第一話 たくわん侍に拙者はなる!!
その昔、広大な畑に一振りの大根が育っていた。彼の名は「大吾」
他の大根たちは皆、早く抜かれて食卓の主役になることを夢見ていたが、大吾は違った。
彼は、食の世界の「真理」を知るために、あえて畑に残る道を選んだのだ。
秋風が吹き荒れる頃、大吾は里のお寺に住まうお坊さんにようやく引き抜かれた。
「おぬしには華やかな主役ではなく、食卓を支える『名脇役』としての道が似合うのう」
大吾に向かって、そうお坊さんは呟いた。大吾は納得し、その身を委ねた。
大吾の過酷な「下積み」が始まった。天日で干され、水分を絞られる。塩と糠に漬け込まれ、重い石の下で三年もの長い間、息を潜めた。泥沼のような漬物樽の中、大吾は孤独と重みに耐え続けた。
しかし、その苦難こそが彼を鍛え上げた。余分な水分は抜け、身体は引き締まり、内には深い旨味が凝縮された。
泥臭さとは無縁の、しなやかで叩き甲斐のある黄金色の「たくあん」に進化を遂げたのだ。
三年後⋯⋯石が取り払われた時、大吾は新たな姿、たくあん侍として生まれ変わっていた。
「これからは、拙者が食卓の平和を守る番だ」
相棒の塩分刀を手に、彼は静かに誓った。主役の隣でこそ輝く、渋い脇役侍の誕生であった。
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戦記⋯⋯という事で、500文字企画のたくあん侍を連載にしてみました。
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