第二十四話 聖なる脂高は塩対応が酔い
脂高圏────そこは、肉やバター、チーズといった濃厚な主役級食材が支配する。眩いばかりの異郷の地は今、クリスマスなる世界になっておった。
赤き衣を纏いし者に導かれ、拙者と茄子侍の紫苑。街は豪奢な装飾で溢れ、人々は七面鳥やローストビーフといった主菜に夢中であった。
「引き立て役たる我らだが、今日はかりは主役の競演を楽しむのが筋であろう」
「うむ」
招かれた理由は明白だが、祭りの興を削ぐのも悪かろう。拙者と紫苑は見守る事にした。
しかしその飽食の裏側で、酒鬼が三鞭酒の瓶手にして忍び寄っていた。里人たちは濃厚な味に疲れ果て、気づいていなかった。
「出番のようだ」
「承知した」
クリスマス・ディナーなる豪華絢爛な食卓の片隅に、拙者と紫苑が静かに進み出る。
「主役だけでは、食卓は完成せぬ」
脂には我ら引き立て役こそ力を発揮する。いつもの口上を述べかけるが‥‥酒鬼の様子がおかしい。
「侍達よ、誤解だ。これは演出、宴の余興じゃ」
────キュポンッ!
酒鬼は瓶の栓を抜く。同じ水気でも鹿威しの静かなる水の音と違うが、耳心地の良き響き。
他にもパァンと破裂し紙を散らせる癇癪玉を鳴らす。
拙者達は刀を収め、共に酒をいただく。疲れた舌を、発泡酒なる泡がさっぱり洗い流す。
「これはしてやられた」
「主役は主役で派手にぶつかり合うのが似合う事もあるのだな」
味を引き締めるばかりではない。とことん堪能し尽くす脂高圏の考えに、拙者達も新たな境地を見た気がした。
豪華さだけが特別ではないが、派手派手しい花火のような美しさもまた乙なもの。
今宵ばかりは食の調和を守る、聖夜の侍としての役割を忘れて、異郷の祭りを楽しむのであった。
サブタイトルの「良い」を、「酔い」にしております。




