第二十七話 七草衆
春の訪れを告げるは七草衆達よ。拙者は彼ら七草衆と共に里の健康を祈願するべく、野へと赴いた。
「芹の芹摘姫殿、薺の撫子殿、御形の御慶殿、繁縷の陽夜子殿、仏の座の蓮華殿、菘の鈴奈殿、蘿蔔の清白殿……」
鈴奈殿は蕪侍の白妙殿の妹御。魔を祓う名刀「菘」は、彼女の名から取ったそうだ。清白殿は拙者の同胞。身内を褒めるは面映ゆきものだが、白き美しき者だ。
七草のおなご衆の名を呼びながら、拙者は一人ひとりに語りかけた。「
貴殿らの持つ清らかな力こそが里に春を呼び、人々の無病息災を願う源となる。いざ、その力を示されよ!」
「おぉーーー!」
収穫された七草は細かく刻まれ、粥へと姿を変える。そこにたくあんが添えられる。
「粥という主役を引き立てる、我ら脇役の祈りを込めた結晶にござる!」
里人たちが七草粥とたくあんを口にする。七草の持つ素朴で力強い風味と滋養、たくあんの塩気と食感が織りなす調和。
冷え切った冬の寒さから体を内側より温め、活力を与える。
「ああ、力が湧いてくる!」
冬を耐え忍んだ拙者と──それぞれが、けして主張せぬ粥の粘りに似た七草衆の絆。この日ばかり七草の姿を重ね合わせた華やかなる舞台となった。
主役になれぬ地味な食材たちが、力を合わせることで里人の健康を守る。これぞ真の健康祈願であろう。
食卓の平和を願う、脇役たちの静かなる宴の誓いであった




