第六話 胡瓜侍が斬る! 胡瓜の一本刺し
瓜は漬物の元祖というが、拙者の同志にも当然瓜流派の仲間がおる。
彼の者の名は、青爪という胡瓜侍である。瑞々しき緑の衣を纏い、漬物樽から一足先に世に出た若き侍だ。
彼の佩刀は「露切」と呼ぶ。切っ先鋭く、水分を豊富に含むこの刀は、斬るというよりは敵の熱を奪い、涼やかなる「冷気」を浴びせることを得意とした。
彼の役目は、夏の食卓の平和を守ること。特に凶暴な「日照り党」が暴れまわる時期には、その存在が不可欠であった。
日照り党は、光の救世をもたらす役割を忘れ強烈な熱波を操り、あらゆる食材を干上がらせる悪漢達である。
ある猛暑の日、里人たちが暑さに苦しむ中、日照り党の首領「辛子真夜」が現れた。
ツンと来る辛子真夜に、人々の鼻は乾ききっていた。「もはやこれまでか…」と人々が諦めかけたその時、涼風と共に現れたのが胡瓜侍であった。
「やあやあ青爪、見参!」
胡瓜侍は露切を構え、得意の「冷やし斬り」を放った。刀身からほとばしる冷気が辛子真夜の辛味と激突し、辺りに涼やかな霧が立ち込める。
辛子真夜の動きは鈍り、その隙を突き、胡瓜侍は一閃。辛子真夜はたちまち冷やされ、食欲をそそる「ピリ辛アクセント」へと姿を変えたのだ。
青爪は知っている。拙者の教え⋯⋯自分一人が主役ではないことを。
胡瓜は漬かるだけでなく、新鮮に時に味噌やもろみと和えられ、時には拙者ら古強者たちと共に、食卓という戦場で脇役として輝くことを。
その鮮烈な緑と清涼感こそが、彼の生きる道なのであった。




