第二十五話 野沢菜の菜緖子
「野沢菜の菜緖子」――信州の深き雪の中で育まれた彼女は、鮮やかな緑を纏いし者であった。
彼の女と遭ったのは里の食卓、胡瓜侍の青爪と語らっていた時だ。
「さあさあ皆様。食卓の舞を踊りましょうぞ!」
一際元気な奈緒子は快活に笑い、三人は食卓という舞台で踊り舞う。
青爪殿が露切を振るい、涼やかなリズムを刻む。すがすがしい清涼感に、奈緒子は自慢のシャキシャキとした食感と青味を合わせて応じてみせる。
そこに、たくあん侍の拙者が加わった。塩分刀から放たれる深い塩気が、二人の軽快な舞を引き締め、味に奥行きを与える。
「これぞ、三位一体の舞よ!」
祭囃子がこだまして来そうな、軽快で奇妙な音と踊り。舞台に招かれた里人たちも、三者三様の食感が織りなす調和の舞いに魅了された。
この賑やかな舞台に主役はいない。
だが互いを尊重し、高め合うその姿は、食卓を彩る美しさの極みのようであった。
拙者は悟った。食の調和とは、時に言葉を交わさずとも、食感と塩加減で通じ合える、一種の舞踏であると。
こうして三者は、食卓という舞台で最高のお惣菜を披露したのであった




