策を練らなくては!











「……まったく。いつもはどれだけ逃げても追いかけ回してくるくせに、こちらから近寄ろうとするとすり抜けて行ってしまうんだから……」


 脱兎のごとく走り去ってしまったリゼルの背中を見つめながら、クロードがぽつりと呟く。その手にはリボンがかけられた小さな箱が握られていた。









 ***








「はぁはぁ、なんとか逃げ切れたわ」


 辺りを見回し、ちょうど薔薇が華やかに咲いている茂みの側に座り込みました。塔の外なら使用人の見回りもそんなに厳しくないので

 庭の茂みに身を隠せばすぐには見つからないでしょう。


 こっそりと茂みの影から搭の出入り口に視線を動かします。どうやら追いかけてまではこないようですね。


 家族に毛嫌いされて塔に隔離されているクロード様ですが、隔離されているだけで監禁されているわけではありません。基本的には塔から出ないようですが、外出は自由なのです。もちろん私も自由に出入りしていますしね。やたらと広い庭には薔薇園だってありますし、以前とは違い使用人たちの手によってちゃんと手入れもされています。この3年の間に一緒に参加したパーティーでも参加自体を拒否されることはありませんでしたし、多少ギクシャクはしているものの国王陛下とクロード様は(最終的には)ちゃんと挨拶を交わしていたんですよね。毛嫌いはしているが、心の底ではそこまで嫌っていない。だが、嫌わないといけない。そんな感じがチラリと見え隠れしているような気がします。どうにも複雑な親子てすわ。


 ……うーん、なんだかゲームでの印象ほど悪くないような?感じなんですよね。ゲームでのクロード様は親の愛どころか周りからの全ての情を受けれずに病んでいって闇落ちしています。全ては黒髪と赤い瞳のせいなのですが……。そもそも、”王族はみんな必ず金髪碧眼であるはずだ。そうあるべきである“みたいは変な信仰があるせいで違う色で産まれてしまったクロード様が被害にあっているのです。でも、そもそも《《それが》》不思議だったのです。


 だって……王族の本筋はみんな金髪碧眼だったとしても、嫁入りしてきた令嬢たちが全て金髪碧眼だったとは限らないでしょう?珍しい黒髪や赤い瞳までとはいかなくても、茶髪や銀髪に青色以外の瞳の令嬢だっていたはずです。


 子供とは父親と母親の両方の遺伝子を受け継いで産まれてきます。そして優勢遺伝子として強い遺伝子の方が受け継がれるのです。ここでなぜか周りは「王族の遺伝子が強いはずだ」と嫁入りした令嬢の遺伝子を全否定するという悪循環。有能な血筋の令嬢をえらんでいるくせに、なぜ王族の遺伝子だけが強いと認識されているのでしょうか?元々は最強遺伝子だったにしても……他の血を混ぜればどんどん薄まるのが血筋というものですもの。つまりそれは、他の血が混ざれば王家の血は確実に薄まっているという事。この国の創立から何年経ってると思っているのでしょうか?どれだけ王家の遺伝子に自信があるのでしょうね。


 まぁ、濃すぎる血はそれはそれで遺伝子に変化を起こしますからね。血縁者同士で婚姻を結ばないのはそのせいです。でなければ、親子や兄妹で子を成す方がよっぽど濃い血筋を残せますから。


 だから、調べました。


 クロード様の血筋を逆上って先祖にどんな人間がいたか。王族の遺伝子よりも強い遺伝子を持つ人物がいた可能性を。その時は劣勢遺伝子として身を潜めていたとしても受け継がれた血には確実にその遺伝子が残っていて、いつかわからぬその遺伝子がたまたま芽吹いたのではなのかと。


 とはいえ、伯爵令嬢に調べられる範囲は少ないですのでそこはクロード様の婚約者という立場をふんだんに利用しましたけどね。


 それなりにわかったこともあります。ただ、全ては私の仮説ですので確証はありません。


 そして肝心なクロード様のモヤも……クロード様の感情に左右されているだろう事と、成長されるにつれあまり見なくなったこと。それしかわからないままなのです。絶対にあのモヤがクロード様のラスボス化に関わっていると思っていたのに、転生者特典はどうしたのでしょうか?ダンスの練習をしている時は多少モヤがでていたのに、パーティーで踊っている時は全然出てなかったし……感情で左右されるにしても、クロード様の感情がどのようなものなのかが全然わからないので困ったものですわ。


 そんなこんなで、結局はクロード様にお知らせ出来るような有力な情報が掴めずにしばらく現実逃避して(高を括って)いたら婚約破棄の危機に陥ってしまったわけです。


 クロード様からしたら実姉の不祥事の尻拭いをしているだけで、王命とはいえ私なんかと婚約しているメリットなんかほとんどないですものね。本当にヒロインに心惹かれたら……。


