第二話 グラタン騎士団襲来!!
塩分刀⋯⋯それはたくあん侍の魂を形にした得物である。
通常の刀剣とは異なり、無尽蔵の塩分を含有しており、斬りつけるというよりも「塩分を浴びせかける」ことで敵を無力化する特殊な得物だ。
物語の舞台は食の均衡が崩れかけた、戦国食卓世界にある和食国。
暴走する「しし党」だけでなく、近年は洋食脂高文化圏からの侵略者も増えていた。
そんなある日のことだ。濃厚なバターとチーズを纏った「グラタン騎士団」が、和食の里に攻め込んできた。
彼らの油膜装甲は物理攻撃を弾き、普通の侍たちは歯が立たない。
そこに現れたのが、たくあん侍である。
「大根役者と侮るなかれ!」
たくあん侍は愛刀の塩分刀を抜き放ち、得意の「塩分見舞い斬」を炸裂させた。
刀身から放たれる高濃度の塩分が、グラタン騎士団の油を瞬時に中和・分解し、彼らの存在そのものを「しょっぱく」変えていく。
「くっ⋯⋯塩分が強すぎる!」
崩れ落ちる騎士団。
塩分刀の真髄は、敵を殺傷することではなく、その存在意義を根底から覆し、脇役へと「格下げ」することにあった。
どんなに強力な主役級の食材であっても、塩分刀の前ではただの「塩辛い何か」へと成り下がる。
かくしてたくあん侍は、塩分刀を携えて、食の世界の秩序を守った。どこまでも渋く、名脇役として戦い続けるのであった。




