第二十話 クセ強きもの
納豆の粘蔵。彼の者は豆の里の出だが、その強烈な個性⋯⋯特に粘りと臭みのせいで、周囲からは敬遠されがちであった。
「臭い」
「ネバネバする」
里の人々に後ろ指を指され、食卓の隅で一人、孤独に佇んでいたのだ。
豆の里の古老は拙者の噂を聞き声をかけ粘蔵と引き合わせた。
「たくあん侍殿、この粘蔵の強すぎる個性を、貴殿の力で調和させてはくれまいか」
粘蔵は不満げであった。
「おいらはネバネバこそが魅力なのに、地味な漬物などと組むのはごめんだ」
たくあん侍は静かに応じた。
「その粘り、行き場を間違えているだけ。調和の美学を教えて進ぜよう」
二人は食卓という名の戦場に並んだ。たくあん侍に負けじと、白米という主役を前に、粘蔵は自慢のネバネバを発動させ皿の上で暴れ回る。
しかし‥‥粘りが強すぎて、誰も手を出せない。食卓は混乱に陥った。
「愚か者め! その粘りは主役を引き立てるべき力! そなたが暴走して何とする!」
拙者は粘蔵を一喝し、たくあんを細かく刻み、納豆の沼地へ混ぜ込む。
たくあんの塩気とシャキシャキとした食感が、粘蔵の暴走する粘りを瞬時に引き締める。
行き場を見つけた粘りは、たくあんという骨格を得ることで、最高の「ごはんのお供」へと変貌した。
「こ、これは…旨い!」
里人たちも歓喜の声を上げた。
‥‥粘蔵は悟った。己の強烈な個性も「主役」があってこそ、真の美味となるのだと。
こうして拙者達は互いの個性をぶつけ合いながらも、食卓の平和を守り続けるのであった。