 そこまで考えて深いため息が出てしまいました。


 ゲーム本編が始まるまであと13年。やっぱり、私なんかではクロード様の気を引くことは出来ないのでしょうか……。


 結局は考えが纏まらず、諦めて茂みから身を出したその時。



「リ、リゼル!リゼルなのか?!」


「え」



 そこにいたのは見覚えがあるような、ないような……。いえ、ないですね。


「え、誰?」


「元婚約者の顔を忘れたのか?!この薄情者!!」


 思わずキョトンとしながら首を傾げると、なぜかものすごい勢いで叱られてしまいました。


 あぁ、そう言えばよく見ると確かにウェルド様ですね。王女様の結婚式とパーティーの時にみかけた以来なのですっかり忘れていました。それにしてもなんだかやつれてませんか?今思い出したのですが、結婚式の時に「俺は勝ち組だ!」みたいな事を叫んでませんでしたっけ?


「いえいえ、そんな。王女殿下の尻に敷かれている入婿の方のそんざ……ゲフン。顔を忘れるなんてあるはずないじゃないですか?私からしたら義兄になる方ですし……。で、人生勝ち組の義兄様がそんなにやつれた顔をしてどうなさいました?この場所はクロード様の私有地です、あなたなんかが足を踏み入れゲフン。お越しになる場所ではありませんわよ?」


「なっ……!?相変わらず口が減らない女だな……!そんな可愛げのない女だから、王命で婚姻を命じられたのに未だに婚約者のままなんだぞ!噂では第三王子は婚姻を拒否したが王命があるために渋々婚約者にされて困っているそうじゃないか!第三王子も災難だったな!年頃になって他の令嬢にもやっと見初められ始めたのに、お前のような婚約者がいるせいでお先真っ暗だと、きっとお前の事を恨んでいるだろうさ!」


 そうなのです。確かにクロード様はパーティーに何度か参加してからは他のご令嬢からダンスの申込みをされたりしています。最初は“悪魔王子”の噂を信じて近寄らなかったくせに陛下とクロード様が言葉を交わしている場面を目撃した人たちが「陛下に嫌われてないのなら、第三王子もアリかも」的な雰囲気になってしまったようなのですわ。でもゲームのクロード様にはヒロインが気になる存在になる前に女の影があったような描写はありませんでした。だからその辺のご令嬢が粉をかけてきてもクロード様が惑わされるとは思えませんが────あぁ、そうね。そうでしたわね。《《だから》》クロード様は私に女としての興味を持ってくれないのでしょうね。私は所詮、ただのモブですもの。そんなの、最初からわかっていたはずですのに。


「……それに関しては特に異論は申しませんが、それだとクロード様に恨まれてるのは私だけではありませんよね?」


「へ?」


 私はため息混じりにウェルド様を指差します。クロード様からしたら、諸悪の根源は決して私ではないのですから。


「だって、あなたが私を裏切って王女様を妊娠などさせたから……陛下は都合の悪い事を隠蔽し私の口を封じるためにクロード様との婚姻を王命なされたのですよ?クロード様が私との婚約を恨んでおられるのならば、もっと恨むべきは王命を出した陛下であり、その王命を出させた原因であるあなたでは?まぁ、婚約者のいる男性を略奪した王女様もその対象だと思いますけれど一応実姉ですしね」


 私にそこまで言われてやっと気付いたのか、ウェルド様は顔を真っ青にし始めました。どうやら本当に自分は関係ないと思っていたようですね。私を貶すのは勝手ですが、浮気相手を妊娠させて婚約破棄してきたくせに思考回路はどうなっているのでしょうか?


「……で、何か御用ですか?クロード様に御用があるのなら陛下を通して頂かないと困りますが」


 この塔は王城からはかなり離れた場所にあります。王女様と一緒に王城に住んでいるウェルド様がわざわざこんなところまで来た理由が私を貶す為だけとは思えません。


「えっと。いや、だから……ぐぬぬ」


 するとウェルド様は顔をしかめ、いきなり私の左手首を掴んだのです。


「な、なにをするんですか?!」


 ギリッ……!と力が込められ、手首に痛みが走りました。痛い!これは絶対痣になりそうです。


「ちっ!とにかく、オレの言う事を聞け!お前はそんなのでも第三王子の婚約者なんだからそれなりに権力があるはずだろう?!

 オレを……オレを助けろ!元婚約者なんだから、それくらいしてくれたって罰は当たらないだろう?!」


「な、何を言って……痛いです!その手を離して!」


 ギリギリと力を込められ、手首が折れそうなくらいの激痛を感じて思わず叫んだその次の瞬間。






「貴様、僕の婚約者に何をしている」





 私の手首を掴むウェルド様の手を握り潰しそうな勢いで掴んできたクロード様が背後に莫大なモヤを背負ってその場に立っていたのでした。




 

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