第十九話 お茶うけ御前試合と甘党の刺客 参
お茶御前の座を巡る戦いは、まだ終わっていなかった。前回の敗北を糧に、甘味の国は新たな刺客を送り込んできた。
その名は豆潮。餡小丸が改名し、甘さだけではなく、塩気を内包することで力を増した強敵となったのだ。
豆潮は、拙者の前に仁王立ちし、挑戦状を叩きつけた。
「たくあん侍よ。貴様の『塩気』の利点は、この私も取り込んだ!もはや貴様に存在意義はない!」
その身体には塩漬けにされた豆がゴロゴロと埋め込まれ、豆潮は自信に満ち溢れていた。
拙者は静かに塩分刀を構えた。
「塩気ばかりが拙者の力ではない。貴殿はそれを『力』と誤認している」
再戦の舞台もまた、茶の湯の席。美食大王が見守る中、豆潮の塩豆大福が一口食される。確かに美味い。甘さと塩気のバランスが取れているといえよう。
「どうだ!」
豆潮は叫んだ。しかし、大王の表情は晴れない。次に、たくあんが食された瞬間、大王の顔に笑みが戻った。
「これだ!この『シャキシャキ』とした食感と『酸味』こそが、食卓に必要なのだ!」
豆潮は気づいていなかった。塩気を取り込んでも、拙者の持つ「食感」と「酸味」という独自の武器には敵わなかったのだ。
食後の口の中を完全にリセットし、茶の味を研ぎ澄ませるその能力は、塩豆大福の単調な甘塩っぱさだけでは到底及ばない。
拙者も学んだ。世の中の人々は食感もまた求め楽しむと。拙者ならばコリコリ、饂飩のコシ、魚卵のプチプチか。
「貴殿は『完全』を目指したが、拙者は『余白』を残した。その余白こそが、食の深淵を創り出すのだ」
たくあん侍たる拙者の「脇役の美学」が再び勝利を収め、強化した刺客は、真の調和の意味を悟ったのであった。




