たくあん侍シリーズ
拙者の名はたくあん侍と申す。
少し前にごぼう持ちが流行っていた。その前は人参だったか。我ら根菜は、細長いイメージから刀や剣に見立てられやすい。武具として、得物としてではなく、侍として望まれた。
まさにこれからは大根の時代だったはずだ。しかし下積みの間、石の下に三年、しっかり漬かってしまい申した。
泥沼に浸かると抜け出し難いものだ。漬物樽の中で水分を絞り、引き締まった拙者の身体は、ごぼうにも負けないくらい、しなやかで叩き甲斐のあるたくあんに進化する。
「お侍さん、あっちに悪者が!」
助けを求めるとうがらしの童子達の声が聞こえる。拙者は|塩分刀《えんぶんかたな》を手に、声のする方へと向かう。
胡瓜侍がやられている。違う漬物樽とはいえ、拙者より先に世に出た実力者だというのに。
新参のししとう達が、しし党を名乗って暴れていた。
しがないごはんのお供の拙者と違い、大人気のおかず、お|肉《にく》のお|国《くに》と良い仲の、ピーマンに嫉妬し暴れたようだ。
拙者たちを引き立てる、唐辛子にもなれずあわれなり。
自慢の塩分刀でパラリと塩を効かせ、串刺しにしてやる。見事な筏のししとう串(|爆弾《先祖返り》付き)の完成である。
拙者は悟った。拙者はあくまで脇役。大根役者がお似合いなのでござる。
✑ 公式企画『お題で飛び込む新しい世界』の投稿作品です。
✒ しいなここみさまの個人企画『500文字小説企画』にて投稿した作品の連載版となります。
かつての企画のスタイル同様に、各話500文字前後のお話になっています。
第一話 たくわん侍に拙者はなる!!
2025/12/02 14:50
(改)
第二話 グラタン騎士団襲来!!
2025/12/02 15:12
第三話 茄子侍が斬る! 茄子のヘタ斬り
2025/12/02 15:50
第四話 脅威の粘り、無敵のムチン装甲!
2025/12/03 01:52
第五話 似たもの同志 蕪侍との友情
2025/12/03 09:10