第十五話 打ち捨てられたトロっ子と、拾うたくあん
拙者が海辺を歩いていると、浜辺に打ち捨てられた巨大なマグロのトロっ子を見つけた。
「脂が乗りすぎていて使い物にならん」
漁師達が嘆き、脂ばかりのトロっ子を無造作に捨て去った後だったようだ。マグロのトロは脂高圏に負けず劣らず脂が乗るもの。その豪華な見た目とは裏腹に、不要なものとして打ち捨てられていたのだ。
「なんという勿体ない⋯⋯」
拙者は心を痛めた。そして打ち捨てられたトロっ子にそっと手をかざした。
「貴殿の脂は罪ではない。行き場を間違えただけだ」
その夜、拙者は和食の里へとトロを運び入れ、葱を細かく刻んだ。そしてシャキシャキとした、たくあんも同じように刻み混ぜ合わせた。
「トロたく」の誕生である。葱だけ、たくあんだけ、両方入れるなど、主役脇役ともに活きる。
里人たちはその美味に驚嘆した。トロの濃厚な脂身は、たくあんの塩気と食感によって見事に引き締められ、互いが互いを高め合う至高の逸品となっていたのだ。
マグロのトロは、単なる脂の塊ではなく、「たくあん」という脇役を得ることで、初めて真価を発揮した。
どんな食材にも必ず役割があり、不要なものなど何一つないことを証明した。そして捨てられた主役のトロっ子と、地味な脇役が織りなす、食の調和の物語となったのだ。
お読みいただきありがとうございます。葱鮪鍋と迷いましたが、たくあん侍優先しました。




